第1話 相談者は妖狸の大将
なんでも相談聴きます屋
社訓
相談事は何でもお聞きします。
種族に関係なくお聞きします。
都合の悪い事は聞くだけです。
お金にならない事も聞くだけです。
社員は5人
その1人が、秘書の熊木碧。
相談対応をしていない期間は、毎日、来訪予定者の情報を知らされます。
今日も、スケジュール帳を左手に持ち、右手でページを捲り。
「本日は10時に、古狸団三郎さまが来社予定です」
衿の位置が首元では無く、両肩の肩胛骨を超えて上乳、胸の谷間を晒し、裾が異常に短い和服姿。
同様の装いで大暴れをする大半の社員達、以前から疑問に思うも聞けずにいるのが!
長い袖は邪魔にならないの?
衿がずり落ちて胸が露わにならないの?
裾が捲れて何かが見えちゃったりしないの?
「アオ、スーツに着替えて下さい」
着替えの要求に対して、右手の人差し指と親指を使い。
左胸元まで下げられている左衿。
右胸元まで下げられている右衿。
しゃがまなくても手が届く左裾先。
順に摘まんで目線を送り、何かを確認?
見えてはいけない物、ギリ隠れていますよ。
最後に右裾先を摘まみ上げ、太股を露わにしたままで。
「社長、これでは駄目なのですか」
知的な容貌のアオに期待する服装に仕草は、エロ和服にチラ見せでは無く、スーツ姿で眼鏡を掛け、片手でズレを直す仕草。
「本日の来訪者が、心臓麻痺を起こしては困りますから」
団三郎殿のせいにするも、眼鏡の着用に、片手でズレを直す仕草の要求までは・・・。
真に受けた!
左手に持っていたスケジュール帳を右脇に挟み、空いた両手を頬に当て、目を細めニンマリ顔。
「それって、わたくしが男性を興奮させる容姿って事ですね」
身をクネらせる仕草を見て、知的な容貌が台無しだと冷たい目で見てしまい。
「社長、そんな目で見ないで下さい」
「着替えておきますが、団三郎さまに望まれたら、この装いに戻しますよ」
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住居兼事務所の玄関からでは無く、結界を張り物理的に鍵も掛かっている掃き出し窓を開け、ベランダからアオが1人で居る社長室へ入って来たのは、和服姿で種族特有の太鼓腹。
なんでも相談聴きます屋
本日の相談者
妖狸で東日本地域の一族を治める大将 団三郎狸
人としての名は 古狸団三郎。
「邪魔するよ熊童子、久しいのう」
「ヒャ~~~」
「団三郎さま、脅かさないで下さい!」
「それと、わたくしは、クマキアオと申します」
「すまんの~、脅かすの、そして、怖がらすの・化かすのが、わしら妖狸の生き甲斐やさかい」
「それよか、熊童子の青鬼がクマキアオ、まんまでは無いか!ネーミングセンスが無いのう」
「京都の大江山に住んどった、鬼の大将、酒呑童子殿からして捻りが無い、大江山酒呑やさかい、しょうがないやな」
「団三郎狸さまが古狸団三郎では、わたくしと社長のことを言えないと思います」
「確かに、同類ってことやな!ガハハハ」
「頬を膨らせて拗ねるアオちゃん、可愛いいんやけど」
「そのスーツ姿は、酒呑童子殿の趣味かいな?」
馬鹿笑いから、真面目顔になって何かと思ったら、この姿が社長の好み?
「わたくしに聞かれても・・・」
「そやか」
「前に会った時の、はだけた和服姿だと、胸の谷間に足が見られて・・・」
「目の保養をさせて欲しかったわ」
でしょでしょ!
