決闘大会 - 剣神センジュ・ゲブラー
決闘大会パルティータ、準決勝。異例ではあるが、フラゴルの棄権による実質的なシードであるブレンネンのBブロックが先に行われることになるらしい。
ブレンネンは普段からブレイズ・バーストによる爆発を主力としているが、なんとアイン・スパイダーなどの強敵と戦う時よりも決闘大会の時の方が強いらしい(本人談)。本当のことならかなり困るのだが、同時に少し期待も抱ける。本気のブレンネンはどんな戦闘をするのだろうか。剣の稽古をつけてもらったことはあるが、その時はもちろん剣での模擬戦だったので魔法での戦いは初めて見る。
「パルティータァ!準ンン決勝ォォォ!!!!Bブロォック…!!!」
準決勝だからだろう、実況のテンションがかなり上がっている。喉が心配だが…
「赤ァァァーサイドォ、彼は語ったッ!『最強とは爆発である』とッ!!爆発の貴公子・ブレンネェェン!!!!!」
ブレンネンがリングに出てくる。歓声が上がる。ブレンネンは手を挙げその歓声を受け止めている。
船長なだけあって割と有名なようだ。羨ましい。
「続いて青ォォォサイドォ!!!激闘の一回戦を勝ち抜き、準決勝に駒を進めたのはァァ!電光石火のォォクルテル!!!」
ナイフ使い、クルテル!小柄な体を生かしナイフで戦う剣士。刃渡りの短さを苦に感じさせない素早さが持ち味だ。
「決闘のいいところってよぉ、やっぱ観客がいるとこだよなぁ!お前もそう思うだろ、クルテル!」
「試合前に無駄口を叩くな。」
クルテルは冷たく言い放つ。火炎文明にも、時折こういう心がじっくりじわじわと燃えているタイプのやつがいる。
「パルティータァァァ……!…準決勝、スタートッッ!」
試合開始のゴングと共に、クルテルが視界から消える。高速移動だ。
「追いかけっこか?」
ブレンネンは、足元を爆発させ、爆風で体を加速させて空に飛び上がる。
「あれは、詠唱の省略!」
魔法も、剣技も、その名前を声に出すことでイメージが明確になり、結果として高い威力の技になる。だが実は詠唱は必須ではないのだ。長く使い続け、体に染み込んだ技、魔法は、詠唱せずとも技を成功させられるだけのイメージができるのだ。
しかし、どの技を出すか悟られない利点につり合うだけの弱点がある。
「船長、まさか無詠唱の爆風を利用して!」
クチワの目が輝いている。
無詠唱の魔法は、詠唱付きのものと比べて威力が弱いという弱点がある。だがブレンネンはそれを利用し、自分に当ててもダメージが無いレベルの爆風を受けることにより加速していく、ボンボンという爆発音のみが客席に届いている。両者ともに観客の視界から消える。スピードの世界…
「あぁっとブレンネン選手ゥゥゥ!!クルテル選手の人並外れたスピードについて行ったァァァ!!!我々にはもはや追えないィィィィィ!!!!」
「姿が見えたぞ、クルテルよ!《ブレイズ・バースト》!」
「同じ魔法を同時に…?!!」
上空からブレイズ・バーストの弾を射出する。ランダムに地上が爆発していく。砂埃が上がったことにより、クルテルの動きが少し見える。
「そうか…!…普段は俺たち水文明を含め仲間が沢山いるからあの戦法は危険…ブレンネン船長はタイマンの時こそ真価を発揮するのか!」
クルテルは地上を懸命に駆け、ブレイズバーストを避ける。だが小石などが少しずつダメージを与えている。一矢報いることができなければ、このままやられてしまうだろう。
「ナイフの刃渡りじゃあ空には攻撃できないだろう!」
「なら…!」
クルテルは、手に持っているナイフを手放し、瞬時に足で掴みなおす。クルテルの姿が少しぶりに観客の目に映る。そして、そのナイフを、高速移動に使う脚の筋肉を利用し投げる。投げたナイフから衝撃波が起きる。客席に突風が吹く。
「ソニックブーム?!音速でナイフを投げやがった…」
アルターが驚愕する。
「でも、あのナイフ、投げることは想定していなかったみたいだ……替えのナイフも出さない…!」
ムボガが冷静に分析する。
投げたナイフは命中したようで、空から血が垂れている。ブレンネンにダメージを与えたことは確か。
ブレンネンは足に刺さっていたナイフを抜き、連続爆発で燃やす。
「ちっ…はっはっは!だがこれでナイフを手放したなぁ!《ブレイズ・バースト》!!」
「加速した!?」
ブレンネンは詠唱付きの通常の威力のブレイズバーストを足元に撃って使って急加速する。その加速でナイフを手放したクルテルに急接近し、クルテルを抱きかかえ再び無詠唱のブレイズバーストで上昇していく。
(これが『ブレイズ・バースト』の威力!…何故この威力の爆発をものともせずに飛行できる…?…流石はシードということか…!!)
