僕と文学少女~メモリーオブブックラブ~
彼女と出会ったのはある日の下校途中、道で3人の本ヤンキーに絡まれていた時のことだった。
「ポテチを触った手でページめくっちゃお~かな~~~」
「このミステリーの犯人、読む前に発表しちゃいまぁ~~~す」
「本の帯とっちゃお~~~とっ!」
「う、う~やめてくれぇ・・・」
僕のメンタルがズタズタにされそうになったその時―。
「ぐっはぁ・・・」
本ヤンキーの一人が倒れこみ、後ろにはセーラー服におさげ髪とまるぶちメガネ、俗にいう文学少女
のような出で立ちの女の子がやたらと分厚い本を片手に立っていた。
「その厚み京極夏彦か!?てめえ本を鈍器にするとはふてぇ奴だなぁ!!」
「私は読む用、保存用、攻撃用と所持している」
「ならよし!それじゃあてめえの本のページの端折ったらぁ!!!」
文学少女の本に本ヤンキーの1人が手を伸ばした瞬間、彼女は持っていた本をパラパラとめくり始めた。
「あぁ・・これは新刊本の匂い・・いいよねこの真新しい紙とインクのにほひ・・」
膝をつきその場に崩れるように倒れる本ヤンキー。
「な!?やべぇこいつ・・くそ!栞はさんどけや!!」
(※栞はさんどけ!【意訳:覚えとけ!】)
捨て台詞を吐き、本ヤンキー達は神保町方面へと立ち去って行った。
「大丈夫?」
「うん、ありがとう助けてくれて」
彼女に面と向かって礼を述べたときふと深い郷愁に駆られた。
頭の中に子供のころよく通っていた今はもう閉店してしまった本屋での記憶が蘇っていく。
立ちすくむ僕を尻目に文学少女は前髪をかき上げ額をあらわにした。
そこには『本田書店』と思い出の本屋の名前が書かれていた。
「なぜ君に書店の名前が!?どういうことなんだ??」
「ふふ、わからない?私は本田書店そのものよ」
「書店が人間に?ありえないよ・・」
「あなたの愛読書のラノベではよくあることでしょ?」
戸惑う僕の眼前に近づき文学少女は笑みを向ける。
「子供のころよく君が将来本屋と結婚する~って騒いでたじゃない?その愛が奇跡を起こしたのよ」
「そういえば言ってたかも・・はは、夢みたいだな。びっくりしたけどまた会えてうれしいよ」
「それじゃあ私達の第2章始めましょ?」
「うん!!」
本への愛がおこした僕達のラブストーリー。
まだ序章に過ぎないけど、きっと結末が書かれた最後のページにはこう書かれているはずだ。
『Happy End』