唯我独尊の大精霊
更新遅れた割に文量少なくてごめんなさい。
「私はアマツエル。ゼニス・ワンダラーを導く存在である。」
忌まわしい日々の記憶。
*
「アマツエル……貴様が、今更この期に及んで現れようとは!《武器召喚 - †祝福と不浄の対刃†》!!」
光と闇が、シアノの腕を包む。それらは集まっていき……やがて、形を成す。一つの短剣は光を導き、一つの短剣は闇を誘う。二つの短剣揃いし時、混沌の時が訪れる……とシアノは語る。
「切り刻んでくれよう!『חרב מבורכת השמיד את החושך בכוחך האמיתי』『חרב לא קדושה לשרוף את כתבי הקודש בעוצמה אמיתית』……」
シアノが詠唱を始める。セフィラ顕現状態のゼニスが発動する技と同じ、知らない言語で。
「《†赦罪†》《†大罪†》」
二つの短剣は、それぞれの色に淡く光ると、それらに吸い込まれるように、空間が渦巻いていく。
その短剣は、アマツエルに向かって振り下ろされる──
短剣は、止まる。
「我に抵抗することは……愚の骨頂である故……いざ、罰せよう。」
「なん……だと……!」
アマツエルが手をかざし……何かに阻まれ、それ以上進まない。気づけば歪みの渦も消え去っている。
「《カムクラノヒカリ》」
なんの予感もなく放たれたその光線は、シアノを蜂の巣にする。
「か……は……†堕天使の翼†がぁぁ……?」
膝から崩れるシアノ。無敵の翼すら貫ぬく。通常のカムクラノヒカリとは似つかない超威力。身を翻したアマツエル。
「正義は為された。」
再び眩い光。融合した時と同じような光が溢れる。晴れた頃、そこには、十人の大精霊が居た。……雑魚寝した状態で。先ほどまでの、アマツエルの威厳と全く違う。いつも寝てるオキツエルや、寝そうなヤツエルはともかく、イクエルやタルエルまで雑魚寝している。そして、そこらにアーティファクトが散乱している。
「なんだかよくわからないけど……そういうことだね。」
パルガンはその中から葬送刀を手に取ると、唱えてもいないのに日食が光り出す。
「《断炎斬り》」
刀が、振り下ろされた。
──セフィラ顕現。
「この……我が……勝利のセフィラを冠する我に……またも土の味を!」
*
「無限の力──それを求めているのはなにも、火炎文明だけじゃない。忌々しい水文明のヤツらや、自然文明すら何らかの形で捜索を開始していると聞いた。」
誰かと、こんな会話をした気がする。フォーゴだったか、もしくは学校の先生だったか。
「無限の力を手にできるのが1人だけだったら、取り合いになるだろう。」
「そしたら?」
「お前たちは……人を、殺すことになる──かもしれない。」
人を、殺す。自分のために。無限の力のために。仲間の幸せのために。
「お前にはまだ難しい話かもしれないが……人を殺すということは、人を不幸にしかできない。殺された人の家族。恋人。親友。それらはきっと、殺した君を恨むだろう。」
「そしたら?」
「ワンダラーは……悪に堕ちる。」
*
「人はみな自らの幸福を追い求める……」
現れた影は、俯いたままパルガンに向けてゆっくりと歩み寄る。
「だがそれは同時に……幸福を追い求めるということは、同時に他者の幸福を侵害することでもある……」