クルテルは至近距離に居るせいで、ブレンネンの飛行用の爆発を連続で受ける。受ける度に、視界がチカチカする。
「さよならだ」
「な…」
ブレンネンは、急上昇し、空でクルテルを手放す。クルテルが墜ちていく。
(この高さなら…なんとか着地できる……)
「《ブレイズ・バースト》ォォ!」
落下中のクルテルに、さらにブレイズ・バーストを撃ち込む。その威力と、加速に、クルテルは気を失う。
ブレンネンは、爆発を巧みに操りいち早く着地する。ブレンネンは決めポーズをして、息を吸い、高らかに決め台詞を放つ。
「バースト・エンド!」
クルテルが地面に叩きつけられると同時に、さらに追い打ちをかけ爆発する。
「勝者、赤サイド・ブレンネン選手!ノックアウトォォォォォ!!!!」
ものすごい歓声の渦。ブレンネンの、セットプレイからのノックアウト勝ちを賞賛する渦だ。
医務班がクルテルを担架に乗せて運んで行った。だいぶ追い討ちをかけたせいで治すのは大変かもしれないが…
「どうして…そんなことが思いつけるんだ…!」
治療室で、クルテルは吐露した。
*
激動の準決勝Bブロックを経て、ドゥエート対パルガンのAブロックが始まる。小休止を入れ、元気を増した実況のアナウンスが待機室にまで聞こえてきた。
「相手は強敵だ、気をつけろよ、パルガン!」
「うん!」
ブレンネンと握手して、パルガンは勇気と力を得た気分になる。ブレンネンは決勝進出を決めているから、パルガンがここで勝ったらアーティファクト入手は確定となる。ブレンネンが負けると思ってる訳ではないけど、さっきのあの本気のブレンネンと戦ってみたい気持ちもあるし、勝ちたい。
ブレンネンはパルガンの背中を叩き、立ち上がって肩を回した。
「あんま気負いすぎるなよぉ?パルガンが勝っても負けても、俺が勝つからな!アーティファクトゲットは決まってらぁ!そんじゃ俺はそろそろ青サイドの待機室行ってくっからな!」
ブレンネンが席を立つ。ブレンネンはBブロック側で勝ったから、決勝では青サイドから出てくることになるから、ブレンネンは青サイド待機室に移動する。
「さぁさぁさぁ!!やって参りましたァ、パルティィィィーータァ準・決・勝!、Aブロォォック!」
さっきの試合のボルテージがまだ残っているようで、会場は既にあたたまっている。
「赤ァァサイドォォ!自在な剣技と判断力で準決勝に駒を進めたァァ!!一刀両断のパルガァァァン!!!!!」
「よし、行くぞ…って、うわっ!」
パルガンが姿を見せると、もうとんでもない感性が飛び込んできた。一回戦とは大違いだ。やっぱ、実力が分かるとファンが着くんだな。
「続きましてぇ、青ォォサイドォォ!双剣を振るうヒーロー!!準決勝ではどんな試合を魅せてくれるのかァァァァ!!!ツインブレーダー・ドゥエートォォォォォ!!!!」
パルガンは面食らう。一回戦を超える自分への歓声をさらに超える歓声。これが人気の差…いや、人気の差で勝敗は決まらない…と思いたい。とにかく、気圧されず行こうと心を奮わせる。
「…あれ?」
なかなかドゥエートが出てこない。歓声がだんだん収まってきているような…気がする。ドゥエートがなかなか出てこない。なんだ?トイレか?僕が出てくるの、早すぎたんじゃ…
「ぐえっ」
青サイドの待機室から、突如ブレンネンが吹き飛ばされてくる。腹部に打撃を食らったようだ…いや、それ以前に切り傷まみれだ!なんだ?異常事態に、場が凍りつく。
