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決闘大会 - 魔剣士

ピュレトスの代表的なランドマークであるそのアリーナは、歓声の渦の中にあった。ピュレトス国王主催のこの決闘大会『パルティータ』は、2年に1度行われる大会試合はトーナメント方式で、参加人数は8人。1回戦→準決勝→決勝となる。

優勝者に贈られる商品は毎回違い、基本的にはエスパーダの名工が作った剣やら、賞金など。だが今回はアーティファクト。これではやる気も起きないのではないか?とも思われていたが、どうやら優勝で手に入る名誉があれば賞金がいらないほどの金銭が稼げるようで、最初からアーティファクト目当てのパルガンたち以外の決闘もかなり盛り上がっていた。パルガンはBブロック。ブレンネンはDブロックで、フラゴルの棄権により2回戦からの参戦だ。


「なぁ…フラゴル君、もしかして…もしかしなくとも、パルガン君以外の試合にも()()()()のかい…?」

観客席では、双眼鏡片手に試合を真剣に見つめるフラゴルと、心配そうに見つめるゼレがいた。

「あぁ…このAブロックの試合結果は目に見えている…赤サイドの双剣使いドゥエート…積極的に表舞台に立ちファンクラブもある…人間としては気に入らないが…戦いにおいての実力があるのは確実だ…現にここ1年で出場した小規模大会は全勝…大きいものでも結果を残している…勝てるやつに出てるだけって言うやつも居るが…だったら大きな大会には出ないだろ?…俺はあいつが大会優勝の最大の関門だと思っている…」

フラゴルは、ドゥエートの腕を買っているようだ。だからこそ賭けのチケットも()()()いる訳だが。

フラゴルの絶対の自信と裏腹に、試合は少し膠着気味だ。序盤に双剣の踊るような怒涛の連撃を繰り出したドゥエートに、対戦相手である青サイドの選手ウルクは盾を持った魔法使いという珍しい相手。その守備性能を見誤ったか、ドゥエートとウルクのぶつかり合いは一旦距離を取り、両者消耗し睨み合いとなった。

歓声にも罵声にも聞こえる声がそこらで上がっている。

睨み合い、試合開始直後の衝突で消費した体力をゆっくり回復している状況。多分ドゥエートも、自分が得意とする双剣での速攻戦術を耐え切られたことが想定外だったのだろう。体力の温存を考えず、使い切る戦い方をしたのだ。ウルクも、盾強化系の魔法や盾を出す魔法には『攻撃を受ける度に魔力を消費する』という性質があるから、だいぶ消耗しているはずだ。両者、確実に仕留めるビジョンがなく、だが次に仕掛けて耐えられたら絶対に負けるというビジョンははっきり見えている状況。


しかしこの状況、互角に見えて有利不利は明らかなのだ。

「フラゴル君、君の考察の聞き心地は良くとも、実際は拮抗状態にあるようだが?」

「はは、そう見えるか?だが違う。この状況、ドゥエートに圧倒的な有利がある。」

ドゥエートは積極的に表舞台に立ち、大会に出場するという経験を積んでいる。一方ウルクは消極的な方だ。つまり、今会場で巻き起こっている歓声と罵声。これにプレッシャーを感じるか、気にしないか、味方につけるか…ドゥエートはファンクラブもあり、自己肯定感も高い。つまり歓声の効き目が良い。両者回復を待つ状況、だが回復が早いのは…

「仕掛けたっ!」

「沈黙を破ったのは赤サイド、ドゥエート!華麗に舞うように、美しく、情熱的に!」

実況席が湧き、歓声が大きくなる。ドゥエートを応援する声がはっきりと聞こえている。

ウルクが完全に押されている。押され気味とかではない、押されている。魔力を帯びている盾で受け流してはいるが、双剣はその名の通りふたつの剣がいっせいに襲ってくる。ガードは難しい。そもそもの相性が最悪なのだ。ウルクの敗北は目に見えている。