セフィラの顕現した、シアノ。
「パルガン。ここは俺に任せておけ。ムボガを助けに行くならお前の方が適しているだろう。」
「……分かった。」
地面に散乱したアーティファクト。収納空間に仕舞うよう念じると消える。パルガンは、改めてエンドレを取り出し、ブレンネンに渡す。
「いつ起きるかわかんないけど……お守り程度かもね。」
「ああ。」
次いで、エクラとリュールも。
「きっと、ブレンの方が上手く使えるはずだよ。」
「さぁ、行け。ムボガの人生を終わらせるな。」
その声がブレンネンとは思えなかった。覚悟の表れだろう。1文字ずつ、重く押し込んでいくように、パルガンに背負わせていく。
「うん。任せて。」
軽く頷いて、しっかり重い覚悟で、シアノに背を向けて走る。
「行かせると──」
「おっとぉ!」
パルガンに腕を向けたシアノ。その腕は、ブレンネンの爆ぜる脚に蹴り上げられる。
「無視は困るぞ!!」
「人はいつも自身の力を見誤る──」
「主語が大きいな、君の説教は! 人間の視点で話した方がいいだろう!」
「事実として上等なのだから妥当であろう。」
「……君がどんなやつか知らないが、これだけは言える。人間、そう簡単に上等な存在になんてなれないぞ。」
シアノは軽く嘲笑を浮かべる。
「貴様も、大層な物言いをしているではないか。私を批判する割には、“我が振り”を直せていない。」
「あぁ、そうだな。悪いがアルターのように頭がいい訳では無いのでな……だが! 私は自分が頭悪いということを知ってる。自覚できていないキミよりは頭が良いと言えるな?」
煽り合い。
「ふむ。ソクラテスの無知の知か。面白い。」
「うん?」
ブレンネンの脳裏にハテナが浮かぶ……そして、静まり返り、睨み合い。相手の出方を伺う。
「なんだ、ソクラテスって?」
「学のない。」
「必要の無い知識を知らなくて悪いだろうか?!!」
「善し悪しの話はしていない。貴様の能力を量っているのだ。」
「そんなもので測れる能力があるか?!」
「フッ、貴様には分からんだろうな。」
「ムカつくな~お前!」
「ならば戦いに来ればよいだろう。」
「ああそうだな!! ちょうどおしゃべりにも飽きてきたところだ。」
魔力が巡る。魔力がブレンネンの体内に巡り始める。感情に呼応して魔力の巡りが良くなったのだ。
臨戦。
「《ブレイズバースト》」
「《†蝕む大いなる深淵†》」
*
「ムボガくん!! ムボガくんッ!!」
必死の叫びで、ムボガを呼ぶ。全力で走りながら。
訓練は受けているし、十分に今まで戦ってきて、体力はある方だ。それでも、気の焦りもあり疲れていく。そうでなければ、人間卒業に他ならない。
やがてパルガンは、どうしようもなくて、転ぶように膝を突いて立ち止まってしまう。
探せば見つかるものではない。ミエかあって見えないものが、声をかけて見つかるはずがなかった。
大精霊が眠りについている今、可能性があるのは葬送刀のみ。
体が……勝手に動いていた。できると信じた訳でもない。無論、こんな機能知らない。
ただ、刀を握るその手は、白く輝く葬送刀を、振った。そして、何かを、斬った。
「え……」
ヤツエルもおらず。日食の効果なのか、殲滅剣の効果なのか、それらの組み合わさった効果なのか……?