社長、やっぱりですよ~
先程の装いに戻しますからね~
「そんで、酒呑童子殿は」
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「ガチャ」
社長室の扉を開けて、セクハラ狸の元へ。
「団三郎殿、お待たせしました」
「セクハラ発言は、それ位にして下さい」
「アオ、お茶を頼みます」
「なんや、聞いとったんかい」
「酒呑童子殿は食べんかな?、干し柿、アカちゃんが前に、好物やと言っとたさかい持って来たわ、自家製やで!」
団三郎殿から、差し出された手提げ袋を受け取って。
「ありがとう御座います」
「アカだけで無く女性陣は大好物なので、皆でいただかせてもらいます」
言葉だけで無く、手提げ袋を両手で胸に抱きしめ嬉しいを表現しながら、お茶の用意の為に一旦退出していく、最強オヤジに爺キラーのアカを彷彿させる行為を見たら。
団三郎殿、持参した甲斐があったと思うに違いない、案の定、笑みがこぼれている。
商談用ソファー、机を挟み対面に座り、女性の好み話をしてお茶を待っていると。
「入ります」
お盆を手に、社長室へ入ってきた姿に思わず。
「着替えるの早!」
団三郎殿の期待に応えた和服姿、前屈みになって胸元を晒しながら、お茶と小皿に載せた羊羹を出し「ごゆっくり」と言って出て行く間際には、短い裾を持ち上げ太股の付け根間際まで露わに。
過剰サービスに呆れるも、団三郎殿は、お茶を出される時は胸元を覗き込み、退出時には太股を食い入るように見て、退出後は名残惜しそうに目を瞑り、鼻から大きくアオが部屋に残していった物を吸い込み、注がれたお茶では無く。
「アオちゃんは、ええ匂いだの~」
悦に浸っているのを見て、此方にも呆れましたが、アオが望みを叶えてあげたので本題に。
「団三郎殿が自らとは、何かあったのですか」
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相談内容を聞き終わり。
「社員と相談後、お引き受けするかご連絡します」
「妖狸の大将呼びされとるのに、同族の問題を、鬼族の大将へ頼むのは心苦しいやけど」
「わしは、争い事が得意では無いさかい、良い返事を待っとるよ」
冷め切ったお茶をグイッと飲み干し、立ち上がると。
「アオちゃんに、目の保養ありがとうさんと伝へてな。あと、愛しのアカちゃんにも、この件が解決したらお店に伺うと言っといて」
扉を開けて、帰りは玄関からお帰り下さいとの思いは叶わず、団三郎殿はベランダへ出ると。
「よろしゅうな」
姿が消えるのを見送って。
よろしゅうなって、アオに?アカに?相談事のどれですか?
目の前を、木の葉が一枚、ヒラヒラと舞い落ち。
拾って見ると『全部だよ』
団三郎殿には戸締まりに結界が、全く効果なし。
念のため、出て行った掃き出し窓に手を掛け引いてみるも、「ガチ」開かない!「ガチ・ガチ」鍵が掛かっている!なぜ出て行けるの?
貸しを作っておいて、セキュリティーが厳重な建物への侵入や、結界を張った相手に、気付かれずに入り込む手伝いを条件にすれば、報酬提示が無い今回の相談事、引き受けても良いと思うも、アカの説得方法に悩んでいると。
「ガチャリ」
社長室の扉が開き、ノックもせずに、ぞろぞろと入って来たのは。
鬼族名は茨木童子で通称名は無し、同僚からはアヤネと呼ばれている。
タンクトップにショートパンツ姿、実働部隊長の茨木綾音。
鬼族名は熊童子で通称名は青鬼、同僚からはアオと呼ばれている。
スーツ姿に戻った秘書の熊木碧。
鬼族名は虎熊童子で通称名は白鬼、同僚からはシロと呼ばれている。
起きてから着替えていないと思われるスエット姿、情報収集に分析担当の虎重白利。
鬼族名は星熊童子で通称名は肌鬼、同僚からはハダと呼ばれている。
Tシャツにデニム姿、実働部隊員の星崎肌。
鬼族名は金童子で通称名は赤鬼、同僚からはアカと呼ばれている。
メイド服姿、実働部隊員の金本茜。
秘書のアオに関する容貌は少しばかり明かしましたが、女性陣から、年齢に容姿は開示をするなと言われているので、ご理解を頂きたい。
決して説明が面倒だからでは無いので、今後、明らかになるかと。
そして、社長の私、大江山酒呑。
鬼族名は酒呑童子で通称名は無い、社員からは社長と。