フラゴルがガッツポーズする。

大どんでん返しなどもなく、ついにドゥエートの一撃がウルクにクリーンヒットし、ウルクは倒れる。血の薔薇が咲き、ゴングの音。

「勝者!赤サイド、ドゥエート!!」

歓声の渦がさらに激しくなる。

「ふ、フラゴル君…あれ、死……」

「一流の治療師が居るからよっぽど死なねぇよ、安心しろ」

「…魔法ってのは凄いね……」



「はぁ、スピードの世界が恋しい…なんで僕たちが子守りなんて…」

クチワが愚痴をこぼす。愚痴の相手は、アルター。クチワ、アルターはフラゴルとゼレとは離れて座り、ポルボラ、マルト、ムボガの子供三人を任されていた。

「クチワ…さん、でしたか」

「え?そんなかしこまらなくっても良いよ、アルターだったよね?」

クチワ…あの船の、操縦士をやっているクチワ。話したことはない。それどころかパルガンたちと話しているのを見たこともない。

「あぁ…ああ、俺はアルター……スピードの世界?」

気になっていた単語を手繰り寄せる。

「今どきの宇宙船には基本的に搭載されているワープ・ドライブ…あの船にはそれがなくって、今だに使ってるのは相当な物好きだけだけど…インパルス・ドライブによる亜光速移動!ワープ・ドライブはその名の通り0秒で到着できる、対してインパルス・ドライブは0に()()速度での到着になる。」

クチワが得意げに語る。あぁ、火炎文明なんだなってなる饒舌だ。

「それじゃ、ワープの方がいいんじゃ?」

「そこが、ロマンなのさ。ワープドライブはね、ワープしちゃうのが情熱に欠けるんだよ!水文明に分かるかなぁ、この気持ち!」

ちょっとイラッとくる。なんだ?差別か?

アルター自身も心の声で火炎文明らしいとか思っていたので、キレる権利は無いわけだが。

「インパルス・ドライブでの亜光速移動はね、光速に近づいたことによるウラシマ効果を防ぐために()()()()()()()を起こすんだ。つまり亜光速で移動する時、船側からそのスピードを正しく認識できるんだ!あのスピードの世界に体が溶けて行く感覚!その興奮はワープ・ドライブなんかじゃ味わえないんだからね!!」

「お、おう…」

横で、ポルボラ達が試合を見てわいわい騒いでいるのが見える。楽しそうだ。混ざりたい。…いや、待てよ?逆ウラシマ効果?聞き覚えがある。

「まさかそれ、『逆説相対性理論プログラム』?」

「あぁ、よく知ってるね!もしかしてアルターもインパルス・ドライブを-

「知ってるも何も、それは俺が研究所に入ってから最初に開発したプログラムだ!ワープ技術より逆説を貼り付けて反動作させる方が技術開発としては取っ付きやすいからな、コンペで勝ったんだ…懐かしいなぁ…」

クチワの眼差しを遮りアルターが回想に入ろうとする。

が、アルターの回想を遮るようにゴングが鳴る。第一試合終了のゴングだ。

「クチワ、クチワ!ドゥエート様が勝った!勝ったぁ!!」

ポルボラがはしゃいでいる。

船内でちらっと聞いたが、ポルボラはドゥエートのファンらしく、ワンダラーになって惑星を発つ前はファンクラブに月会費を払っていたのだそう。お得な年会費プランにしていない理由は「その方がドゥエート様に多くお金が入るから」との拗らせっぷりなんだとか。

「次の試合、パルガンのじゃないか?」

「赤コーナーパルガン、青コーナーはエーデル…『舞う魔剣士』だって」

パンフレットを見ながら、クチワが言う。

「舞う、魔剣士!!」

そのロマンある響きをポルボラが繰り返す。

「マルトくん…魔剣士って…なに?」

「わからん」

ムボガがマルトにこっそり聞く。そこにアルターが割って入る。

「魔剣士は剣技で戦うパルガンみたいな普通の剣士と違い、魔剣と呼ばれる魔力伝導率の高い素材で出来た剣で魔法陣を作りながら魔法で戦う剣士のことだ。」

「き、聞こえてたんだ…」

ムボガは少し困惑しつつ感謝した。


魔剣士の最大の特徴は、細めの剣と身体を自在に動かし、切っ先の軌跡で魔法陣を空中に形作る事で発動する、強力な魔法だ。魔法陣は、ただ十字を切るのみの容易なものから、大きく長く複雑なものまで存在し、多種多様な魔法が使用できる。また魔法陣を介すことで、当人の魔力の性質に影響されず、火炎、水、自然の全ての分類の魔法を同様に使用できる。しかも発生させた魔法に当人がダメージを受けるようなことも起きない。だが、弱点もまた魔法陣を作ること、魔法を使うことだ。というのも、魔剣士は練習の時間が無くて剣技を使えないのだ。そのため、魔力が切れてしまっては単なる三流剣士に他ならない。つまるところ、魔剣士と対戦する際、勝敗を分けるのは継戦能力と言える。


