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第4話 アヤネの入手情報調査(1)

 予定通りに社長室に集合。


 執務机から見て、右側の2人掛けソファーには、スーツに眼鏡着用のアオとTシャツにデニムのハダ。左側の2人掛けソファーには、スエットのシロとメイド服のアカ。上座の1人掛けソファーには見慣れない和服姿のアヤネ。


 アヤネ、普段からその装いにして下さい!



 妖狸の特殊詐欺に繋がると思われる、個別に入手した情報。


 アヤネ、アオ、シロ

 誰の情報から調査を行うのか。

 社長が入手した件からなどと殊勝な事を言う者は誰一人としておらず。


「じゃんけんで良いですよね」


 アヤネの提案に押し切られ、参加者が立ち上がり。


「「「「最初はグ!」」」」

「「「「ジャンケン ポン」」」」

「ヨッシャ~~~~」


 チョキの手を高々と挙げたアヤネ。

 通称名がもう一つあった、ジャンケン最強王。


 一枚の名刺を取り出して、携帯を操作。


「お仕事中ごめんなさい、クラブ玉藻のアヤネです」


「急でごめんなさい、今夜なんですけど、お時間あれば、お食事、ご一緒出来ればと思って電話しました」


「同伴?玉藻には同伴制度は有りませんよ」

「今日は、お仕事が休みなので、お時間あれば、普通にご飯でもと」


「本当ですか、嬉しいです」

「お店、銀座の寿司屋河童で、18時にお待ちしていますね」


 名刺に携帯を仕舞い。


「社長、20時には戻りますので、猫波を呼んどいて下さい」


 出かけて行ったので、アオへ猫波さんの呼び出しをお願い。

 アカが、干し柿にお茶を出してくれたので、堪能しながら戻りを待つ事に。


「干し柿、まだまだ残ってますけど~、隠れて食べては駄目ですよ~」


「アカ、今、居ない人に言わないと」


 隣に座るシロから指摘。


「今、居ない人は、言っても意味無いで~す」


 頷く、待ち人達。


----------


 金井豪翼、IT関連会社社長


 個室では無く衝立(ついたて)に毛が生えた程度で仕切られた社長室、大声はダダ漏れ。


 隔絶はされているので、社員達の目を気にすることは無いので、足を机に乗せて表事業の決算推定を眺め。


 また赤字!

 やめちまいたいが、肩書きに隠れ蓑は大事だからな、また、裏仕事で得た資金を、架空会社名で振り込みをして回避。


 ある人物から勧められて冗談半分で始めた裏事業、急激に利益を増やして表事業の赤字を補うだけでは無く、従業員50人に満たないIT関連会社の社長には、分不相応な衣食住をもたらしてくれている。


「ブルブル・ブルブル・ブルブル」


 机の上に投げ出してある携帯は3台。

 個人携帯、表事業用、裏事業用


 裏事業用携帯に登録されている番号は、男の欲望を解消する為に金を与えている女達と、裏事業関係者のみで、登録番号以外は着信拒否。


 足を降ろして、手にしていた決算推定報告書を手放し、代わりに手にした携帯は裏事業用。


 液晶を見ると、裏事業関係者の名前。


 携帯を耳にあて、一方的に喋られる週一の手口別成果を聞き終わったので、かけ子に受け子補充のため、新たに入手した高額債務者情報。


「共有フォルダーに保存した」


 メール添付など、絶対にしない。

 誤送信の怖れはゼロには出来ない、何より、情報交換の痕跡を残すのは尻尾が逮捕された場合、頭へ繋がる手掛かりを残すようなもの。


 手にしている携帯の契約者も知らない誰かで、GPS機能はOFF。


 今回入手した高額債務者情報には、借金理由が記載されている。

 ギャンブルとなっている者に、成果報酬で300万の借金を2・3ヶ月で返済して、その後も楽しい生活をしている者が何人もいると誘えば、喜んで、かけ子・受け子として働く。


 裏事業を拡大、拠点としてタイのリゾート物件を購入予定。


 年寄りが無駄に貯め込んだ50兆とも言われる箪笥預金、国は紙幣変更を餌に使わす気らしいが甘いわ、代わって回収して景気対策として使ってやるんだ感謝しろ!


 かけ子の拠点に掲げられているのは。

『年寄りが無駄に貯め込んだ金を、国に代わって回収して、私達が使ってあげましょう』


 自己陶酔を邪魔したのは。


「ブルブル・ブルブル・ブルブル」


 再びの携帯着信。


 名刺は2種類を使い分け。

 違うのは携帯番号、表事業用携帯番号が記載の物と個人携帯番号が記載の物。

 男として下心ある女性相手には、個人携帯の番号を記載した名刺を渡している。


 手にした個人携帯。

 液晶を見ると記憶に無い番号。

 昨日の晩に渡した相手からと期待して。


「カネイです」


「お仕事中ごめんなさい、クラブ玉藻のアヤネです」


 期待の相手!

