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グレベーシ事変

サンライズさんとガンダムファンの方々に怒られませんように……

「どうやらこっちの方が1枚上手だったようだな」

クリフォトは思わず呟いた。この戦争はサルファが仕組んだ物。サルファが文明間の対立を目的として開戦した。

だが、ビナー(ノエ)を送り込んだのはサルファではない。クリフォトだ。

クリフォトはノエをアインでゼニス・W化し、殲双剣を持たせてパルガンの方へ向かわせた。実の所、クリフォトはノエに『アイン・ディビリット』、弱体化の魔法をかけていた。ところがいざゼニス化してみると分裂してモーリェが出てきてしまった。モーリェに弱体化は間に合わず、殲双剣を持って行ってしまったのだ。

と、ここまでなら負け濃厚だったのだが、問題なのはパルガンの存在だ。パルガンは八握剣(葬送刀)を持つ特異体……期待通りではあるものの、まさか本当にビナーに勝ってしまうとは。やはりあの『日食』とかいうの、BAN効果が…?


考え事をしていたクリフォトの傍らを、凄まじいスピードで何かが通り抜ける。

パルガンが見逃さなかったように、クリフォトもまた見逃さなかった。


「…うん?今通ったやつ……パルガンと…………アルター?」


アルター…アルター。サルファと共に最強であるアルター…パルガンと行動を共にしているだと? なら、もう既にサルファはアルターの所在を掴んでいるはず……そうか、向こうはやはりパルガンを恐れている……!



数人がビナー・アッシアーのモヤにやられ、人では無いものに変わり果てた。距離を取ったアルター、その意図は解明と決断のための時間稼ぎ。

「さっき思いついた攻撃方法がある……だいぶ前にアニメで見たやつのパクリだが……」

アルターが息切れしながら言う。反粒子は魔力でコーティングしているから、魔力も消耗するし、まず亜光速の中で着地地点を探す事の大変さは言うまでもない。

「端的に言う。このまま水文明の軍隊を全滅させつつ俺はあの化け物の気を引く。」

「わかった、その隙に日食を叩き込めば……もしかするかもってことだね」

何も分からない、誰も知らないこの状況。その中でアルターは冷静に皆をまとめ指揮する。

「よし……じゃあ行くぞ……」

(カラマリ……すまない……)

アルターはそんなことを思いながら、地を駆ける。そしてどんどん加速していき、やがて飛翔プログラムで飛び上がる。アルターは、生まれ育ち、発展させてきたこのグレベーシの、その民から集められた兵士を全滅させる。その重みを背負いながら、アルターは力いっぱい叫んだ。


「《月光蝶》である!」


アルターのパックパックから、反粒子が放出され、魔力によるコーティングが光を反射し、煌めく。その煌めきは、アルターに極彩色の蝶の翅を与えた。あの時アニメで見た武装、最強のナノマシン兵器……ナノマシンの代わりに反粒子を使用。完全再現では無いが、似たようなことはできている。

「はっ? え?」

「えげつな……」

つい、唖然としてしまう。アルターが散布した反粒子が兵士たちに当たると、その部分がえぐれる。大量に散布しているのだから、頭からどんどん消えて行き、足も残さず、その兵士が立っていた地面さえも削り取る。

だが、ボーッとはしていられない。アルターが作っている隙は、一度きりの、覚悟の乗った大切な隙だ。

フラゴルは、落ちているモーリェの殲滅剣を見つけ、それに向かって走り出す。ブレンネンはパルガンとゼレを連れて無詠唱のブレイズ・バーストによる飛行でビナー・アッシアーに再接近。



