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風のフルーティスト  作者: 蒼乃悠生
第四章 優しい音が手を引いてくれた
32/42

1-3

 


  ■ ■ ■



 十三分のソロを終えた。

 正直、吹き切った時にはバテバテで、上手の舞台袖まではなんとか歩いたのを覚えている。

 舞台袖に用意されたパイプ椅子に座って、スタッフから貰った水を一気に飲む。砂漠に雨が降ったかのように、体の指先まで冷たい水が染みていくのがわかった。

 汗ばむ顔をタオルで拭いた。ステージを照らす照明は暑い。照明で肌が焼けてしまうこともある。肺活量が必要なフルートで、十三分ぶっ続けで演奏するなんて、運動をしているようなもの。思わず意味のない声が漏れる。

「あ〜」

 だが、ゆっくりする暇はない。

 本来なら夏希(なつき)のピアノソロの時間を、いまは代わりに(そう)くんがソロを吹いている。その曲の名は『独奏フルートのための「虹」』。

 多久潤一朗(たくじゅんいちろう)氏が作曲しており、様々な特殊奏法を使用する曲。フルートを吹きながら喉を鳴らして歌うグロウルといった奏法、一つの指遣いで二つの音を重ねる重音奏法などができないと演奏そのものが成り立たない、難易度の高く、癖の強い曲だ。

 正直、私にはできない。特殊奏法が微妙にしかできない。これは致命的だ。

 何度か練習してみたが、独学だと難しいものがある。本を読んでできれば良いが、できなかった場合、大概書かれている文章を理解することが難しかったりする。独学の辛いところだ。

 今回、(そう)くんが『虹』を演奏すると訊いて、高校生がこれを吹きますかと脱帽した。

 彼の演奏に耳を傾ける。何度聴いても、あの横笛のどこからあんな音が鳴ってるんだと思う。考えれば考えるほど、これがレベルの差なんだと痛感した。

 だが、自分も観客のように最後まで聴くわけにはいかない。この次は二重奏が待っている。名残惜しいが、下手の舞台袖まで急いで移動した。



 スタッフに急かされて辿り着くと、ちょうど演奏が終わったところだった。

 早く歩いてきた為少し息が上がっているが、楽器と譜面台をしっかり持って、ステージに再び上がる。

 リスト作曲『愛の夢』

 ロドリーゴ作曲『ある貴神のための幻想曲』

 パッジーニの『妖精の踊り』など、休憩を挟みながら演奏をした。

 これら全て、元はピアノ伴奏があったと誰が気づくだろうか。

 もちろん、フルート二重奏の楽譜を持っていればよかったのだが、私も(そう)くんもアンサンブルの楽譜自体をあまり持っていなかった。お互いにソロ専門だったのだ。

 show先生は持っていると思っていたが、(そう)くんの話によると、フルートの友達がいないから楽譜もないのだと。

 いや、そんなわけないでしょと思ったが、それぞれ事情があるだろうし、黙っておく。

 そして、最後の曲があっという間にやってきた。


ここまで読んでくださり、誠にありがとうございました!

もし少しでも気に入っていただけたら、下にある評価(★★★★★)やコメントなどで応援してくださると、非常に嬉しいです!

是非是非宜しくお願いします!



今回、湊くんが演奏した『虹』という曲は、私は吹いたことがありません。楽譜をちらりと見ましたが、第一印象としましては「なんやこれ」です。

現役時代に出会っていれば、遊びで吹いていたんじゃないかなぁと思います。

結構癖が強いなぁと思いましたが、演奏する面白さはあると思いました。

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