「つゥづいての対戦はァ!!赤コーナーァ!!宇宙を旅するワンダラーの筆頭!一刀両断のパルガァン!」

実況の声に合わせ、パルガンがステージに立つ。応援の声や、拍手などが起こる。だが、あまり知名度は無いようで少しまばらにも思える。比較対象が人気者(ドゥエート)だったからかもしれないが。

「青コーナーァ!!うゥつしく描かれる魔法陣で見る者を魅了してやまなァァい!舞う魔剣士・エーデルゥ!」

そう呼ばれ出てきたのは、独特な衣装の女性であった。複雑な構造の厚着…いや、一つの服なのか?とにかくごつい。着太りしている。だが決して見窄(みすぼ)らしくなどない。直感的に浮かんだ言葉は、「優美」だった。どこかで一度聞いた気がする、この世のどこかにはありとあらゆる芸術品をも凌ぐ美があると。それが、あれかもしれない。彼女はそんな美を身に纏っている。その特異な美しい風貌を見ていると、一つ一層目を引くものがあった。腰に携えている物だ。

「…刀?」

鞘と鍔があり、反っている。持ち手は葬送刀とは全く違うが、葬送刀の方がおかしいのだろうな。葬送刀に鞘はつけていないが、葬送刀にも鞘はあるらしい。鞘付きで出して欲しければいつでも出せるとヤツエルが言っていた。つまり葬送刀とほとんど同じ見た目の物と言って過言では無い。

パルガンがそれを見ていると、ヤツエルが急に飛び出してくる。

「あれは…鍔からして『魔纏刀(まてんとう)センブリ』…神剣だ……間違いない…」

「しかも、あの服の刺繍!」

「オロチエル…聖比礼(ローブ)エンドレ……三枚ある聖比礼(ローブ)のひとつだ…」

全身アーティファクト…いや、神剣はアーティファクトじゃないけど…ん?そういや神剣ってなんだろう?そういや開催までの間ずっと練習してたから質問とか何もしてないや…特異体ってなんなんだろ?なんかもうどうでも良くなってきたけど。