パルガンの目の前には、刀と同じく白く輝いた『裂け目』が出来ていた。バチバチと光って、安定しているようにも不安定なようにも見える。
「……行くしか……ないよね」
それが、唯一の手がかりとしか言えなかった。
その裂け目を通った先は、地獄だった。
*
「うわぁっ!?」
突然、足元に現れたポータルに落ち、ムボガはその場所にいた。シアノという、明らかに格の違う敵に対面し、それを多少なりとも追い詰めてしまう2人にも戦きながら、蜘蛛の糸に触れないために止まっていたら、落ちたのだ。
……少し、訂正する。
落ちたのだが、次の瞬間ムボガは、地面に立っていた。落ちてなど、いなかった。テレポートの位置がちょうど地面だったから、着地がなかったのだ。
高度な魔法技術。座標指定の正確な。
目の前の機械が纏う雰囲気に、説得力が生まれてしまう。
知る限り最も高度な魔法使い。
ピサンリであると確信するのに、そう時間は要らなかった。
その上で口をついて出たのは、疑問だった。
「……誰?」
ピサンリ。ピサンリだ。知らない見た目、文明すら違って見えるが。そこに立っているのが間違いなくピサンリなのだ。
「面倒なことは嫌いです。それはあなたもご存知ではないですか。理解しているのなら態々聞かないで欲しいのですが。」
冷たい、酷く冷たい機械の声。下手なリバーブとディレイのかけられた合成音声。ピサンリの声をうろ覚えで再現したような。しかし口調は似て非なるもの。それでも、似ていると思ってしまったのは雰囲気から来る先入観によるものだろう。
口癖は、共通しているが。
「そっか……そう……なんだね……僕は……キミと戦わなくっちゃいけないのかな……」
「……でなければ、なぜわたくしがあなたをここに招待するのでしょう?」
「はは……勝てる気しないなぁ……」
「面倒なことに、なりましたね。」
違和感。いや……もう、考えてはならない。
敵。
──ムボガの叫びが哀しく響き渡る。
パルガンの言った通りだ。師や戦友が、敵となる……それが、ゼニス・ワンダラー。倒さなくてはならない、敵。
「アアァ!!」
振り下ろされる拳をヒラリと避けたピサンリ。魔法で翼を作り、空を飛ぶ。
「ハアァァァ」
それに負けじと、跳び上がって掴もうとムボガは腕を振る。
空振る。隙が生まれる。
「《多重発動Lv30 - 光星波動》」
放たれる炎。
「アアアァ!! ウヴゥウウウッッッ!!!!」
炎は急速に燃え広がり、ムボガの体を容赦なく焦がしていく。のたうち回れば、地面が揺れ。た翼で飛ぶピサンリにはその揺れが伝わることもない。
「《多重発動Lv10 - 夜露》」
「ァアアアア!!!?」
追撃。突き刺さる鋭い露の槍。地面まで刺さった槍に、のたうち回ることも出来なくなり、叫びながら燃えていく。
「《多重発動Lv5 - 光星波動》」
叫び。
「《多重発動Lv5 - 光星波動》」
叫び……
「《多重発動Lv5 - 光星波動》」
その声枯れるまで。
枯れた頃。パルガンが来た。
「……無駄に時間を使いすぎましたか。面倒なことになりました。」
「…………」
声が詰まる。
「君って……?」
その答えをパルガンは知っている。確証がない……そのために聞いた。
「私はピサンリ・ティファレトです。面倒ですので、自己紹介はこれきりとさせて頂きます。」
「ピサンリ…………」
ピサンリ。何でも屋どんぐりとの戦いで少し関わっただけとはいえ、ムボガ達との関係性が良かったであろうことは言うまでもない。
だがムボガをこうして焼き払っているのは他でもないピサンリだ。見間違いじゃない。
「……それが、ゼニス・ワンダラーなんだね。」
「《多重発動Lv10 - 光星波動》」
熱線が放たれる。ムボガを焼き尽くした炎。
それはパルガンの刀に切り裂かれ、パルガンに触れることは無かった。
だがその熱気が、パルガンの怒りを増幅させていく。
「ごめん。ムボガ。」
「……面倒ですね。」
「僕は……誰一人として護ることが出来ないみたいだ。仲間が大事と言っておきながら……誰一人として。僕の刀は……人を護る刀になれなかった……」
「《多重発動Lv20 - 光星波動》」
先の2倍の火力の熱線。ただそれすらも。
代わりに、裂かれた熱線はパルガンの背後で爆ぜ、轟々と燃える。
「せめて、敵を討てる刀になるよ。」
「……!」
「《完全形質顕現 - 剣神》」
パルガンは視界から消える。
そして……ピサンリは刻まれる。
クリファ崩壊──
!セフィラ顕現エラー!
二度と目覚めることは無かった。
ピサンリとムボガの対決が書けなくて……