「ブ、ブレン!!何があったの?!!」
駆け寄っていき、話を聞く。
「セ…セン………」
だがブレンネンは、気を失ってしまった。
そして青サイド待機室から姿を現したのは…ドゥエートの首を持ったセンジュだった。
「セ…センジュ…さん…?…なんでドゥエート選手の首を…持って…」
客席からものすごい悲鳴が上がり、みな一目散に逃げていく。
「か、会場の皆さァァァん!!すぐに、すぐに安全な場所への退避をォォォ!!!」
「全ての者の首を狩れとの勅であったが…こうなっては仕方がない…そこの者より先に…まず障害となるパルガン…お前を先に葬る…」
明らかに、雰囲気が違う。このセンジュ、なんか違う…偽物?いや、センジュの姿を真似て何になる?少なくとも実力者なのは確実だ。
「センジュ御前、あなたはこの刀を与えてくれた…なのになぜ…?」
敵対の確認。敵か味方かの確認が必要だ。
「…あなや…そうなればそれは…我の…失態であるな…であれば我が始末をつける…《奥義 - 百花繚乱・舞》」
センジュが視界から消える。
いきなり本気モードだ。
「ま、まずいっ…絶対やばい!」
防御…いや、魔纏刀の例もある、きっと意味が無い。なら逃げる…どこに逃げる?地上に逃げ場などない。空中…あの巨体だ、跳躍力もあるだろう。しかもブレンネンも居る!
「そなた!こちらを使いなさって!」
赤サイド待機室から出てきたオロチエルが何か布を投げる。…あれはエーデルの!
聖比礼エンドレ…とか言ったっけか!
エンドレがパルガンの元に届くと、エンドレは袴の形からグッと伸びてパルガンを包む球体に変化する。服の体をなしていない。
「エンドレは魔力を流して使うのですわ!」
「う、うん!」
エンドレに触れ、魔力を流す。これは推測だが、エンドレが伸び縮みするということは、エンドレのサイズと接触面積によって魔力の消費量が変わるのだろう。かなり持っていかれる…
すると衝撃が突然走る。恐らくセンジュが攻撃してきたのだろう。流石エンドレ、全くダメージを受けていない。ただ少し波が起きただけだ。
「マスター、ゼニス・ワンダラーの者を誅する為にはその刀の真の力を解放する必要がある…詠唱をするのだ…」
ヤツエルはエンドレをすり抜けてパルガンの元にやってくる。チカエル、イクエルも。
「え、詠唱…この刀にも、詠唱があるんだね…」
「全ての真剣には詠唱によって一時的に引き出される真の力がある…時間は無い…早く…」
パルガンは、刀を構え、息をフッと吸い集中する。呪文は、勝手に口が動く。刀の持ち主だからだろう。
「『魂を送る刀よ、真の力を以って彼の者に安楽を与え給へ』」
刀が、白く染っていく。月食の紅とは違う。白い、神々しく美しい刀身になる。
「今の状態の葬送刀は『日食』…ゼニス・ワンダラーを殺すことが出来る…致命傷にはならなくとも一撃与えれば相当のダメージが入るはず……」
「与えられれば…ね…」
センジュの手の内は知っている。匿銘刀オドリコによる透明化、暴風刀エノコロによる高速移動、火柱刀ヒメバショウと爆裂剣ホオズキによる超火力。祓魔剣ヒイラギは僕には効かない。そして美双刀サクラフブキによる超回復。要するに、見えなくって、速くって、攻撃されたら死んでしまう敵を、回復されるより前に倒さないといけない。…日食なんてあっても無意味なんじゃ?
