プロローグ
"生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである。 --チャールズ・ダーウィン"
生命の起源はただのアミノ酸であったとされている。アミノ酸は結合してタンパク質を形成した。
単なるタンパク質に生命が宿ったのはなぜか。
末端の科学者がぼやいた。「細胞一粒とっても本能のようなものがあるのかもしれない」と。
細胞の増殖は、ただのDNAのコピーではないのかもしれない。がん細胞はコピーエラーによって発生する。だが、がん細胞とはただの悪性物質なのであろうか?
少なくとも細胞は進化した。変化した。つまりそれは、細胞が自身の単なる複製だけを作ったわけじゃないことを意味する。がんという物は悪い形で現れた変化であるが、良い変化をすることもあるのだ。
適応。進化。適者生存による生命の多様化。数多の環境に適応するための数多の進化。生存するために、全ての生き物は変わっていった。
だが、根幹に変わらない部分がある。それは生き物であるということだ。魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類、無脊椎動物…全く違うようにも思える。だが、知能。それがその違いの壁を壊した。
人間が、鳥を飼う。支配ではなく、相棒のような、対等の存在として。鳥は名を得て、服を着て、言葉を交わす。共に遊び楽しみ、感情を共にする。
いつか鳥が人間と遜色ない知能を手に入れた時、果たして人間と鳥の違いとは、なんだろうか。
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世界の星には大まかに分けて3種類の種類が存在した。
ある場所は熱に覆われ、物体は溶けたり気体になった。
ある場所は水没し、陸というのは海底を指した。
ある場所は自然豊かで、木々には神が宿った。
それらの星には知的存在があった。それぞれの違った場所に、支配種が存在し、最も適合できたものが存在した。それは人間。知性を持たない獣と違い、圧倒的な知性を持つ存在。
火炎の文明、水の文明、自然の文明。それらは「現世」とまとめられた。
やがて世界には外が存在することが確認された。
膨張するこの宇宙の逆側にある、縮小する宇宙。
神はそこから来た。
死霊はそこへ旅立った。
神の文明、死の文明。それらは「超世界」とまとめられた。
貿易や戦争、創造と破壊を繰り返しつつも世界の均衡は保たれていた。
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誰が言い出したのだろうか。
「どこかには無限の力が眠っている」
無限。その力は当然現実にはなかった。
無限の力を生み出そうとした二つの永久機関。
第一種永久機関はエネルギー保存の法則、第二種はエントロピー増大の法則により不可能とされた。
なら超世界にはあるか?否。現世の法則があまり通用しない超世界でも、エネルギー保存の法則やらエントロピー増大の法則は共通していた。
だが。誰かが無限の存在を噂した。
信頼などはなかった。なんなら誰が言ったかもあやふやだった。誰かの一言によって生まれたほんの僅かな可能性。0%じゃないなら追い求める価値が生まれた。
信頼やらなんやらは彼らにとっては必要ない存在だった。
かくして、全ての文明から冒険者が生まれた。
火炎の文明から生まれた情熱の追求者、『パッション・ワンダラー』。
水の文明から生まれた叡智の探訪者、『クール・ワンダラー』。
自然の文明から生まれた生命の信仰者、『ライフ・ワンダラー』。
神の文明から生まれた万物の守護者、『スター・ワンダラー』。
死の文明から生まれた殺戮の享楽者、『ネクロ・ワンダラー』。
文明から生まれた放浪者は無限の力を目指した。
プロローグ完