第8話 罰を与える許可を
アオを伴い団三郎殿の屋敷へ。
シロとの留守番中に、連絡が有った厄介事の解消のため。
同行者の服装は、訪問者の期待を裏切れないと、和服でオイオイって相変わらずの装い。
大暴れしてもずり落ちない捲れない疑問とは別に、新たに追加されたのが、下着はつけているのか?
団三郎邸
使用人に案内されたのは、屋敷の主と、同じ妖狸の芝右衛門殿に太三郎殿が、開け放たれた座敷の縁側に座り、月を見ながら、お膳に乗った酒を酌み交わしている場。
妖艶なアオを見て鼻をクンクンさせているのですが、此方には視線を会わさずどころか見向きもしない芝右衛門殿に太三郎殿。
前に団三郎殿が、良い匂いと言っていたのを思い出し、アオは妖狸が好きな匂いでもするのかな?と思いながら訪問理由を。
「芝右衛門殿、太三郎殿、人族へ実害を与えている者達の件で、話しをしに伺いました」
太三郎殿は団三郎殿を睨み。
「おぬしが呼んだのか」
太三郎殿からの視線を気にも留めず。
「先程、電話が来たやろう、愛しのアカちゃんから番号を聞いたと言って、そこのアオちゃんからだったんやけど、誰が来てるか聞かれ、芝右衛門と太三郎と答えただけや、聞いとったやろう」
憮然としている芝右衛門殿。
「人族から金を騙しとっている連中の件なら、西では容認している、騙される人族が悪い」
「そもそも、人族を騙し困らせるとは、罰するどころでは無く褒めてやりたい」
妖狸族、大将の一角として、他種族への配慮が無い言いように怒りを覚えるも、ぐっと堪えて優しい表情のまま。
「芝右衛門殿、今の発言は、西の妖狸族の総意だと思って良いですか」
芝右衛門殿は、手酌で酒を飲みながら。
「西の妖狸族は、人族などに捕まることは無い」
「東の連中は、分からんがな」
太三郎殿も頷き。
「衰退の一途をたどる他の妖怪族と違い、我が妖狸族は繁栄している、見習ったらどうだ鬼族の大将」
「我が妖力で、化かされてみるか」
他の種族に比べて数は多くも脆弱な種族だと、分かっていないようだ、少し懲らしめてやろうと挑発。
「口は達者な太三郎殿、わたしに、何かを見せてもらえるのですか」
妖力を発し、何かをしているようすの太三郎殿、自信ありげから驚きへ。
「ふざけたことを言いおって、どうだ、怖ろしさに後悔・・・」
「なぜ平気な顔をしている」
身の回りに結界を張って弾いてるからだとは言わずに。
「早く、化かして下さい」
「怖ろしい幻覚でも、見せているのですか」
団三郎殿には事務所に張った渾身の結界が、全く効果が無かったのを思うと、格の違いを改めて感じ西の妖狸が心配になった。
冷や汗をかきだした太三郎殿を見た芝右衛門殿。
「何をしている太三郎、筋肉馬鹿に頭脳派の力を見せてやれ」
「芝右衛門よ、まったく効いていないのだ」
筋肉馬鹿と聞いたから?横に立つアオ、怒りが漏れ出ていますよ。
優しいを演じるんですよね?
