第5話 アヤネの入手情報調査(2)
社長室には、社員一同と、事前にアヤネから呼び出すよう言われていた助っ人が1人。
アヤネは、寿司屋河童から戻って来た時とは違う、見慣れた、両肩に胸元を晒し、裾は短く太股も露わにした和服に着替え、空いてる、上座の1人掛けソファーに。
残念!
着替え前の和服の方が良いのに。
戻りを待つ間に、アオ以外が着替え。
アオはスーツに眼鏡着用のまま。
ハダ、シロ、がアヤネ同様のエロ和服。
アカはゴスロリ服。
エロ和服、声に出して言うと睨まれ、戦闘服だと言い張るアカを除いた社員達。
シロが、部屋着のスエットでは無くエロ和服に着替えている。
アヤネの入手情報が空振りだった場合、次の、じゃんけんに勝ち、自身の入手情報調査に向かう気でいるから?対してアオは勝つ気がないの?
もしや、やらせ、アヤネ、シロ、アオ、勝つ順番を事前に決めている?わたしは論外?深く考えるのは止めて。
シロ、着替えたのを無駄にしてやる、次に勝つのはわたしだ!
下座の1人掛けソファーには、助っ人の電波を感じとれる猫妖怪の猫波さん、人の姿で、アヤネが持ち帰った刺し盛りを、ワサビ無し醤油も付けず綺麗な箸使いで切り身を口に運び。
「美味しいニャン」
「寿司屋河童のお刺身、これでおいくらニャン」
「サービス料を多目に、チップを仲居さんに10万渡したら、河太郎さまが、社長へ宜しくと持たせてくれたのよ」
口に運び込もうとしていた白身を掴んだ箸が止まった猫波さん、ゆっくりと此方を見て、食べちゃったよ目線。
河童の大将から、鬼の大将への品を、一介の猫妖怪が食べてしまったのだから固まりますよね。
聞かなければ良かったのに、アヤネも余計なこと言うから可哀想に。
「しっかり働いてください」
「ま・まか・任せてニャン」
猫妖怪の猫波さんにお願いしたのは、携帯通話の電波をたどらせ、着信場所を特定させるのです。
アヤネがメモを2枚。
1枚を振り返り執務机に、もう1枚を皆の前に置き。
「特殊詐欺のマニュアル・シナリオを書く小説家の情報よ」
「肩書きは小説家」
「狢川 騙」
「筆名としても、ふざけた名前」
「電話番号は、090XXXXXXXX」
「この住所に居るとは思えないわね」
「猫波、食べてないで働いて」
アヤネは、頷く猫波さんを見て携帯を操作。
身を乗り出し、机の上に携帯を置き。
スピーカーモードから聞こえるのは。
「プルルル・プルルル・プルルル・プルルル」
「誰?」
「イバラキと申します、イグチさんですか」
「違うよ」
「あれ、090XXXXXXXXではないですか?」
「有ってるね」
「すみません、嘘を教えられたみたいです」
「他からもイグチって宛てで電話が行ったら、この着信に連絡もらえませんか」
「分かった、そのイグチってなんかしたの」
猫妖怪の猫波さんが両手で丸!
「知らない方が、では」
アヤネが携帯を机から取り。
「切ったから喋って平気よ」
「着信先は、近くだニャー」
「猫波、案内よろしく」
「ハダ・アカ行くわよ」
アヤネ、ハダ、アカが立ち上がり、猫妖怪の猫波さんは人化を解き、着ていた服諸々をソファーに残し、アヤネが両手を広げたので胸元へジャンプ。
抱き留めると右手で首を掴み、左手で衿を広げ胸の谷間へ。
猫波さんのジャンプ力にも驚きましたが、衿を広げる行為に、もしや見えてしまうのではの心配は不用に終わるも、以前からの疑問の1つ、衿がずり落ちて胸が露わにならないの?が更に!猫が衿にぶら下がって何故に落ちない、突出した双丘に引っかかっているから?
掃き出し窓をアカが開け、ベランダへ出た、アヤネ、ハダ、アカが姿を消した。
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別荘地の一軒家
正面玄関には、胸の谷間に猫波を押し込んだアヤネ、裏にハダ、屋根にアカ。
「あら、ここは名刺の住所だわ」
不用心な奴と呆れたアヤネは、抑えている鬼としての妖気を解放すると、玄関のドアが風も無いのにガタガタと振動。
裏から逃げ出してきた獣を、ハダが捕らえ。
「ハイ、確保!」
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事務所の社長室に戻った、ハダの右手には首を掴まれた一匹の狸。
「アヤネ、家とか壊してないですよね」
「心配無く、ガラス一枚割ってないわ」
自慢げな態度を見て、普通だと思う居残り組。
アヤネ、ハダは立ったまま、アカが席に座り、猫波さんはアヤネの胸の谷間から飛び降りて、下座の1人掛けソファーへ。
「見ては駄目です!」
アオの叫びで、アヤネがポロリかと思ったら、猫波さん・・・
椅子を回転させて、人の姿になった猫波さんに背を向け、部屋を出て行く気配にバタンと扉が閉まる音を聞き椅子を戻すと、ソファーに残されていた服諸々と共に、アオと猫波さんの姿が無くなっていた。
アヤネにハダが、アオに猫波さんが戻るのを待つ間、立っているのもと思ったのかソファーに座り。
右手に持ったままの狸をブラブラさせ、対面のアカが背中を突いて楽しんでいる?