反粒子はアルター・クアンタムのエンジンで絶え間なく生成され続けている。正直言って本人も原理がよくわかっていない。だが、まぁ、大丈夫だろう。

何はともあれ、眷属にもこの反粒子散布が効いている。魔力的な何かではなく、ちゃんと物質でできているということだ。物質全てを消滅させる粒子……

「絶対兵器か……でも平和賞は貰えないだろうな……」

そのうち、ビナー・アッシアーが射程内に収まる。今のところ、特に動きはない。同じように、モヤを生み出し続けている。

「《COMPILING NEW PROGRAM - "AVENIR QUANTUM"》」

アルターの装甲がパージされ、アルターの周りにアヴニールとして再構築される。もちろん、アヴニールにも反粒子ジェネレータができている。

「ロックオン!《光線プログラム》」

反粒子を加速し、熱線に混ぜて照射する。

「アア……?」

「効いてないな……常識外れの存在という訳だ」

「《דְחִיָה(拒 絶)》」

モヤを作ったものと別の呪文のようなものをビナー・アッシアーが唱える。すると、ビナー・アッシアーを中心に黒色で半透明のバリアが広がる。半径20m程に広がり、広がるバリアに押されてアルターがバランスを崩す。

「ううっ?! アヴニール、動け! なぜ動かん!」

そのバリアの効果か、アヴニールの電源が落ちる。再起動しようと電源ボタンを押してもつかない。

「くそっ!」

アルターは、アヴニールのコクピットをこじ開け、乗り捨てる。

「キャーウ」

マルトの眷属、コピルが飛来して、アルターの手に足を押し当て微弱な電気を流し握らせる。

「アヴニィィール!!!」

「インパルス・ドライブォォーー!!」

クチワの叫びが聞こえると、セスランスがアヴニールをハッチに無理やり入れる。セスランスはその衝撃で一回転し、逆噴射でなんとか勢いを殺しながら荒々しく着地した。直後に再び離陸する。

「セスランス! 聞こえるか!」

「……スリル満点!」

セスランスから無線が入る。通信障害は起きていない……いや、その前にセスランスとアヴニールの無事を喜ぶべきだ。

「キャーウ」

コピルが放電し、バリアに攻撃を与える。

「ア……」

バリアはその電気を吸収し、1本の黒い雷に変えてコピルとアルターを撃つ。叫び声を上げるアルターにリヒテンベルク図形が刻まれる。

そして、許容量を超えるダメージを受けたコピルがマルトの元に魔力となって還る。気絶したアルターは、地面に向かって落ちていく。

「《בינה》」

「……《TURN ON AVENIR - MODE: WISDOM(ウィズダム)》……HELLO WORLD.」

セスランスのハッチが開き、アヴニールが飛び出す。搭載されているAI、WISDOMによる自動操縦モード。アヴニールがアルターの元に着いた頃、黒いモヤはすぐそこまで迫っていた。

「COMPILING NEW PROGRAM - 《消滅プログラム》」

アヴニールから緑色の粒子が放出され、アルターとアヴニールを包む。すると、それらは消滅し、モヤは地面に当たって消える。

「《帰還》」

アルターの乗ったアヴニールが、着地した状態で再出現する。

「アルター!」

パルガンとブレンネンが到着する。

「バリアに攻撃するな! 返ってくるぞ!」

「魂を送る刀よ、真の力を以って彼の者に安楽を与え給へ! ……ダメ?!」

日食が発動しない。これでは斬り掛かることもできない。

「ヤツエル?」

「……知らぬ……」

ヤツエルも日食の発動条件は分からない模様。

「なんで知らないの!!」

「パルガン、上ェ!」

「……《月食》ッ!!」

上から降ってきていたモヤを月食で斬る。スレスレでモヤが消える。

「《TURN ON AVENIR - MODE: MANNED》」

アヴニール頭部の、穏やかに点滅していたライトが点灯に切り替わる。有人操縦モードだ。アルターの目覚めを意味する。

「アルター! …《月食》!」

葬送刀でバリアを裂く。だがすぐに逆再生されたようにバリアが修復されてしまう。

「アア…」

「んもぅ! どうしろって!」

再びモヤが降ってきたので斬る。

(こっちの攻撃は届かない……向こうの攻撃は即死……)

