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第7話 アオの入手情報調査

 朝から、騒がしい。

 猫波に珠代が、早々(はやばや)と引っ越して来たから。


 昨日は、アヤネとシロが入手した、妖狸の特殊詐欺に繋がると思われる情報を調査、結果は空振り。


 残るは、アオと私の情報。

 アヤネ、ハダ、アカ

 今日は20時から副業だと言うので、17時に集合。


 社長室へ最初に入って来たアカの服装が、見た覚えが無いキリッとした装いに理由を聞くと。


「アヤネ姉さま、アオ姉さまが、じゃんけん最弱王に負けることは無い、服装はどうすればと聞いたら~」

「横浜のクラブへ遊びに行くから服装宜しく~、同行はクラブ玉藻で働いている3人」


「それで、この服装にしました~」


 アカ!じゃんけん最弱王って誰のことですか?

 聞くのは、アカでは無くアヤネですね!

 でも、アカも納得したから、その服装にしたのですよね!


 アヤネ、ハダは本当に、外出用の服装。

 アオは当然、スーツでも和服でも無く外出着。

 シロだけは、揺るぎなくスエット。


 皆が定位置に座り、珠代がお茶を入れ、猫波が干し柿を配り終わり暫し堪能。


 食べるのが一番遅いアカが、お茶を飲み干すと、アオが立ち上がった。


「帰り討ちにしてやる!」


「社長、ムキになっても、じゃんけん最弱王の座を頂くわけには参りません」


「絶対に負けない!負けられない!舐めるんじゃね!」


「「最初はグ!」」

「「ジャンケン ポン」」


 繰り出したのはパー。


 アオはチョキをVサインへ変えて、目の前に突き出され。


「社長は、じゃんけん最弱王です」


 目の前に突き出されたアオのVサインの手を、パンと平手で払い、思わず叫んでしまった。


「俺の情報は、絶対なのに~」


 アオは、アカ、ハダにアヤネの3人を伴い。

 普段からクラブ玉藻に勤めるアヤネ達が、出勤時に使っている個人タクシー2台に分乗。

 桜の代紋を掲げる組織の知り合いから聞いた、特殊詐欺をおこなっていると思われる、半グレのリーダーに幹部2人が毎晩訪れる接待を伴う店へ。



 たかが、じゃんけん!

 されど、じゃんけん!

 次回は、次回こそは、勝つぞ!と思っていると。


 珠代がスカートの裾を懸命に押さえて恥じらいでいる。

 先程、お茶に干し柿を皆に出していた時は、じゃんけんの事で頭がいっぱいだったので気が付かなかった。


 猫波と珠代を手招き。


 2人とも、覗かなくても足の付け根まで、さらに、あれまで見えてしまっている姿に。


「そのメイド服は」


 猫波と珠代が見つめ合い、返答を譲り合っているので、質問相手を特定。


「猫波、そのメイド服は?」


 安堵の珠代に対して、冷や汗を流し出した猫波。

 そんなに、言いづらい?


「アカさまから、室内用だと支給されたニャー」


 口止めされている?


「恥ずかしいなら、アカへ言いますよ」


 2人とも平気ですと言い張るのを見て、アカからの強要に脅しを確信。

 1人残り、追加のお茶に干し柿を堪能しているシロへ視線を向けると、懸命に首を振っている。


「珠代の事は、シロにお願いしたはずです」


 口の中、干し柿をお茶で流し込み。


「ゴホゴホ・ゴホ」

「裾丈を10センチ長くするようアカへ伝えます」


 無言で、睨み続ける。


「20センチ」


 目を細めて、睨み続ける。


「40センチ」


 2人へ視線を戻すと、ホットした表情を見て妥協案としては充分。

 決して、じゃんけんに負けたから、シロとアカへ八つ当たりをしたのではありません。


 相談で訪れた方達に、先程の猫波に珠代の姿を見られたら、社長としての立場に、あらぬ疑いを持たれたくないのです!


