甘酸っぱい青春
私は今、青春の真っ只中にいるのだと思う。だって、こんなにも胸がいっぱいだ。
至って普通の高校生活、それだけの小さな、それでも確かな喜びを、友達と分かち合ってる。ただ、一緒に登校して、一緒に帰って、偶に遊びに行って。
「みーちゃん?」
ゆーこ、私、とっても幸せだよ。
「どうしたのよ、藪から棒に?」
私ね、満足しちゃったの。
「え、みーちゃん、もしかして.........」
うん。
もう私、ダメみたい。
「嘘...」
嘘じゃないよ。
でもいいんだ、すっごく楽しかったから。
「よくないっ! だってみーちゃん、こんなところで...」
道半ばだけどね。でも、もういいの。
だって、ほら、こんなにも甘酸っぱい。まるで苺の乗ったショートケーキみたいに。
「.........」
今まで、楽しかったなぁ。
「やめてっ、冗談って言って!」
思えば、ゆーこは短い付き合いだけど、私のことをよく分かってくれてた。横暴な私の無茶にも、よく応えてくれてたね。
「自覚があるなら直しなさいよっ」
バンジージャンプは楽しかったな。
「二度とやらない...」
スキーとかも。
「初心者コースからやりたかった...」
ジェットコースターだって。
「絶叫系は金輪際よっ!」
でも、ゆーこはなんだかんだついてきてくれた。
「連れ回されたのよ...」
でも、今日の......うっ。
「思い出さないでっ。何が死の引き金か分からないんだから!」
っふー、ふー。
ありがとう、あとちょっとだけ持ちそう。
「そう、このまま落ち着こう? もしかしたらこのまま何もないかも」
...ゆーこ、ちょっと手握って?
「...まあ、いいけど。...えらく強く握ってくるわね」
聞いて。
私が先輩に振られた時、もう何もする気力もなかった。何もかも投げやりだった。
そんな苦い時もあった。まるで無理して飲んだブラックコーヒーみたいに。
「......そういうとこよ」
そんな時、飽きもせず、ただ、毎日毎日、いつも傍に居てくれて。
嬉しかった。
「...満更でもないけど」
だから私、ゆーこのことが好き。
「私も」
凄く好き。
「私もっ! だから...」
もう結婚したいくらい好き!
「...あ、そういうのなら遠慮させてもらうわ」
ゆーこと甘々な日々を過ごしたいの! まるで蜂蜜の塗りたくられたパンケーキみたいに。
「......ちょっと...重いわね...」
でも、そのささやかな願いも、もう叶わないんだ。
「いや、諦めないで...、いや、諦めてもらった方がいいの? いや、目下のところは諦めないで!」
胸が痛いの。もう、ダメ。
「...うん、なんとか受け入れられそうだから、だから、ちょっと移動しよう」
無理、苦しい。
「なら、責めて看取るような形に...ちょっと、手、離してっ、なんだみーちゃん、火事場か? ちょっと、本気でっ、やめてっ、大通りよここっ!」
続きなんだけどね、私、ゆーことなら一緒に死んでもいいって思える。
「嫌っ、私は一緒に死にたくないっ、離してっ、このっ、握力っ」
心中しよ?
「はーなーしてー! いやー!」
私、今日重いの。
「そりゃそうでしょうよ! カフェで食べ放題とは言えあんなに頬張ってたんだから!」
私、今、甘いでいっぱいなの。
「そりゃそうでしょうよ! ショートケーキなりパンケーキなりたらふく食べたんだから!」
私、今、ちょっと苦いの。
「そりゃそうでしょうよ! 見栄でブラックなんて飲んだんだから!」
私、今、酸っぱいの。
「そうでしょうね! 胃酸がこみ上げてるんでしょうよ!」
甘くて、酸っぱくて、ちょっと苦い。これって、青春って思わない?
「断じて違うわ!」
んん、んっ、こんな、っ、青春の、真っ只中で、死ねるのなら、んっ、私は、まん、ぞく。
「だから青春じゃないって、いや、抱きついて来ないでっ、いやっ、死にたくないっ、殺さないで、何でもするっ、何でもするからっ、だから巻き添えにしないで!」
じゃあ、いっしょに逝こ?
「嫌ぁあああ!やめてぇええ!」
...ほんとに大好きぇぉよよよよよよよよよ。
その日、私達は、社会的に死んだ。
後日、ゆーこに社会的殺人罪で起訴され、私刑が執行されたのは、言うまでもない話である。
体験談をアレンジしました。
先週も死にかけたのですが...
皆さんも、こんな経験あったら教えてください。