「とんだクソゲーだよ!」

パルガンが毒を吐く。その背後に、クリフォト。

「ああ 本当にな」

パルガンは寒気を覚える。

怒っている……クリフォト。

「《コピー》」

パルガンの持っている葬送刀が、黒く縁取られたように光る。黒色の光。

「《ペースト》」

その光が、クリフォトの手元に集まり、葬送刀と同じ形を為す。 クリフォトは葬送刀のコピーを逆手持ちで構え、少し後退する。

「3…2…1…《月蝕》」

助走をつけ、葬送刀のコピーを勢いよくバリアへ向かって投げる。

(本体には攻撃できないが……バリアなら大丈夫なのか。)

制約の抜け道を見つけたクリフォトが放った葬送刀は、バリアに突き刺さり、バリアと一緒に砕け消える。

「もう一度貼られる前に倒せ。」

「《月食》……」

パルガンが刀を構えて走っていこうとする。だが、それをブレンネンは呼び止め、肩に手を置く。

「な、なに?」

ブレンネンは、刀を握るパルガンの拳に、自分の拳を合わせる。グータッチ。

「しばらくぶりに……全員揃って戦える!…全員で、みんなで、やるぞッ! パルガンッ!」

ビナー・アッシアー。異形の姿をした巨大な怪物。確かにひとりの人間にとっては大きすぎる敵だ。だが、人には仲間がいる。仲間と協力すれば、人はどこまででも強くなれる。肩車すれば、身長は倍になるのだ。

「……うん!」

ブレンネンがパルガンの背中に手を置く。続いて、アルター。 ブレンネンの後ろにフラゴル。アルターの後ろにゼレ。

突如、セスランスが光り始める。パルガンを応援する光を放ち始める。

セスランスの光、ゼレ、フラゴル、アルター、ブレンネン……葬送刀には、白い炎のように光が揺らめいていた。

「《金環日食》……」

そして、セスランス・クルー共々、全員で叫んだ。

「「「「「「「《断炎斬り》」」」」」」」

巨大化した刃が、振り下ろされる。ビナー・アッシアーは真っ二つに。その断面から、メキメキと伸びる植物。()が、伸びる。

「木が……なんだ?」

「あとはこっちでやれる」

クリフォトが前に出る。ビナー・アッシアーの方へ歩きながら、多色魔法の詠唱を始めた。

「ケテル コクマー ビナー ケセド ゲブラー ティファレト ネツァク ホド イェソド マルクト……《多無色魔法 - アイン・ソフ》」

クリフォトの顔から、笑みがこぼれる。



この日から、世界は大きく動き始めた。


人間では無い巨大な怪物の出現。その討伐のためにグレベーシの民約70%が消滅・死亡した。それによってできた空き家、大量の移民が呼び込まれる。


反物質の発見。絶対的な力を求めて、アルターはその身柄、その装備を狙われるようになる。各地で機械を使う人間・集団が悪党の襲撃を受ける。結果、現在グレベーシは無政府状態となっている。アルターが身を隠しているのは、数少ないグレベーシ星民の生き残りからの報復を恐れてでもあった。


クノップの死。彼の使う機巧兵装、アルターと会ったことがある事実。悪党の反感を買うには十分過ぎた。クノップの一族は絶え、自然文明から機巧兵装という技術は失われた。


「"ビナー"のセフィラが還った……クリフォトが、先にビナーのゼニス・ワンダラーを発見したんだ……それをパッション・ワンダラーが倒した……」

実感の湧かない話だった。会ったことの無い仲間が死んだと言われても泣くことは……いや、サルファが求めているのは哀悼ではなかった。全てのゼニス・ワンダラーを集める、その計画に全力で取り掛かる時ということだ。


一連の事件……それらは、後に歴史に残ることになる。『グレベーシ事変』として。

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