 ロリとか、嫌がる服装を強要しているとか。




 地方都市のクラブ


「店長、無理です」

「あの席には座れません」


 店のキャスト達は、私達の容姿に遠く及ばず。

 店長さんも、驚いている。


 ボックス席に近づいてこないキャストへ。


「お姉さ~ん、注文取りとして座って~」


 アカが声を掛けたキャストへ、私が行くと告げ。


「ルリです」

「遅くなりました」


 見た感じ、この店で一番のキャスト。


「ルリさ~ん、わたしはアカ、よろしく~」

「ブリオンとディケムをお願~い」


「お持ちします」


 ルリと名乗ったキャストを巻き込み盛り上がっていると、入店してきた3人。

 サクラのオジさまに見せてもらった、半グレのリーダーに幹部2人の顔写真を思い出し。


 此奴らだわ。


 リーダーに押し出されるように前に出た、幹部の1人。


「同席しても良いかな」


 労せず、向こうから接触してきた。

 安易に了承せず。


「ここの支払いをしてくれるなら」


 幹部2人、アカにアヤネさまを見て、酔わせて、いかがわしい行為を想像しているのが、私にでもわかる。


「任せてくれ」


 せめて、飲んでるワインのラベルぐらい見てから返事をした方が良いですよ。

 スポンサーを得て、追加注文をするアカの辞書には、遠慮って言葉は記載されていない。


「ルリさん、追加で同じのをお願いね~」


 リーダーが店長さんと会話中、内容は聞こえないけど、視線がワインのラベルへ注がれているから、銘柄に金額を知らされた?

 案の定、座ろうとする幹部2人の背後へ、肩を掴んで引き留めた。


 肩を掴まれた2人が振り返り、支払い要求に対して、「任せてくれ」と言った右側の幹部。


「どうしたんですか」


「ちょっと待て」


 図星を突いて、逃げられなくする。


「お財布が心配?」

「カードでは、払える額を超えていると思うわ」


 ハダが、追い打ち。


「お店に来る社長さん達は、いつも現金で払ってくれるのに」


「お店って?」


「わたし以外は、銀座のクラブでキャストをしてるのよ」

「お店の名は、玉藻」

「調べて見たら」


 幹部の1人が携帯をいじり、リーダーへ見せながら何かを告げている。


 たぶん、アヤネさま、ハダ、アカの事では無く。 銀座のクラブ玉藻。

 完全会員制で毎年の審査+年会費。


 当然気になる、年会費の額に会員の審査基準。

 ウェブサイトに掲載されている以上の情報を、ネット検索しても一切見つからない。


「ハダ、アカ、アヤネさま、お兄さん達はご馳走してくれないみたいよ!」


「なんだ~、ざ・ん・ね・ん~」

「アヤネ姉さま、飲み足りな~い」

「ご馳走して~」


 見栄を張ったリーダー。


「支払いは平気だ、ただ、注文したワインは品切れって言うから他へ」


「近くには~、私達が口にする物を置いてるお店、他には無いでしょう、ざんね~ん」


「アカさん、シャトーマルゴーでよろしければ」


「ルリさん、宜しく~」


 席に着くも、会話に入れないリーダーに幹部2人を無視して、キャストのルリさんを交え盛り上がる。


「ルリさ~ん、マルゴーを追加~」


 さらに2本飲み、相変わらず酔う素振りを見せない銀座のキャスト3人に、わたしも呆れるも本領を発揮、リーダーに幹部2人へ話題を振って。


 3人の連携に、役立たずが1人って、わたし。

 ルリさんを席から外させ、ハダがリーダーの相手をして、幹部2人から遠ざけ、アカとわたしが隔離するように陣取り、リーダーに聞かれてもいい話は声を高めにして喋り、情報聞き出しのターゲットにした幹部1人とアヤネさまが会話。


「街一番のお店が馴染みって、お仕事は~」

「本職には見えないから~、半グレさんかな~」


 アカに恐れも無く聞かれたターゲットでは無い幹部、リーダーへ視線を送るも、ハダに阻まれて期待の反応が得られず。


 アカは、逃さない。


「銀座のキャスト、口は硬いし、並大抵の事では驚かないよ~」


「色々と商売をだな・・・」


 身を擦り寄らせ、足に手を載せたアヤネさま、耳元で。


「わたし、お金が掛かる女なの、だから気になる人は収入を聞いて置かないと、迷惑を掛けちゃうでしょう」


 アヤネさまの鈴を転がすような声の問いに。


「月の上がり二千を3人で分けている」


「何の上がりかしら」


 聞き出したのは、3人が特殊詐欺の元締めで、かけ子の拠点は県外、受け子は面識の無い、高額債務者を使っている。


 喋った理由

 金井豪翼の手下だったから!

