4-2
職員室のドアを閉める。
すると、そこにはあの彼が立っていた。私は驚いて、泣き顔を隠す為にそっぽを向く。
「眞野さん、大丈夫?」
彼は焦るように、私の顔を覗き込む。
「母さんが……すみません」
事情を知っているようだ。
そりゃあ、あれだけ叫んでいれば生徒達の耳にも入るだろう。そうなれば自然に息子である福岡くんに嫌でも情報が入る。
福岡くんは、いままでに見たことがない顔をしていた。怒っている。その眼差しには恨んでいるようにも見えた。
「福岡くん」
名を呼べば、その眼差しは柔らかくなる。
「折角、連絡先を教えてくれたのにごめんね」
上手く笑えているだろうか。
「一回も連絡しないまま、終わりそうだね」
「母さんに、なにを言われたんですか?」
彼になんと言われようと、私は言わなければならない。
「連絡先、消して。お願いだから」
「母さんにそう言われたんですか⁉︎」
あんな穏やかに笑う彼に、こんな気迫で言ってくるなんて予想していなかった。だから面食らう。
「あ……すみません」
私が怖がったように見えたのか、彼は気まずそうに謝った。
「じゃあ、さよなら」
彼の引き止める声を背にして、逃げるようにその場から離れた。
無視して、ごめんね。福岡くん。
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