「パァルティータァァ!Bブロック第一試合…スタァート!!!」

パルガンは即座に雑念を払い戦闘モードに入り、エーデルの目を見る。

「丸腰か!」

エーデルがパルガンにそう声をかける。芯のある、気高く力強い女性の声だ。

「《葬送刀(そうそうとう)ジギタリス》」

パルガンが唱えると、黒い塵が集まってくるようにして鞘に入ったジギタリスがパルガンの手元に形成される。

柄と同じような、王宮の燭台のような金色の鞘だ。だが刀の特有のオーラはありえない鞘と柄に包まれていてもわかったようだ。

「それは…刀…」

「僕も君と同じ『神剣』だ!手加減は無しで良いよ!」

「ああ、素より手加減などするつもりはない!…もうひとつ、その三匹の妖精は戦闘には関与しないと言うことでいいな?」

エーデルはパルガンの周りを飛ぶチカエル、ヤツエル、イクエルの三人を指して言う。

「もちろん、"剣士同士の決闘"に水を刺すような真似はしないよ!君の妖精もそう言うことでいいんだね?顔が見えないようだけど…!」

アーティファクト…ということは大精霊が居るはず。オロチエルとヤツエルも言っていたし。

「…オロチ、挨拶を。」

現れたのは、赤を基調とした華美で派手なドレスに身を包み、白い手袋をしている大妖精、オロチエル。エーデルと対照的な美しさだ。

「おーほっほ!頭が高いですわ、人間!!」

「オロちゃん…?!…すっごいキャラ変わってるね!かわいい!」

チカエルがオロチエルの方に飛んで行って抱きつく。

「ちょっと!久しぶりだからって…距離が近くってよ!チカ!」

「えへへ〜」

抱き合ったまま並行移動していくチカエルらに続き、大精霊4人が、待合室の方へ移動していく。

パルガン、エーデル、両者共に刀を腰に携える。

剣士同士の戦いでは、ゴングとは別に開戦の儀式が両者の暗黙の了解に基づいて行われることが多い。

「パッション・ワンダラー電気技師、パルガン」

「火炎文明魔剣士協会会長、エーデル」

自身の身分と名前を名乗り…剣を構える。

パルガン、エーデル、両者腰の鞘から刀を抜き、

次に剣技や魔法を使わない純粋な突進が続く。

「やぁぁーーっ!」

「ハァッ!」

豪快な音を立てて、火花が散る。その後は鍔迫り合いか、近接戦か、距離を取るかの択となる。突進に合わせ客席から歓声が上がる。

「《鳳蝶》!」

回転しながら横に薙ぎ払う剣技。だがエーデルはこれを地面を蹴って後ろに下がり避ける。

エーデルは続いて、刀を振り体の前でバッテンを描く。

「《(ほのお)(まと)ひ》」

(あれが魔剣士の魔法!)

属性を纏わせる魔法は最も簡単な魔法陣である。

普通は火炎文明の種族に対して炎を使っても効果がないが、パルガンはジーニストであるため炎に対する耐性が無い。というか、属性系の攻撃全てに耐性が無いのだ。適応という面で見れば、パルガンとアルターに体温の差があったように耐性はある。アルターには極限の寒さへの完全な耐性がある。だがパルガンが育ったエスパーダは、極限と言えるまでの暑い環境では無いのだ。

炎を纏った刀が振られる度に、ブォンと音がする。エーデルは自分を軸に鋒で斜めの円を描く。そしてエーデルが動き出す。身を翻す度に、比礼が揺れ動き、炎が軌跡を残していく。その流線は美しく、パルガンまでも魅了する。

「《気刃召致》!」

エーデルは舞の締めに回転し、その一回転と共に斬波がパルガンを襲う。パルガンは非実体を実体化させる効果のある月食で、その斬波を斬る。

「《月食》《断炎斬り》!」

「…斬った……?…あの刀の力か…ならばこちらも……『魔を纏う刀よ、真の力を以って総てを斬り給へ』」

「何かやった…あれは確かセンジュも!」

センジュが葬送刀の魔獣を倒すときに使った祓魔剣(たいまけん)ヒイラギは、錆びた杭のような見た目をしていたが詠唱の後に光の束に変貌した。また、匿銘刀(とくめいとう)オドリコも、詠唱によってパルガンたちを隠した。つまりあのセンブリにもなにか力があるということだ。

「《気刃召致》」

センブリの鋒の軌跡が再び輝くと、斬波が発せられる。ただし今度はパルガンへではなく、下へ。

「斬波の反動で?!」

エーデルは反作用によって跳躍し、パルガンに思いっきり斬り掛かる。

「《断炎斬り》!」

「剣技?!」

エーデルがパルガンの使い慣れた断炎斬りを発動する。だが、魔剣士は剣技を使えないはず--


気を取られた隙に、ノーガードで断炎斬りが当たってしまい、よろける。炎で傷口が焼けた。

「パルガン!」

一瞬気が遠くなった時、客席の仲間の声がした。

(今の…一撃…!…ただの剣技じゃない…魔力が吸い付く感覚があった…つまりあれは魔力を帯びている…!)

「この距離なら陣は描けないね!」

「!」

エーデルは飛び斬りの形をとり、パルガンに近づいている。刃渡りはほぼ同じ…互いの間合いの中!

