「情炎」
火炎文明編です。
…眠いな
眠い目を擦って…布団から出て…誰かと会話して…朝ご飯を…
「パルガン!!」
!
…まだ布団の中?!
起きてなかったのか…自分は
「おいパルガン!いつまで寝てんだ!朝の鍛錬にまにあわんぞ!」
「ん…あ…うん、わかったよ…おはよう…ブレンネンくん…?」
「あたりだ!目は覚めたようだな!さっさと行くぞぉーーっ!!」
バサーっ
「うわっ! …ちょっと、掛け布団放り投げるのやめてっていつも言ってるじゃん…」
「はは!お前がさっさとこないのが悪いんだ!いくぞ!」
パルガンは、夢の中で繰り返し行なっていた起きるための動作を、ようやく現実で済ませた。
そして、訓練用の模擬刀を手に取り、訓練場へ向かった。
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人物解説 ブレンネン
火炎文明での主人公であるパルガンの友人。テンションが高いように思えるが、情熱に燃える火炎文明ではパルガンのテンションが低すぎるのであり、起床時刻になるとものすごい勢いで布団から飛び出して、訓練時刻より前に自主練を始めているブレンネンが一般的である。
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火炎文明からの放浪者であるパッション・ワンダラーの船には、火山地帯で時折採掘される、火炎文明の人々でも熱さを感じるほどの熱量を持つ金属の「アルデウム」が積まれている。アルデウムで作られた武器は、すぐさま燃えて傷口が開きづらいことから、出血などによるダメージが見込めない。
そのため、火炎兵士たちの訓練は常に一撃の次を考える、連撃を意識するものとなった。
1 2 3 4 5
1 2 3 4 5
…笛の音と共に素振りが繰り返される。
素振り、模擬戦、体力トレーニング。
1時間と少しほどでトレーニングが終わると、隊長、フォーゴによる朝礼が始まった。
「では、これにて朝のトレーニングは終わりとし、これより自由トレーニングの時間とする! 燃え盛る炎というのは、自由に動き、毎秒違う形をしている!それぞれで自由な時間を過ごすように!解散!」
挨拶の例え話はもはや決まり文句と化していた。
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用語解説 火炎文明 表記揺れ:火炎の文明
現世の三区分の惑星環境のうち、気温の高さが特徴の惑星で栄えている文明。対応する放浪者は『パッション・ワンダラー』。特産物は「アルデウム」。
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放浪者達は、宇宙を船で放浪している。その船の動力源は、火力、水力etc…
パルガンは暇な時間、電力室に時折立ち寄っていた。フォーゴからは電気技師に任命され、長い放浪の旅での移動手段である船の心臓部を任されている。
この船は、誰が作った者でもなく、その昔火炎文明の勇者が倒した龍が形を変え、宇宙船になった…なんて伝承がある。
この船が動く原理を考えた人は少なく、大抵龍だから飛んでるんだ!と言われている。
電気技師の任命はパルガンがフォーゴに申請した者で、フォーゴはよくわからねぇけど勝手にやってろと言った。電気室の存在自体信じられておらず、そのドアの奥に入ったのもパルガンとその友人のブレンネンくらいなものである。
『電気技師のパルガン』という言葉は、そんな背景もあってか、情熱に欠けているパルガンを揶揄する言葉としても広まっていた。
「エンジンの出力が不安定になってる…アルデウムの融点は高いはずだから部品の変形や膨張は考えにくい…このエンジンは熱があればある程発電できる仕組み…ってことは、どこかの熱源が弱まっているのかな」
レンチを片手に、パルガンはブツブツと考えを言葉にして整理する。
ガン ガン ガン
エンジンの熱源周りをレンチで叩き始めるパルガン。
「お、おい、何やってんだ?」
ブレンネンはそのパルガンに駆け寄り、腕を抑えて止めた。
「そんなに叩いたらエンジン壊れちまうんじゃねぇか?!」
「大丈夫だよ、この辺のパーツは硬いんだ いまは叩いた時の音の反響具合で歪みを検査してるとこ」
ガン ガン ガン
「お前すごいな…」
ガン ガン ガン ゴンッ
「? ちょっと音が違った」
「同じ音じゃねぇか!!」
カラカラカラカラ…慣れた手つきでボルトを外す。
「熱源パーツの色が黒ずんでる…なんでだろう?」
「????? 熱源パーツってのは黒色のアルデウム製なんだから黒いのは当たり前だろ…?」
「煤とかの黒色は汚い黒色なんだよ アルデウムはもっと綺麗な黒色してる」
「わかんねぇなぁ…確かめるために採石場行ってくる!!!!」
今は船は近くの惑星で止めている。そのため、エンジンの修繕には良い機会だ。
「さて…今のうちに物騒な治し方はやっておくか」
そういうと、工具箱を開き、ランダムサンダーを取り出す。ランダムサンダーにスポンジを取り付ける。
ヴィィィィィィ
作動音が大きい。そのため、これをブレンネンの前でやるとサンダー以上に騒がしくなること間違い無い。そのため、ブレンネンがいなくなったタイミングで使った。
「綺麗になる…原因はやっぱり煤か どこかに異物が入り込んだかな?炉を見てみよう」
一通り綺麗にした熱源パーツを再設置し、次に炉を開ける。
「燃えかすが残ってる…?」
トングを手に取り、燃えかすを摘む。
「なんだこれ…洗浄してみよう」
ランダムサンダーで磨いてみる。すると、透明な破片であることがわかった。
「…?まあいい、これで原因は取り除けたかな」
ポーン
作業完了の信号を出す。出発可能状態だ。
ダダダダダダダダダダダダ
外が騒がしい。
窓から見てみると、外にはブレンネンがいた。
「ブレンネン!まだ採石場にいたのか!…この惑星の発着場からだと遠いもんな…」
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エンジン(火炎文明)
薪を燃やし、アルデウムを加熱する炉がある。炉はエンジンの始動後、アルデウムの加熱が済んだら停止するため、薪はかなり長持ち。排気も少なくて済む。加熱したアルデウムはなかなか冷めず、水を循環させてタービンを回す方式のエンジンだが数光年フル出力で回せるだけの熱量。
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続く