アオと、服を着た猫波さんが戻り。
「これからは気を付けますニャー」
謝り、頭も摩りながら、お刺身の残りに箸を。
アオから拳骨を頂いた様子。
アヤネにハダが立ち上がり。
結界が張られた社長室、アヤネは妖気を解放、室内の空気が静電気を帯びたようにチリチリ。
猫波さんは驚き、口へ運び込む途中の刺身を落とし猫耳を出す始末。
「ムジナカワ ダマス、本名に特殊詐欺のマニュアル・シナリオ、提供先と販売額に、今まで手にした総額を話してね」
「喋るので離してくれませんか」
ハダは、尻尾を抱え込んだ狸をブラブラされて。
「全部、話したらね」
ムジナカワ ダマス、妖狸名は、与太狸。
人族に紛れて生活している時の名は、狢川与太。
人族5人に、月50万で特殊詐欺電話マニュアル・対応シナリオを販売、手にしたのは累計で4,000万弱。
同族の妖狸とは関わりが無いと聞き、ハダが手を離し床にドンと落ちたヨタ、尻を擦りながら。
「人族が同族を騙す手伝いをして金がもらえるんです、解放してくれれば、鬼族さんに半分渡します」
「やめる気は無いのですか」
優しく聞いてあげたら。
「やめる、なぜですか」
「今の生活、やめられません」
そうですかと頷いてあげたら。
「団三郎の老いぼれから、人族への実害を与えた者はって通達が来ましたけど、考えが古くさくて、ふざけるなです」
「怖がらす脅かすだけで満足して、人族の食べ残しを食って喜んでいる連中は阿呆です」
「騙して奪う快感に、贅沢生活は手放せない」
「美味い物は食えるし、金をちらつかすと馬鹿な人族の女は寄ってきて、抱くことも出来るんですよ」
「お金は大事だよね~」
「わたしも大好き~」
アカの言葉を聞き、美少女の鬼族とも仲良く出来れば、今以上の贅沢な生活とでも思ったのか?下品な微笑みのヨタ。
「協力してくれませんか」
「人族、オイラが書いた電話マニュアル・対応シナリオを横流ししてるんです」
「それを止めさせて直接売れば、今の倍、いや、4倍には成るはず」
ヨタは、下品な微笑みに卑猥な表情を足し。
「オイラの金玉を見て、狸と違って人族の女は常に盛りが付くので最高です」
アカが、肝心は部分が筒状に丸められた和紙をヨタの前に出し。
「やめられないか~」
「しょうがないね~、ここに署名に捺印をと言いたいけど、その姿では字は掛けそうに無いから手印で良いわ~」
アカのゴスロリ姿に血迷ったのか、出された朱肉のインクを右手に付けて、和紙の指定場所へ「グリグリ」するのを見て、借金額は倍かな、頑張って働いて下さい。
手印を押した和紙を広げ。
「ヨタ~、頑張って働いてね~、現金が有るなら少しでも精算したほうが良いわよ~」
妖怪基金発行の借用書
光り出したので、契約成立。
『人族に対する詐欺全般に関する事で手にした金額の4倍を、妖怪基金から借り受け、被害者へ自ら遅滞なく返却へ赴き、残額は、なんでも相談聴きます屋へ提供する。』
『今後、同じような行為をした場合、自動的に4倍額が妖怪基金からの借入に加算され、なんでも相談聴きます屋へ支払われ、相応の罰を受ける』
内容を理解した様子。
「酷い!詐欺だ」
妖怪基金からの借入は利子が付き、自己破産は認められないだけでは無く、逃げる事が絶対出来ない、返すあてが無い場合は強制労働が待っている。
アヤネ、自身が提案したにも関わらず、王さまゲームの権利取得の夢が破れ、右手に怒りを込めた鬼火を出し。
「オイ、ヨタ、もう一度言って見ろ」
「団三郎さまから退治の許可を頂いている、焼き焦がして食ってやってもいいんだぞ」
食うのは止めましょう!
先程は、団三郎殿を老いぼれ呼びをしていたヨタ。
「大将から、退治の許可が・・・」
「焼き焦が・・・」
再度、ハダに首を掴まれ。
「自業自得ね、頑張って働いてね」
「此が自慢の金玉?握り潰しておきましょう」
「グギャ~~~~」
悲鳴を聞いて、自分のが縮みあがるのを実感、余計な事を言うからと少しだけ同情。
ベランダへ出ると、大きく振りかぶって涙を流している狸を。
「今度は、な・なな・何をするきですか」
「どりゃ~」
投げた。
「ヒエエエェェェェ~~~~」
「外れでした」
項垂れるアヤネは、逆恨みを開始。
「自慢話を散々聞いてやったのに、ヨタから電話マニュアル・対応シナリオを買った連中、まとめて恐怖の世界へ叩き落としてやる」
怒りのオーラを発しだしたアヤネに、猫波さんは、ここまで素知らぬ顔で食べていた刺身を、またも落として、猫耳に尻尾まで出す始末。
尻尾でスカートが捲れてますよ、こちら側からは覗けないから残念なんて思って無いですよ、それよりも。
アヤネの宣言!
お願いだから死者は出さないでね、妖怪油取りさん・粗骨さんを呼んだら駄目ですよ。
「アヤネ姉さまが、ヨタの被害者への返金分を直接詐欺行為を行った人族連中に課してくれれば、妖怪基金から借入させた全額が振り込まれる~」
ニコニコ顔のアカから渡された、妖怪基金借用書を見たら借金額は4倍!
あれを握りつぶされて、4倍の借金。
ちょっと罰が重すぎではと思う社員は、誰1人として居ないようです。
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狢川与太
妖怪基金からの借入を返す宛ては無く、仕事として斡旋されたのは高濃度放射能汚染場所での作業。
1日に2人に化け16時間勤める日々。
一定期間しか従事出来ない仕事、契約満了後は違う人へ化けて新たに契約。
「俺、放射能は平気なのかな?」
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