いや、違う。日食で一撃で致命傷を与えればいいんだ。センジュの攻撃を食らった瞬間に、センジュに致命傷を与えれば、相打ちに持ち込める。烈火居合なら…
「この際出し惜しみは無しだ…情報を授けよう。匿銘刀は攻撃の瞬間だけは透明化を解除する必要がある…」
ヤツエルが焦ったような声で言う。珍しい。
「なるほど…後ろにも目があれば…どこから攻撃されるかわかる……僕だってジーニストなんだ、できないってことは無いはず…!!」
ジーニストには脳が複数ある。そのため人間でありながら並列思考が可能…だが使ったことがなければ1発でやるのは難しい。そもそも、ジーニストとして生を受けたところで脳が複数あることに気づけるものも少ない。最大限の力を発揮出来れば、天才となれるのだが。
「僕の2つ目の脳を後ろからの気配の察知のみに全力を注がせる…2つ目の脳…2つ目の…!!!!」
分かる。自分の中の2つ目の脳…同じことを同時に考えている。
(これなら…)
エンドレを縮めて、一旦収納空間に置く。
息を吸い、集中する。
「パルガン!!」「パルガーン!!!」
仲間の声がする。応援している。次第に、知らない声…観客の声もしだした。だが…集中…明鏡止水。
(さぁ…どこからでも…)(来い…)
鞘を出し、腰に携える。そして刀を収める。前傾姿勢。一撃必殺、居合の構え。
「…《烈火居合》」
応援の声も届かない。ただ、センジュの位置の感覚、自分の刀の間合いのみが知覚できる。
「笑止」
センジュが、後ろから姿を現す。姿が現れたことを感じる。
パルガンは、渾身の居合斬りを放つ。
「やぁっ!!…外した?!」
刀を振るうも、センジュにダメージはない。
(いや、外してない…当たってないんだ…!…すり抜けた!)
そしてその背後のセンジュが、消える。
「《幻泡剣ツユクサ》…なぜ我が持っている刀剣があれで全てだと思っていた?」
パルガンの背後に現れたセンジュは、幻泡剣の力による幻だった。百花繚乱・舞の発動中は詠唱無しで真の力が出せるために、剣の存在を知覚させずに不意打ちが可能。
センジュは、上から来ていた。6本の腕で、神剣を振り下ろす。
「があっ!」
「む…今の一瞬で…逸らしたな…パルガン…」
何とか反応ができて、パルガンは葬送刀と左腕でセンジュの攻撃をめいいっぱい逸らす。だが、左腕は耐えきれなかった。
(左腕が…左腕を持って行かれた…いや違う、左腕を犠牲に…右腕と両脚を守ったと考えるべきだ…くそっ…)
左腕…断面から、血がどくどくと流れている。熱い。朦朧とする。出血量がかなりやばい…
「だがお前は刀を両手で構える…左手が無くなってはいつものように剣技は出せなかろう…?」
出血多量…アルターが言っていた…人は1L以上血を失うと死ぬ…意識が遠くなる…呼吸が…上手くできない…!
パルガンは、フラフラとして、敵前で倒れ込む。
「パルガン!…まずいっ!!」
「フラゴル君行くな!足手纏いになるだけだ、あのセンジュという者、明らかに格が違う…違いすぎる…!」
助けに向かい…向かいたいが…論理的じゃない!