人族の年表で、奈良時代・西暦725年生まれ、個人的にさま呼びをしている多くの祭神さま達より長命で、体型は細身で長身、容貌は気弱な青年風。
容姿に関しては、長年の付き合いで今回の相談者、団三郎殿からは詐欺だと言われている。
今の服装は、ネクタイ着用のスーツ姿。
執務机に座り、左後方にはアオが立ち、商談用2人掛けソファー、向かって右側にアヤネとハダ、左側にシロとアカが座ったので、今回の相談内容を説明。
「妖狸族の一部が、人族を化かす脅かす怖がらすだけでは飽き足らず、奪うまで行い実害を与えている」
「奪う行為の内容は、人族の高齢者を対象とした特殊詐欺、いわゆる、振り込め詐欺・オレオレ詐欺」
「団三郎殿から」
「犯罪者として人族に捕まることにでも成れば、妖怪の存在が公となり、他の妖怪族に迷惑を掛け兼ねないので辞めさるてほしい」
「辞めない場合、東日本地域であれば退治しても構わない」
「難題は、多数存在する人族の特殊詐欺組織と区別して、かけ子の拠点を探し出すこと」
ざっくりとした説明で、社員へ相談事を引き受けるか補足を付けて採決。
「相談者の団三郎殿からは報酬提示は有りません、引き受けてもよいですか?」
お金に一番の執着心を持ち、社訓に『お金にならない事も聞くだけです。』を追加した張本人。
今回の相談事を引き受けるには、説得が必要だと思っていたアカが悩む素振りも見せず。
「断る理由はありませ~ん」
アカが断る理由が無いって、絶対に悪い事を考えている。
「団三郎さまから~退治のお許しがもらえているなら~、悪い妖狸に、妖怪基金から騙し取った返金分と、相談対応報酬分を借金させる~」
ほくそ笑むアカ、他の社員も頷き賛同。
アカ以外、強者との戦いと同じく、弱い者の虐めも大好き。
普段は禁止している行為が許されるとなれば、断る選択肢は無いのです。
アカの発言に不安を感じるも、全員の賛同を得たので引き受ける事を前提に、今回の難題、特殊詐欺を行っている妖狸を見つけ出し、かけ子の拠点を特定する事を、情報収集に分析担当のシロだけで無く全員でと提案。
不服の申し出が無いので。
「では、明日の17時に再度集まり、調べた内容を持ち寄って、誰のから取り組むかを相談をしましょう」
「はい・はいはい・は~い」
アヤネが右手を挙げ。
発言の許可を出してもいないのに立ち上がり!
「妖狸連中に繋がる情報を掴んだ者が、皆へお願いが出来るってのはどうですか」
「やりがいが倍増するでしょう!」
シロ、ハダ、アカが互いに見合ってから立ち上がり。
「「「王さまゲーム、賛成です」」」
アヤネが右手を突き出し親指を立て。
「王さまの命令は」
後ろに居たはずのアオまでが、皆の方へ移動していて、揃って右手を突き出し親指を立て。
「「「「「ゼッ・タ~~~~イ」」」」」
社長である私の意見は聞かれず、解散の合図を出してもいないのに、アカが部屋を出る為に扉を開くと、アヤネ、シロ、ハダと出て行くので。
「おまえら、アヤネの提案に私は賛同してないぞ」
最後に出て行くアカが振り返って。
「社長~、団三郎さまへ、調査を開始すると伝えておきますね~」
「アカ、何を企んでいる」
誰からも返事が無く扉が閉まり、部屋に残っていたアオから。
「もう、遅いです」
「アカは、相談対応の報酬分を、妖怪基金からの被害者返却金借入に上乗せする許可を、団三郎さまへお許しを得に行くのでしょう」
「アヤネさまの提案、無理難題を言われるのが嫌でしたら、社長自ら情報の収集に勤しんで下さい」
身の危険、鬼の大将として数少ない恐怖、それは社員から要求される夜の奉仕。
目の前に居るアオ。
「前は、何時だったかしら」
両手を後ろに回し、親指で腰より少し高い背骨脇をグリグリ、自身をマッサージしていたのが、突然、服装を確認して姿勢を正し。
「社長は、このスーツ姿の方が和服姿より好みなのですか」
突然何を言い出すの・・・
思わず、視線を外して誤魔化し。
知的容姿のアオは、エロ和服よりスーツは正解ですが、足りてません。
眼鏡を掛けて、片手でクイっとズレを直す仕草です。
露出度、見せれば良いと思ったら大間違いです。
念のため
アオの、「前は、何時だったかしら」発言。
何を想像されました?
マッサージですよ!
