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冷徹

閲覧ありがとうございます。

「聞きましたか?アルター。」


豊かな水。そして、一人の男によってもたらされた機械の文明。専ら水の文明と呼ばれている。彼らはクール・ワンダラー。叡智を求める探究者である。


「無限の力 か?それなら聞いた。誰かが噂を流しているらしいな。」

「本当の話だと思いますか。」

「まさか。論理の欠片もないじゃないか。」


事務室のような空間で、紅茶を飲みながら新型の機械銃をプログラミングし、各部署から提出された書類をチェックする。だがこれは談話しているので休憩時間である。


「くだらない話をしないでくれ。」

「ああ、すまなかった。」


最近ささやかれるようになった噂がある。世界のどこかに『無限の力』があるという噂だ。水文明では多数の研究家が出て、ブームになっている。


「もっと建設的な研究に精を出して欲しいものだ。市民のアイデアが尽きかけているのかもしれんな…」


水文明において研究所長とは、国王に匹敵する力を持つ。その研究所長である彼の名はアルター。そして側近はパゴメノスだ。


「銃のプログラミングが終了した。パーツを組み上げて武器庫に仕舞っておいてくれ。」


休憩時間が終わりを告げた。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

水の文明 表記揺れ:水文明 機械文明

特産品 - 元素記号 Dp(デュプリケイウム) , 元素記号 Me(メタモルゲン)

 栄養の豊富な川から始まったこの文明は、ある一人の男によって飛躍的な進歩を遂げた。科学の力で機械に包まれたこの文明は、論理的思考が中心であるため、無限の力も信じられていない。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


ピリリリ


アルターの元に電報が届く。

『e382bbe382abe382a4e3838ee3838fe38386e3838be38380e382a4e383ade382afe3838ee38396e383b3e383a1e382a4e382a2e383aa』


「16進数?」

「スペースが省かれて解読は難しいな…だが信頼できるソースである証明にもなる」


この形式で電報を送ってくるのは決まって一人の諜報員だ。


「水文明に古来から協力してくれる情報屋モーリェ…まだ生きていたみたいだな。パゴメノス、解析プログラムを起動してくれ。」


パゴメノスはため息をついた。

「プログラム起動くらい自動化したらどうです?なぜ私がいちいちどのボタンか迷う必要があるのでしょうか。」


「あー…今度そのプログラムは組む。今はモーリェの電報の解読が先決だ。」

「言いましたからね。」

カチッ


パゴメノスがボタンを押すと、天井からアームが伸びてくる。


トポトポトポトポ…


アームはアルターのカップに紅茶を注いだ。すごくベストな温度のアップルティーだ。どうやらパゴメノスが押したボタンは《紅茶プログラム》だったようだ。


「…」


微妙な空気を誤魔化すためにアルターは紅茶を飲んだ。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

デュプリケイウム

 非常に不安定な元素であり、他の純粋な元素と同一容器内で保管していると、容器内のデュプリケイウムは1時間と待たずに純粋な元素と同じものになる。海底にある天然のガラス質から多量検出されたため、開発に際して必ず当たる資源問題が水文明では存在しない。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「解析完了」

解析プログラムの作業が終わった。


『<宇宙の果てに第六の文明あり>』

解析プログラムによって解読された文章は、驚くべきことを示していた。


「第六の文明?火炎、水、自然、死、神の他に?」

「無限の力と関係があるかもしれませんね」


「バカバカしいが…モーリェからの情報だ……捜索部隊を立ち上げてくれ。長い旅になるな。僕も出よう。」

「船の点検は終わっているのですか?」

「今終わったところだ」


ピリリッ

作業終了の通知が届く。


(近未来を予測しているような言動は相変わらずですね…)


