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扉の先には



『室井ってさ、陽菜って名前なのに暗いよな』



うるさい




『お前ってほんと暗いし…なんか気持ち悪いんだよ』




うるさい………





『学校来ないでよ、根暗』






うるさい……!!!








ーーー






「………っあ……」






朝目を開けると、体中に冷や汗をかいていて、息が荒く、鼓動がうるさかった。



「……………」




自然と涙を頬が伝って、枕に顔を伏せる。








室井陽菜、高校2年生。

いじめが原因の不登校児。






ーーー





最近よく嫌な夢を見る。

夢と言っても……まぁ本当にあったことなのだけど。



「陽菜」なんて明るい名前の癖に根暗で地味で、友達だって1人もいない。



完全に名前負けしてしまい、からかわれるうちにそれはエスカレートして、いじめへと発展した。



それが原因で私は統合失調症になった。



幻覚が見えて、幻聴が聞こえて、人が怖くてたまらない。



対人恐怖症にもなってしまった。

人前でほとんど声が出せない。




そんな私の心の支えは……………






『変な夢見た………最悪』

『大丈夫?ひなせさん。相談乗るよ?』

『ひなせ疲れてるんだよー!休みなって(´∀`)』




SNS。





声のないこの世界なら、私はやっていけると思った。





『ひなせさん、大丈夫ですか…?私でよければご相談にのらせてください!(*°∀°)』




……最近、少し気になっている人がいる。

恋愛感情とかじゃなくて、純粋に。




ミヤコという、女の子。








ひどく純粋で、どうしてこんなアプリやっているのかと思う程お淑やかな子。

見た事ないけど……文面で伝わってくる。




その投稿にコメントを書けばいいのに、何故かトークメッセージの方で話しかけてきた。




『ミヤコちゃん、大丈夫だよ、もう落ち着いた!』



とりあえずそう返信して、一度スマホをおいてまた枕に顔を伏せた。





(………ここが私の居場所なんだ。学校なんて行かなくていい……)







ずっとこの部屋にいたい。


親に迷惑をかけてしまうけど、私はここから出られない。




この暗くて静かな部屋に、もう何日も引きこもってしまっている。








通知が鳴った。





『そっか……それなら良かった!』




………ミヤコさんは、どんな人なんだろう。






(……………まぁ、可愛い子、だよね。)







自分でもどうしてこんなことを言ったのか分からない。









『ミヤコちゃんと会ってみたいなー…』








ただ、それを送信した途端…我に返った。





「っ……何!?なになに私馬鹿なの!!?こんなんただの出会い求める奴じゃん!!………いや、その前に何でこんなこと………!!」





思わず枕を壁に向かって投げてしまうほど動揺して、急いで送信取り消しを押そうとした………が、





(そうじゃん……このアプリそういうのないんだった………)







最悪だーーー






(引かれるよね……最悪ブロック………もう嫌だ……せっかく仲良くなれてたのに………)





こんな私でも仲良くしてくれる、唯一の女の子。





手放したくなかった………











………………





絶望して、ふと画面を見ると……既読がついていた。




(……あ……無理だ……これ)





どうして私は………いつも、上手くいかないんだろう。




また、涙が溢れた。








その時……………








『い…いいんですか?!是非!私もひなせさんとお話したいとおもっていましな!!』










………え……







予想外だった。








『あ…ごめんなさい誤字が……嬉しくて嬉しくてつい舞い上がってしまって………返信も遅れちゃってごめんなさい…』





あの長い既読無視の時間は、どうやら舞い上がりすぎた故の時間だったらしい。








(なに、それ………)










それを知った途端………私は、








嬉しくて、愛おしくてたまらなかった。













『私も……会いたいです』



気付けばそんな返信をしていて、



『それでは早速場所を決めましょう!確かひなせさんは福島住みですよね!それじゃあ……』



息つくまもないまま予定が決まっていって、










ーーー









当日に………なっていた。








(大丈夫………ちゃんと女子高生らしい服も着てる。髪も大丈夫、臭く……ないよね)





久しぶりに外に出るのは、緊張という言葉では言い表せない感情になった。




合格祝いに買ってもらったMサイズの膝下の薄い黒のワンピース。

小さい頃好きでよく被っていた、白いベレー帽。




久しぶりに廊下の等身大鏡で自分の姿を見た。






(身長………少し伸びたかな。一年前は153cmくらいあったような………)




自分の背丈に少し違和感があった。




人間何をしていても、成長はしていく。




学校に行かなくても、部屋にひきこもっていても。






(外に………行くんだ。)







『今週の金曜日は私の学校は創立記念日でお休みなんです。10時にどうでしょうか。』





ミコトさんにそう言われたので、とりあえず目的地までの道のりをグーグレマップで調べてみた。





(割と近いんだな……駅か。)






ミヤコさんって確か、福島市に住んでるって言ってたっけ………



(電車で来るのかな……なんか、申し訳ないな………)



でも、大雑把に県とかなら公開してもいいだろうけど………市町村まで公開するのってどうなんだろ。



(世間知らずなんだろうな。)









………さて……外に、出なきゃ。







緊張しないように何も考えず靴を履いた、その時。





「あれっ、何してんの?ヒナ。」

「えっ……、あ、木陰」





姉の………木陰が不思議そうにこちらを見ていた。


「……でかけて、くる」

「ええっ!?出かけられるの!!?お姉ちゃんついてく?!大丈夫!?」

「大丈夫だよ………」




木陰は大学生で、私に対してすごく過保護。

不登校になった私にも優しく接してくれた………大切な、家族。





ちなみにうちは母がフリーター。父は会社員。




「じゃ、じゃあ行ってくるから。」






少し緊張もほぐれて………ようやく私は、外に出た。










久しぶりに開けた玄関のドアは少し重くて、外に出て、日差しが眩しくて……思わず目がくらんでしまった。





(あつい………)






……………大丈夫……かな








熱中症予防に自販機で小さめのコーラを買って、小さいショルダーバッグの中に入れた。







(コンビニで何か食べ物も買おうかな……いや、店員の顔見れないし……やめよ。)





出来るだけ人目を避けながら目的地の駅へ向かう。





(あぁ……暑い)





久しぶりに人と会う緊張でお腹が痛くて、なにかしていないと落ち着かなかった。


(こんなことなら……木陰連れてこればよかったかも。)




なんて思っていると………駅についてしまった。








駅の入口にいると言っていたし……多分もうすぐくるはず。




変な人だったらどうしよう、ネカマの男だったら……





不安でたまらなくて、買ったコーラを飲み干してしまった。




「っ……」





もう……帰ろうかな………









そう思っていた、矢先のこと。










「……おい、何だよあの美少女………めちゃくちゃ可愛いじゃん」

「こんな田舎にあんな子いるんだ……モデルとかかな………」




そんな声が聞こえてきた。






(………どんな人なんだろ)







そう思って、声のする方へ少しだけ目をうつす。









「………!」








そこにいたのは………白いレースのワンピースに、白い肌。

透き通るような青色の目。どう手入れすればそうなるのかと言うほど綺麗な長い金髪。





予想以上の………超美少女だった。




しかも





「………あっ、ひなせさん!」

「なッ……」







まさか、その人が……………










待ち合わせしていたあのミヤコさんなんて、誰が予想したんだろう。










更新頻度0に等しい。

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