筋肉質で体脂肪が部分的に偏った、硬い・硬い・もの凄く硬い身体、背中から腰にかけては鋼のようで指が痛いんです。
そして、苦しめられるのが、漏れ出す魅了の体臭と呻き声。
「ウッ・ウ~~・ソコ・ソコソコ、ソコデ~ス」
男にとっては地獄です!
それも、寝付くまで。
寝ないんですよ、明るくなるまで・・・
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アカはゴスロリ衣装に着替えて団三郎邸へ。
事前の訪問連絡が出来ず、留守です、忙しいですと言われるのを覚悟も、使用人さんに招き入れられ、通された和室には、団三郎さま!
部屋へ招き入れられて、正座で対面。
「団三郎さま~、社長より、頂いたご相談は調査を開始すると、お伝えするよう言いつかって参りました~」
幼さを多大に残した容貌に反して、シースルーシャツで透けて見える実った双丘の谷間と、捲れた裾から覗ける太股へ交互に視線を送り。
「感謝せんといかんの」
捲れた裾を持ち上げ、太股の奥をちらつかせ。
「感謝は、相談を前向きにですか~、それとも、この服装ですか~」
「アカちゃん、両方だよ」
「そうですか、悦んで頂けたなら幸いで~す」
前屈みになり、太股の奥に続き胸元も覗かせながら、出されていた湯呑みを取り、口にしてから。
「確認しておきたいのは~、悪い子には、騙し取った額の倍以上を妖怪基金から借金させて、被害者へ返金を行わせ、残額は今回の相談解決に対する報酬としても良いですか~」
視線を太股の奥から胸元に送った後。
「東は問題無いが、西は芝右衛門と太三郎から許可を取るさかい、少し待ってもらえるかの」
「西の件は社長へ口頭で伝えます~」
「東に関しては書面でお願いしま~す」
「次にお伺いする時は、事前に連絡を致したいので、携帯番号教えて下さいますか~」
携帯番号を交換。
この部屋に案内されて来たら、既に団三郎さまが座られていた理由を尋ねると、進入結界に触れたからだと言われ。
「アカちゃんは、もう少し結界に敏感にならんといかん!」
「今度、特訓したる」
「是非に!」
玄関まで送りに出てくれた団三郎さまへ、干し柿ご馳走様~と言ってお別れ。
受け取った書面を手に妖怪基金へ寄り、借用書の原文作成を依頼。
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翌日、妖怪小荷物運送の烏天狗さん
妖怪小荷物運送の凄い所は、引き取り依頼から配達まで、一般便でも1時間とかからない、超急便だと、更に半分に短縮される。
唯一の難点は、名の通りで小荷物限定で、最大30キロ程度まで。
届けられたのは、妖怪基金から借受人蘭が空白で、契約内容が微妙に違う借用書。
借用書の内容
『人族に対する詐欺全般に関する事で手にした金額の(倍)を、妖怪基金から借り受け、被害者へ自ら遅滞なく返却へ赴き、残額は、なんでも相談聴きます屋へ提供する。』
『今後、同じような行為をした場合、自動的に(倍)額が妖怪基金からの借入に加算され、なんでも相談聴きます屋へ支払われ、相応の罰を受ける』
()内が、倍・4倍・6倍・8倍・10倍と違う借用書。
アカ、流石ですが・・・
最低が倍額?返却分との差額は懲らしめ分だとしても4倍以上は使わないでしょう?
返却後の残額提供先が、なぜ?なんでも相談聴きます屋
「全額を被害者救済に当てるんですよね!」
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アカが受け取って帰ったのは、書面に携帯番号だけでは無く、アオちゃんへ渡してと頼まれた、『和服姿のお礼』と記された封書。
「アオ姉さま、団三郎さまから~」
わざわざの封書、アオは1人になってから開封。
メモに記載されていたのは。
『酒呑童子殿、アオちゃんに求めてるんは、スーツ着用で眼鏡を掛けた知的な容姿やと言っとた。』
『妖艶アピールは程々に、スカート丈は短すぎず膝上、ブラは上着を脱いだ時にシャツから透ける濃い色がお薦めや。』
『追伸、右手で眼鏡をクイクイとズレを直す仕草を忘れんといて。』
早速、スーツ姿で眼鏡屋へ向かうアオ。
「団三郎さま、ありがとう御座います」
「眼鏡の発想は、ありませんでした!」
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