パゴメノスは少し感心した。


「アルター、パゴメノス、グラキエース、ゼレ、シモスを指揮官に登録。解決プログラムを起動して適切な部隊編成を組んでくれ。」

「私も出るのですか?」

「ああ、研究長の代理には…そうだな、ルバタを置く。今晩にでも出てしまおう」


アルターは立ち上がり、ガレージに入ろうとした。


その瞬間…


ドゴォォォーーーンッ


爆発音がなる。


「敵襲?!」


パァァァーーーーッ

警告音が鳴り響く。


「防衛プログラムを抜けられた?バックホールを開けられていたか!」

『死文明の艦隊が攻撃を行いました。市民の皆さまは速やかにシェルターへ…』


砲撃を行ったのは超世界から来た死文明。古くより水文明と敵対してきた歴史を持つ。


「ちくしょう!無限の力の噂が流れてからというものの、死文明が暴れすぎなんじゃあねぇの!」

「無限の力とやらを探す前に潰しておこうという判断でしょうか…それと 今の発言は冷静さに欠けますよアルター。」


冷静に指摘するパゴメノス。


「さっきの武器の試し打ちと行きますかね…いや、既に本番か!」


既にパゴメノスは手に新開発の銃を持っており、アルターに渡した。


シリンダーを回す。

ジリリ ジリリ ジリリ


シリンダー部分を回す事に、搭載されているモニターの表示が変わる。「散」と表記されているモードまで回す。


そして外に飛び出し、空を見上げる。

2機の空母に、小さな船が多数。よく見る部隊構成だ。


『捕捉しました。』

「行くぜ!シャッガーン!」


バシュッ


放たれた散弾が、更に小さな球に分裂した上、それぞれに推進力が搭載されているため、捕捉したターゲットに向かって螺旋を描きながら進んでいく。


ジリリ ジリリ ジリリ

再びシリンダーを回し、「信」の表示が出るように合わせる。


「起爆!」


ピッ


ドゴォーーーン

敵の小さな船を複数破壊する。しかし、空母にはダメージがほとんど見受けられない。


「小さいとやっぱり威力が足りないねぇ!」

「冷静」

「優勢だからいいんだよ」


さっきから銃をいじり倒して興奮するアルターをなだめるパゴメノス。


「遊んでないで、そろそろ終わりにしますよアルター。 私が出ます」

「えー?パゴメノスが出るのかよ?」

「最近死文明はあなたを執拗に狙っています。それ位は分かってますよね?」


パゴメノスが内ポケットからスイッチのようなものを取り出し、カバーを外して押す。


ピリリリ…ピリリリ…


ヘリの音が鳴る。

パゴメノスはスイッチをポイ捨てした。


フォーン フォーン

電子音がなり、ヘリから機械が投下される。


「いつ見てもかっちょいいねぇ!」


ヘリから投下された機械は、ロボットだった。


「パゴメノス、出ます」

全体通信で自分の進軍を告げる。軍拠点から出撃した他の部隊がそれに応える。


『アルターは?』

「死文明にターゲットされているので置いてきました」

『合理的だな。』


通信相手は先程話題に上がったゼレだ。


「アイコンタクト。ゼレ部隊視認しました。」

『コピー。フォローにつく。』

「ゼレ部隊がフォロー、把握しました。」


レーダーと目視で、敵を確認しつつ敵空母に向かっていく。


「小蠅が多いですね…」

敵空母からは無数の戦闘機が出てくる。それぞれが銃撃してきてかわしづらい。


「クラスター弾、発射する」


クラスター弾、先程のショットガンの巨大版だ。


「クラスター弾の効果でもキリがない」

『ア-ター-んが新兵-を搭載----て--試して------』

「ゼレ、ノイズが入っている…死文明はこれだから苦手なんです」


死文明のオカルト的な力は、機械によって栄えてきたこの水文明にとって弱点となる。通信機器が[[rb:ジャミングされた > 呪われた]]のだろう。


「新型の兵器と言いましたでしょうか…このボタンか」

《稲妻プログラム》


「相変わらず名前のセンスがない…きっと雷を使ったものでしょうね」


ボイスチャンネルを拡声器に変更する。


「各隊下がれ!アーク放電兵器を使用する!」


返事は聞こえないものの、他部隊の機体が下がっていく。言語が違うためか、死文明の幽霊船は全く下がらない。


「なんでアーク放電だってバレたんだ…?」


地上ではアルターの困惑があった。


「稲妻プログラム、起動」


バリリリリリリ


青白い電気の塊が、敵陣へ向かって放たれる。その電気は、敵から敵へと伝わって行って、死文明の幽霊船を殲滅した。


「やったぞ!実験は成功だ!」

地上で見ているアルターは大きく跳ねてガッツポーズをした。


「空母内部まで電撃が届く…なんて強い兵器なんだ」

『空母一基の墜落を目視確認。通信復旧した。相変わらずアルターさんはいい兵器を作る』

『敵が引いていく…』


放電の威力を受け、敵陣が引いていく。


パゴメノスは地上に降り、機体から降りた後に格納庫に収納させた。


「成功したな!ゆくゆくは量産機にも…」

「アルター、なんであなたはそうやってすぐ熱くなるのです。量産機にあんなもの載せても気軽に使えるわけじゃないんです。コストの無駄ですよ。論理的に、冷静に考えてください。」


勝利したにも関わらず、パゴメノスは機嫌が悪い。


「死文明から賠償金は取れるのでしょうか…」


それを聞き流しアルターはバツが悪そうにして、ガレージに入っていった。

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