 アヤネさまが、豪翼さんはお店に来るの、個人携帯番号が記載された名刺を見せたら、喋る喋る。


 リーダーの相手をしているハダから、妖狸の匂いがしないぞサインを受け。


 人族の詐欺集団に間違い無いわね、サクラのオジさま情報は残念至極。


 アヤネさまへ、引き上げサインを送る。


「みんな、この人達、私達には相応しくないから帰るわよ」


 アヤネさまからの声掛けで席を立ち上がるのを見たリーダー。

 態度が一変、帰ろうとするので、ただ飲みされるとでも思ったのか、逃がすまいと後を追って来た。

 アヤネさまが店長さんへ、厚い封筒を鞄から3枚出し渡しているのを見て立ち止まっている。


「チップ込みで300」

「ルリさんはチップを受け取れる契約だと聞いたわ、ちゃんと渡してね」


 アヤネさまが支払いを済ませると、半グレのリーダーの元へ。


「屑には、飲み代を払ってもらいたくないのよ」


 固まるリーダーをそのままに、踵を返し出口へ。


 普段の、どこか抜けてるアヤネさまでは無い、本来の姿、かっこいい!

 唖然のリーダー、あんたとアヤネさまでは器量が違うのよ!


 店の外まで、送りに出た店長さんとルリさん。


 アヤネさまは、半グレの3人が出てきていないのを確認して。


「お客を選ぶのも店長の役目だと思うけどね、ツケがあるなら回収を急いだほうが良いわよ、理由は分かってるでしょう」


「警察ですか」


 反応を示さず。

 店長さんの隣で頭を下げているルリさんへ、名刺を渡し。


「勇気をもって席へ来たルリさん、楽しかったわ」

「一度銀座の玉藻に、渡したチップでお客として来てね、私の名刺を出せば入店できるから」


 ルリさんへの誘いを聞いた店長さん。


「ルリと一緒に、お店に伺ったら入店の許可は頂けますか」


「ルリさんの引き抜き対策かしら」


 困る店長を見て微笑んだところに、スリーポインテッド・スターの高級車が2台横付けされ、2人づつ乗り込んだ。


 運転手は社長とシロで、銀座のクラブ玉藻へ、アヤネさま、ハダ、アカを送り届け。


 車内で愚痴る

「あ~、折角のアヤネさまの提案、役立たせられなかった」

「サクラのオジさま、半グレを最初から私に調べさせて、楽しようと思ってましたね」


 携帯を操作して、ショートメールを確認。


『半グレの特殊詐欺、かけ子の拠点、分かった?』

『受け子の手配方法、分かった?』

 

 この件が解決したら、皆に相談して了承が得られたら、手柄をくれてやりますか。

 今後は、色々と隠蔽をしてもらう事が有るでしょうから、騙されたみたいで悔しいですけど、貸しを積み足しです。


----------


 閉店後、店長はルリへ、枚とは数えるには厚い封筒を1つ渡し。


「一度行って見ろ、銀座の玉藻は日本一のクラブだと言われている、もし移籍の話しなら送り出す」


 店長は4人の来店理由が、ルリの引き抜き以外は思い当たらなかったのです。


「それは無いと思います」

「一番年若いアカさんの会話に知識力にも遠く及びませんでした」

「経済誌に経済新聞、全誌に目を通して頭に叩き込むのは、わたしには無理です」


 一安心の店長、ならば、来店理由は何だった?

 警察の回し者?

 特殊詐欺の手口を聞き出していた?

 自問も答えは得られず。


----------


 事務所に戻ったアオは、念のために報告


「社長、人族の詐欺集団でした」


「やっと、私の情報調査ですね、アオ、一緒に団三郎殿の屋敷へ行くの、同行をお願いします」


「仰せのままに」

「着替えて来ますので、少しだけ待って下さい」


 団三郎殿の好み、エロ和服へ着替えるのかな?

 眼鏡を掛けたスーツにして欲しいな!

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