小声で。
「逃げ出されないよう庭側へ」
庭に出たアオを確認、表情を一遍させ鬼の妖気を解放。
衝撃波
「ズバ~~~ン」
脅しを、いや本音を!序でに鬼火を飛ばした。
「わざわざ足を運んでやったんだ、身の程をわきまえろ!」
突然ブヮ~~~~と燃え上がった和服を慌てて脱ぎ捨て、恐怖から人化が解け狸の姿となった2匹。
「西の妖狸如き、一族ごと根絶やしにしてくれる」
逃げだそうと、庭へ走り出たところをアオに首を掴まれて、妖力を奪われ老いぼれ狸の姿へ。
「人族への特殊詐欺に関わった連中だけと思ったが、この承諾書は必要無いようだ、老いぼれ2匹の自惚れで一族全てが退治、地獄で皆に詫びろ」
アオに首を掴まれて突き出された老いぼれ狸。
手に持っていた、特殊詐欺に携わった狸達への借金を背をわせる承諾書を足元に落とし、代わりに1匹づつ額を左右の手で掴み、ひっかいて暴れるのを気にもせずに爪を立てると。
「イダイデス・イダイ・イダイイダイイダイ」
「イタタッタ・・・」
2匹の悲鳴に、見かねた団三郎殿から。
「酒呑童子殿、そのくらいで勘弁してやってはくれんかの」
手を離して板の間に落とすと、アオに言われるまま目の前に落ちていた承諾書に、爪が食い込み出た額の血を右手に塗って手印を押した2匹。
内容は、団三郎殿からは既にもらっている。
『配下の妖狸が、人族から騙し取った額の倍以上を妖怪基金から借金させて、被害者へ返金を行い、残額は鬼族へ提供する』
「アオちゃん、芝右衛門に太三郎へ、妖力を返してやってはくれんかのう」
「酒呑童子殿に手を煩わせんよう、西の妖狸族をまとめさせるさかい頼むわ」
板の間、アオに向かい手を擦り頭を下げてお願い姿勢の2匹へ。
両手に鬼火を出し妖気を放ち。
アオ、打ち合わせと違いますよ、ここで恩情ですよね!美人で優しいを演じると言ってましたよね!
「誰が筋肉馬鹿ですって!頭脳派って誰!」
芝右衛門殿の言葉でお怒りなのですね。
もう、止められません。
「必要な承諾書は手にしました、他の妖怪族への配慮が出来ない身の程知らずの長など、生かしておくのは百害あって一利なし、焼却してしまいましょう」
団三郎殿も諦めたようで、顔を背けています。
ヨボヨボ2匹は、アオの鬼火を宿した手が目の前に迫ると、泡を吹いて気絶。
アオは鬼火を収めた手で額を掴み、奪った妖力を戻すと、シワは回復。
「このくらいで勘弁して差し上げます」
アオの怖ろしさを知った団三郎殿へ、メモを渡して。
「この2匹、与十郎狸に青井狸の居所を、明日の17時迄にアオの携帯へ知らせるよう、芝右衛門殿と太三郎殿へ伝えて下さい」
「了解や」
「すまんのう、わしの相談で色々と迷惑を掛けて」
「そやけど、アオちゃん、本気にしか思えんかったわ」
事前に、団三郎殿より、芝右衛門殿と太三郎殿が協力的では無く、特殊詐欺推奨派だと聞かされ、今回の芝居?となったのです。
少し?、アオが暴走したのは内緒で、予定通りと装っていまが、本当に思いとどまってくれて良かった。
気絶した2匹を見て、団三郎殿はしみじみ。
「芝右衛門と太三郎の思い、分からんでも」
「人族に、山に森の住みかを荒らされ奪われた怨み、今だに根づようてな」
呼ばれた使用人に抱えられていく、芝右衛門殿と太三郎殿を見送り。
「団三郎殿と同じ考えを持ってもらうのは難しいと思います」
「人族の怖ろしさ!知る者が減りましたから」
「アオでさえ代替わりをしたので、あの陰陽師を知る社員は、茨木童子だけです」
「妖狸は短命とは言うても、種族中で、わしだけやさかい」
千年前に、刀と弓で武装した人族に負けた妖怪族、あの陰陽師が今は居ない変わりに、格段に殺傷力を増した武器を手にした人族と戦ったら、考えたくもない。
「団三郎殿、今回の件は大きな貸しですよ」
「酒呑童子殿、返せる機会が有るなら、何時でも言ってへな、2人への恩情、感謝しとる」
一族の数が増えると大変だなと同情。
人族の怖ろしさで思い出した。
団三郎殿は、マイナンバーが、人では無い者を生活圏から排除するのが目的だと気付いた、数少ない仲間。
他に気が付いているのは、誰かな・・・この件は当面先送り!今は妖狸の特殊詐欺を辞めさせる!
「アオ、事務所へ帰って、明日は朝から山口県へ行きますよ」
お腹が空いたと言われたけど、その服装で行ける所は・・・
スーツに眼鏡着用だったらって、あまり変わらない?
「蕎麦で良いですか」
団三郎殿を誘って、妖狸一族、化け狸の茶釜狸が営む、蕎麦屋文福茶釜へ、あそこなら、アオのエロ和服姿でも。