クリフォト その2
エスパーダ、とあるファミリーレストラン。クチワ、ムボガ、マルトの3人と席を離して、パルガン達はすこし重い雰囲気の中で食事していた。
「よし、情報を整理するぞ。」
アルターが仕切る。こういう時水文明のジーニストはありがたい。頭が良いので話がわかりやすい。
「まずはひとつ。準決勝Aブロックのあの時点で青ブロック側待機室にいた選手、医療班、スタッフ合計16名全員が首を落とされていた。センジュの仕業と見ていい…。」
センジュ。パルガンの治癒をして、葬送刀を与えた人物。
「センジュ…って名前は何度も聞いたことがあるぜ、剣の道を歩んでいけばいつか出会うことになる『剣神』…主にセンジュ御前と呼ばれている。センジュ御前と会ったことのある剣士は人間の域を超えた剣の腕が身につくとか何とかって話だ。」
フラゴルがセンジュについての説明をする。伝説に残っているような剣豪は、全て伝説の中でセンジュに会っているという。
「ああ。フラゴルありがとう。分からないのは、そのセンジュ御前がなぜ虐殺、襲撃をしたのか…」
パルガンは、葬送刀ジギタリスを鞘に収めた状態で取り出して見た。やはり、刀が手に馴染む。センジュの影響なのだろうか?
「センジュはこの刀を僕にくれたことを失態って言ってた…しかもくれたことを忘れていた…つまりセンジュは誰かに操られた状態にあったんじゃないかな?」
「剣神を操れる存在か…」
支配系の魔法は存在する。悪人が使う魔法で、罰則はかなり重い。死刑を超える罰を与えられるという話だ。
「センジュよりも強い人なんて………まさか…サルファ…」
そう呟いた時、ブレンネンが着けていた紙エプロンが吹き飛ぶ。
「うわっ?!」
空席だった隣のテーブルに、気づけばクリフォトが座っていた。
「クリフォトさん?!」
「だ、誰だっ?!」
ブレンネンが動揺する。
店内が一気に静まり返っている。物音1つしない。ピタと止まっている。
「初めまして、パッション・ワンダラーの皆々様。パルガン殿は2度目ですが…」
*
大会の場には、クリフォトも居た。
「ゲブラー…やっぱりサルファに奪い返されていたか!…まぁいいか。仕事はしてくれたし。」
アーティファクト、最初の1つ目は干渉なしで手に入っている。運がいい。アーティファクトとアーティファクトは引かれ合う性質があるから、ひとつでも手に入ればそいつの元に次第に集まっていく。にしても、八握剣を早めに手に入れさせるためにゲブラーを利用したのは良かった。アイン・スレイブ、奴隷化の魔法。単なる凄腕の剣士だったセンジュにアイン・ソフをかけてゼニス・ワンダラー化。そしてアイン・スレイブをかけて奴隷化。神剣である葬送刀を見つけさせ、パッション・ワンダラーに与える。今までのトライで、葬送刀に何かしらの隠し要素があるのは分かっている。だから早めに葬送刀を与えてみた。吉と出るか凶と出るか…
「おお…戦えてる…」
思わず声が漏れてしまった。ゲブラーはまぁまぁ強い部類のゼニス・ワンダラーだ。この土壇場で蛇比礼が手に入った棚ぼたもあってなのか、かなり戦えている。
今回は実験回のつもりだったのだが、なんだかトントン拍子にうまくいきつつある。彼らと直接接触する羽目になったのは痛いが、そこまでの減点にはならないだろう。
「うん?」
パルガンが剣を振りかぶって…刀身が白く光っている?目の錯覚じゃなければ……
「ちぃ、逃げられた!《アイン》」
そしてクリフォトはアインで帰還した。
*
「決闘大会でセンジュにやっていたあれ、見せていただけるか?」
クリフォトがパルガンに聞く。
「センジュにやっていたあれ…」
日食のことだろう。
「『日食』のことなら、訓練の時にやろうとしてもできないんだ…ヤツエルも何も教えてくれない。」
そう答えるとクリフォトは少し考えるような仕草をする。
「お、おい…パルガン?」
ブレンネンが困惑する。いや、ブレンネンというか、席を囲む全員がクリフォトのことを知らないのだから、みんな驚いて座る位置もクリフォトがいない側に寄っている。
「あぁ、この方はクリフォト。サルファの敵なんだって。自然文明のあの時大蜘蛛の他に人型の化け物も2体居たんだけど、その2体を倒してくれた人だよ。」
どうやら困惑は解けたようで、少し恐れつつもまぁ落ち着いたようだ。
そしてクリフォトは考える。
(あの時発動した『日食』…セフィラを顕現させられる力…是非とも役立てたい…次回以降のタイムに関わる。)
「条件に心当たりはあるか。」
「うーん……」
パルガンはその時の状況を思い浮かべる。
左腕が落とされ、未知の刀剣の存在が発覚する。無限大の可能性の択が広がり、間違えれば死ぬ…追い詰められることが発動条件なのだろうか?
いや、違う気がする。もっと大きなパワーがあの時あった。火事場の馬鹿力よりも大きなパワーが。
「…応援?」
「……………………」
クリフォトが固まる。脳内をフル回転させている。
「いや、ありうるか…ふむ、文明との繋がりを捨てたワンダラーの切り札が、人との繋がりの力とは皮肉だな…。」
ブレンネンがイラッとしたのが空気でわかる。
「聞き捨てならんなぁ、ミスタークリフォトォ?我々は文明との繋がりを捨てては居ない!我らと故郷の文明は心で繋がっているッ!」
「そうか。なら水文明に行くといい。アルター、お前が文明を捨てた結果を観光してくるといいだろう。」
「…どういう意味だ…!」
「《アイン》」
クリフォトは消え、時間も動き出す。アルターのやり場のない困惑混じりの怒り、ブレンネンの心についた火だけがそこにあった。
中継回なので短いです。