「どれだけ剣技が使えるのか、試させてもらうよ!」

刀を握る手に力を込め、振り上げる。

「そのダメージからそんな言葉が?!」

「《陽炎斬り》!」

エーデルは地面を蹴る。

「それもう見たよ!《延焼天》!」

鋭い踏み込みから前飛びをして横に薙ぐ技、延焼天。舞で鍛えられたのであろう跳躍力で思いっきり跳ばれるも、ギリギリ届き、脚に刃先が届く。確実に届いたはずなのだが。

「斬れない!?アーティファクトだからか!」

「この袴は相伝の品だ!傷つけられると思うな!」

全身を覆う袴が、刃を通さない。ただ斬れない服、防具なら叩けばいいが、あの様子だと衝撃も吸収されていると考えられる。着衣面積=無敵ゾーン…なら顔か首…だがそう来るのを相手は待っているはず。下手にカウンターを喰らっては持たない。つまり、詰み…そんなクソゲー、今までに誰かが物言いを立てない訳がない。まさか…

「今までで君に刃が届いたのは僕だけってこと?!」

「ああ、そうだ!何人たりともこの袴を突破できない、だが誰もその事実にすら気づくことは無い!」

「ほぼ反則じゃないか…!何か手は…!」

服なら脱がせれば…いや、相手は人間だ、公の場なのに脱がせる訳にも行かない。

「《雷神之一太刀》」

考えている間に陣が完成している!

エーデルは刀を鞘に収め、親指で鍔を押し少しだけ刃を出す。深い前傾姿勢、居合切りの構え。

「!」

少し見えている刃…炎が消えて居る…刀身が虹色に光っているのが見える。魔纏刀の()()()()()

「《波動バリア》!」

「ハァッ」

咄嗟に魔力を放出して波動バリアを形成する。波動バリアはかなり魔力を消耗する為無効化された時が怖いという欠点があるが、どうやらうまくいった。

「何!」

魔力が衝突し合い、共振して弾きあい、刃が止まる。

「その刀、魔力を流しているよね?魔法を付与しながら魔力自体も帯びさせて驚異的な切れ味を出している、でも長くは持たないんでしょ?」

「っ…その身で知れ!《陽炎斬り》!」

「《揚羽蝶》!」

揚羽蝶は、鳳蝶の応用。回転させる刀剣の角度を変える事で風の流れを作り、魔力で補助して飛び上がる。

(多分図星だ!勝ち筋はできた、魔力切れによる気絶!)

魔剣士の身体は普通、剣技に適していなかったりする。つまりエーデルの体力の消耗はかなり激しいはずだ。

「《肆転連撃》」

(着地に合わせてきた!)

揚羽蝶で飛んだパルガンが着地する隙を狙い、剣技の肆転連撃を宣言するエーデル。

パルガンは、咄嗟の判断で身体を横倒しにし、エーデルの4回連続で斬る剣技、肆転連撃の初段を避ける。しかしそれでは着地ができない。地面に転がる形となる。

「ふざけた真似を!」

パルガンはそこから寝転がるような形で二段目、三段目も避ける。転がりながら起き上がり、そして最も威力の上がる最終段。膝立ち状態のパルガンは攻撃を刀身で受けカウンターを狙う。

「判断を誤ったな」

だがエーデルの魔纏刀はパルガンの葬送刀ごとパルガンを斬りつける。

「なんて…斬れ味…」

「この刀、魔纏刀(まてんとう)センブリに斬れぬ物は存在しない。」

アーティファクトに破壊耐性があるんじゃない、あの(ローブ)に破壊耐性があったんだ。葬送刀にそんな耐性は無い。アーティファクトだから壊せないのではない、ローブだから壊せないのだ…。

「…………」

審判の3カウントが聞こえる。動かないパルガンを見て、ダウンと判断したのだろう。

液が込み上げてきて、咳と共に血を吐く。だがそれが気付になる。

「…………それでも!」

「なんと、耐えるか!」

パルガンは、伏せた状態から起き上がり、膝立ちの状態になる。刀を素早く鞘にしまう。

「《烈火居合》!はぁぁぁーーーっ!!!」

この距離なら、手を狙える。刀を鞘から抜くと同時に、思いっきり斬り上げる。傷口から血が吹き出ている。だが、仲間が応援していると思えば、痛みも感じない!

「なんだと!」

エーデルは回避しつつ間合いから外さないため、斬られ短くなった刀身を意識して最小限に避ける。だが刀は、元の形に治っている!

「!!、魔纏刀っ!」

「《月食》!!」

魔纏刀に流れている魔力の流れを実体化して斬る!思いつきだけど、できるはずだ!