 同伴の誘いかと尋ねると、クラブ玉藻には同伴制度が無いので普通にご飯でも、それも、今日は仕事は休みなので、お時間あればと言われたので、指定された寿司屋へ。


 普段はカード払い、現金は少額しか持たない。

 念のため、経理担当から小口現金として保管されていた20万を、接待費だと言って無理強いした。



 暖簾すら出さない、一見さんお断りで知られる。

 寿司屋 河童


 指定された店、勇気を出して入ると、名も聞かれず仲居に一番奥から2つ目のカウンター席へ。


 初来店者への注意事項だと渡された冊子を、一読後に返すと、店の奥から現れ隣に座った和服姿の女性。

 女将かと思ったらクラブ玉藻のアヤネさん、先日の体型がわかるドレスとは違った姿に魅了されていると。


 昨晩も聞いた鈴を転がすような声で。


「親方、握ってもらう前に、お刺身の盛り合わせ」


 横に立った仲居が、目の前に広げたメニューは、日本酒のページ。


 俺には、わからないと思ったら。


「今日のお刺身に合うのを、お任せするは」


----------


 お刺身を摘まみながら、目的の為に我慢して聞いている話。


 クレジットカードはステータス重視で外資系でブラック。

 左手の袖を捲り高級時計を見せて、これで高級車が買える。

 女にはマンションを与えている。


 その自慢話が、悪人宣言だと気付きもしないとは、それだけの収入が有って、クラブ玉藻に入れない、この河童にも入れない、人族より、妖怪族の審査は厳しいのよと言ってやりたい。


 もう我慢出来ない!


「社長さん凄いんですね、そろそろ、わたしにも興味が持てるお話しをして頂けると、嬉しいのですけど」


----------


 しまった!

 話題を選ぶも、聞かれる一方に話しのネタが無くなり、特殊詐欺のマニュアル・シナリオを書く小説家の話題。


「知り合いから名刺をもらったんだ」


「本当ですか、私の興味を引くために嘘言ってません」


「酷いね、アヤネさん」


 俺は、特殊詐欺に関わって無いけどねと前置きしてから、携帯を操作して名刺管理アプリを、ちらっと見せ。


「知りたい?」


「もう充分です、話しのネタが尽きたようですから、握ってもらって」

「お腹いっぱい、食べても良いですか」


 もったいぶっていたのが悪かった?機嫌を損ねた?もう話すネタが無い。


 和服だと分かりづらい体型、昨晩見たドレス姿の細いウエスト、大して食べられないだろうと。


「遠慮なくどうぞ」


 アヤネさんはカウンター越しで目の前に来た親方へ。


「いつもの3貫をお願い」


 大トロ、煮ハマ、イセエビが3巡。

 ハマグリの大きさ、生きたイセエビには驚いた。


「ん~、美味しい、赤貝をお願い」


 〆の赤貝かと思ったら。


 5巡目で、イセエビが無くなり車エビへ変更。


 10巡で、煮ハマが特盛りウニ軍艦へ変更。


 20巡、合間合間の別ネタを含めると、既に70貫以上。

 支払いは現金だけだと冊子に書かれていたのを思い出し、財布が・・・


「アヤネさん、そろそろ」


「ん~、美味しい、お吸い物をお願い」


 イセエビの頭が入った物が出てきた。


 30巡、支払いを頭で計算。

 刺盛り+酒×5本+握り100貫以上×2000

 絶対財布に入っている現金より・・・

 嫌な汗で脇がびっしょり、手汗も・・・


 食べ続けるアヤネさんに親方から。


「同伴の方がお困りです」


「話しのネタは尽きたけど、お寿司のネヤは、まだまだ有るでしょう」


「他のお客さまの分が無くなりますので」


「そうね、親方、ご馳走さま」

「いくらに成ったかしら」


 仲居から手渡されたメモ。


『お支払い 283,000円』


 冊子に、支払いは別途の消費税に、サービス料が必要だと書かれていた。

 サービス料は支払い額の10%以上。


 足りない払えない!

 来店客は、きっと上流階級ばかり恥をかきたく無い。


 アヤネさんを見ると、鞄からだした封筒4枚を仲居へ渡している。


「ご馳走さま、足りるかしら」


 封筒を覗いた仲居。


「親方、40頂きました」


 冊子には、釣り銭の用意は無いと書かれていた。

 回りの、来店客も驚いている。


 親方より


「ありがとう御座います」


「社長さん、次があったらご馳走してね」


 仲居の手に封筒を更に1枚握らせている。

 別途にチップ?


「美味しかったは」


 店の奥へ向かう後ろ姿のアヤネさんに左手を振られ。


「次と言ってけど、無いわね」


 なぜ、店の奥?


「お帰りだ」


 追い出された!

 店を出ると仲居より。


「本日は、アヤネさまの同伴者として入店を許可致しましたが、申し訳ありません」

「次回以降、お断りいたします」



 住まいを与えている経理で20万を無理強いした女の元へ。


 20万を渡し。


「うまく処理しろ」


 怒りから乱暴に性欲を発散するも、鬱憤は晴らせず。


「クソー! たかが銀座のホステスが!」


 ベットで携帯を操作して名刺管理アプリを起動、知り合いからもらったと話した、特殊詐欺のマニュアル・シナリオ提供者情報を表示させて。


「誰からもらったんだっけか」

「裏事業を勧めてくれたのって誰だっけか」


 思い出せない。

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