「論理ってやつかよ‥論理なんざ‥クソ食らえってんだ…!」
「まて、待てフラゴル君!」
ゼレは、触手でフラゴルを掴む。
「ゼレ!良い加減にしろ、お前の論理的思考のせいでパルガンが死んだらどうすんだよ!」
「いいや、違う…論理ではない…応援だ…我々はここでパルガン君とブレンネン船長を応援するんだ…!」
応援。ゼレが出した結論、応援。
「応援…?…応援って…お前…!…応援ひとつで…あれに勝てると…?…応援なんかで!」
「前々から感じていた…パルガン君には不思議な力がある…我々の想像を超える何か…パルガン君は…やってくれる…そんな気がする、だから応援するんだ…!」
ゼレは、触手を解き、元の長さに戻す。フラゴルは、パルガンの方へ走ったりはしなかった。
「パルガン………やれ…やれ……やれェッ!!パルガンッ!!!」
フラゴルが上げたその声に続いて、パルガンを応援する声が大きくなっていく。
「パルガン!!!」「立てェッ!パルガン!!」「行けぇぇ!!」「一刀両断のパルガン!!!」「頑張れ!パルガン!!」
火炎文明の人々。決闘大会を見に来た、アツい人々の声。
パッション・ワンダラーの仲間。同じ船で旅する仲間たちの声。
クチワ。
「パルガンさぁぁん!!!!」
ポルボラ。
「やっちゃえ!パルガン!!!!」
ムボガ。
「立ってくれ…!…パルガンさん…っ!!」
マルト。
「パルガン!!」「ガルッ!!!!」
ゼレ。
「頑張れ、パルガン君!!」
フラゴル。
「やれェェッ!!!パルガァァァン!!!!」
アルター。
「立て、パルガン!!!」
ブレンネン。
センジュの次のターゲットはブレンネンのようだ。いつのまにか起き上がっていたブレンネンは、決闘の時を超えるほどの立体的な動きでなんとかセンジュの攻撃を避けている。
そんな中、ブレンネンがパルガンに目線を向ける。
「パルガンッ!来い!」
輝きを失った刀に、再び白い光が宿る。日食葬送刀ジギタリス。ゼニス・ワンダラーに太刀打ちできる刀…
「マスター!」「パルガンっ!」「フン…」「そなた!」
大精霊の声もする。
パルガンは刀を地面に突き立て、ゆっくりと立ち上がる。陽の光が眩しい。
「僕がさっき…やられたのは…みんなの声が聞けていなかったからだ…応援の声…みんなからの、パワー…」
眼を見開く。世界が、全てが、美しく感じる。色、温度、陽の光、声。その全てが、力になる。
あの日初めてやった多色魔法で感じた、人と人との繋がり。人間は分かり合える…文明や種族なんてどうでもいい。全て人間なのだ。ここにいる誰かが、実は人を殺していたり、嘘をついていたりするのかもしれない…でもそれも、人間なんだ。人間である以上、繋がっている。宇宙全ての人間は、人間である故に、繋がっているのだ。
今、その繋がりがパルガンを動かす。パルガンに、力を与える。
「ありがとうみんな…」
想いが、繋がりの力が、左腕を形作る。虹色の、光の糸束のようになって、左腕の代わりをしている。片手じゃない。一人じゃない。この刀は一人で握っているわけじゃない。みんなで握っているんだ。
「パルガンッ!《ブレイズ・バァァーーストォォォッ》!!!」
ブレンネンの声。
「…この威力……!」
センジュが、パルガンの方へ吹き飛んでくる。
「………ハァァァァッ!」
見えた、センジュの弱点、魂!肉体の中に輝く、赤色の、結晶のようなもの。
「《日食》!!!」
センジュは咄嗟に腕でガードしている。パルガンの、想いを背負ったパルガンの大きさに気圧されたのだ。
(いける…!)
「《痺》」
刀を握る腕が止まる。体が…動かない。痺れている…!
そして腹部に感じる違和感。
投げナイフのような、黒い刃物が、パルガンの腹に刺さっていた。さらに挟むようにもう一本。同時に、2本の投げナイフが、突き合う形で投げられている…?
「《ゼニス》」
パキッという、何か木の棒を折ったような音と共に、センジュと、2つの人影がゼニスのゲートで消える。
………逃げられた!?
「に、逃げ……はあっ」
パルガンは、急に息が苦しくなり倒れ込む。センジュが突然消え、緊張状態から解ける。ともかく、観客が死ぬことはなかった。歓声、称賛の声がパルガンに送られる。じきに救護班が到着して、担架で左腕と一緒に運ばれていった。
状況の整理を後回しにして、1日ゆっくり休んだ。パルガンの左腕はくっついた。
決闘大会の決勝戦は明日、予定通り行うらしい。
アイテムの解説…
《ゼニスの護符》
サルファが作った木簡型のアイテム。折るとゼニスのテレポート効果か分身効果が使える。BAN効果を含むその他の効果は使えない。