-居合斬りは魔纏刀に命中する。

「魔纏刀が…!…魔力を斬った?!」

虹色をしていた刀身が、紅く染まり、元の鈍色に戻る。

「今度はこっちの…《肆転連撃》!」

耐久は無理だ!首を狙って気絶させるしかない!!だがそのためには確実な隙を作る必要がある、そこで刀だ!魔剣士も剣士も剣がないと戦えない、刀を叩き落とせば隙ができるはず、刀を持つ手を狙い、刀を手放させる!

「ふん!せい!やぁ!」

刀で小手を叩くと、狙い通り刀を握る手が少し緩む。もう少し…

エーデルは最終段を毎度の如く後方に跳躍して避ける…だが、今回は跳躍が遅れた!届く!

「最終段を…切り替えて!…《肆段目/延焼天》!」

「勢いを別の剣技に乗せた!?」

「捉えた!」

延焼天で横に薙ぐと、エーデルはついに刀を手放す。

「しまった!」

ジギタリスを納刀し、鞘ごと腰から抜き、刀を取りに行こうとするエーデルの首を殴りつける。

「《断炎斬り(殴打)》!」

「ぐはっ…」

エーデルが地に伏せる。

3カウントの後、ゴングが鳴ってパルガンの勝利が確定すると共に、歓声が吹き上がる。

「危なかった…もう一発食らってたら負けてたかも…なんなら死んでたかも…」

「パルガン」

「うわっ」

エーデルが、すでに目覚めてパルガンに話しかける。

「お主は強い…その判断力と耐久力は、誇るべきだ。」

「魔剣士っていいね。いい踊りだったよ。踊り子になるべきなんじゃない?」

「…嫌味か?……それより…」

エーデルが、立ち上がり、言いづらそうにいう。

「『電気技師』という名乗りはやめるべきだ。」

「そ、そっか…そうだね…そうだよね……」



「《ゼニス》」

センジュがなぜパルガンを助けていたのか。なぜシアノと戦っていたのか。結論から言えばそれは、クリフォトが原因だった。

無限の力が解放されれば世界が滅びる。そのために、センジュは洗脳され、無限の力を解放しようとしているパルガンに力をつけさせようとしていたのだ。実際、パルガンのような立ち位置の人間に力をつけさせるのは世界滅亡にとって王道の選択肢らしい。セフィラ権限状態の時に吐かせた情報。アイン・ソフ・オウルは「リセット」の魔法であり、標的に設定されたセンジュはリセットされたのでサルファの仲間となった。だがそのかわりにセフィラ顕現状態になってしまったので、ゼニスを使って再びセフィラを封じ込める必要があった。

「…かたじけない」

「死ななくってよかったな。正直効果とかよく分かってなかったからな…」

「射程範囲内にはシアノ殿も居たが…」

「?」

サルファは首を傾げる。シアノがなにか関係あるのか?という顔だ。

「シアノ殿とは親友では…無かったか…?」

「…あぁ、俺の親友は先にも後にもアルターだけだ。」

アルター…それらしき人物は居るが、パルガンが居る以上、確証が持てない段階で動くのは得策ではない。

「そろそろ行け、送ってやる。任務(ブリーフィング)は頭に入ってるな?もう一度聞き流しておけ、今朝連絡した通りセフィロトから作戦許可が出た。パルガンの直接の仲間じゃなければ下手な覚醒も起きないだろうという予測の元…」


「大会参加者を皆殺しにする。」

魔纏刀センブリは、魔力を流すことによって「魔力以外」を全て切断することができるという刀です。そのため今回に同じく波動バリアには防がれます。波動バリアはバリア魔法の中で1番簡単で、噴水みたいに魔力をバーって出すことで攻撃を防ぐ魔法。対して普通のバリアは魔力を物質に変換して攻撃を防ぐ魔法なので、パルガンが普通のバリアを使っていたら一刀両断されて死んでました。あそこでパルガンが波動バリアを選んだのは、魔力が流れていることを一回切られた時に感じていたからなんですね。ノーダメージだったら死んでました。


余談 いつも5000〜6000文字くらいで投稿しようと思ってるのに気づいたら8000文字行ってました。長い文章でしたが読んでくださってありがとうございました。

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