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探しものはきっとここに

「押収したものは全てこの部屋にまとめてある」


王城の地下牢にほど近い一画の大きな部屋に案内されると、シェマンが扉を開けながらそう言った。


「結構な量だな・・・」


うずたかく積み上げられた品々に、アユールは思わず溜息を零した。


「まあ、このどこかに探すものがあると思えば、始める前からくじけてはいられませんね」


ランドルフが押収品の山を眺めながら苦笑した。


「悪いな、ランドルフ。お前にまで付き合ってもらって」


申し訳なさそうに、アユールが口を開く。


「来てくれて助かったよ。お前が叔父貴の眼になってくれると、俺も探し物に集中できるからな」

「いえいえ、とんでもございません。アユールさまにそう言って頂けて光栄にございます。微力ながら、このランドルフ、精一杯お手伝いさせていただきます」


こうして、たった三人で部屋一杯の押収品を一から調べる作業が始まった。


だが、しかし・・・。


「ないな」

「ありませんね」

「あきらめるな。まだいくらか残っているだろう」


丸一日かけて調べても、まだそれらしき物は見つからないままだった。


「うーん、もうあらかた見たんだがな・・・。残りは、あそこの一角に残った品々だけか」


皆でたどり着いた結論が只の推測で終わってしまう、そんな恐れが心の中に生まれる。


「もしかして、俺たちは何か重要なことを見落としているのか・・・?」


焦りを感じつつも、ひとつひとつ、品物を調べていく。


きっと今日、決定的なものを見つけられる、そう信じていたからこそ、このまま何も見つけられずに終わってしまうのかという考えを受け入れられなかったのだが。


悪い予想というのは、こういう時に必ず当たるもので。


最後の一つが空振りに終わり、落胆の空気が部屋を覆う。


そんな時だった。

カーマインがふと呟きを漏らしたのは。


「・・・もしや根本的なことで考え違いをしているのかもしれんな」

「叔父貴・・・?」

「我々の求めているものがこの中にあるとは限らない、と考えてみるのはどうだ?」


ランドルフが怪訝な表情を浮かべる。


「どういうことでしょう?」

「シェマンたちが押収した物の中に我々の探し物が入っていなかった、ということだ」

「だが、シェマンは持ってこれる物は全部ここに集めたって・・・」


アユールの言葉を、カーマインは手で制する。


「それが持って来ることが出来ない物だったら?」

「・・・え?」


皆がその言葉に唖然とする。

だが、カーマインはその反応など気にする素振りもない。


「ここに持ってこられないような物、例えば家屋、例えば土地、あるいは何か大型の品。それらのいずれかだとしたら?」


アユールが目を見開いた。


「そうか・・・」


アユールは振り返り、扉近くに待機していた兵士の一人にシェマンを呼ぶように頼む。


「考えてみたら、あの狡猾なサルマンがそんな簡単に見つかるような証拠を残す筈がないんだ。あいつの所有していた土地、建物、全部見て回るぞ」


そうカーマインとランドルフに告げた時、ちょうど兵士に連れられ、シェマンが慌てた様子で部屋に入ってきた。


「どうした、アユール。何か見つかったのか?」

「いや、まだだ。・・・シェマン、あの男の持っていた土地や家屋、それそのものを調べたい。誰か案内を頼めるか?」


その頼みに、一瞬、驚きを見せたものの、すぐに事情を察したのか深く頷いて。


「よし、オレが案内する。すぐ準備するから待っててくれ」


そう言って、慌ただしくその場の兵士たちに指示を残してからアユールたちと共に出て行った。





「ここがサルマンの住んでいた屋敷だ。あちらの小さな森一帯も、奴の所有地だったらしい」


王都から決して離れようとしなかったサルマンは、居住地も王城の近くに構えていた。


屋敷自体はそれなりに大きかったが、既に家宅捜索も終わっていたため、中はがらんどうだった。


「叔父貴とランドルフは、とりあえずこの屋敷の中に何か隠されていないか調べてみてくれないか? 壁の中とか、床下とかの気配も注意して探ってくれ」

「よかろう」

「俺はあっちの森の中を見てくる。シェマン、この辺りの地図はあるか?」

「簡易なものだが、これで良ければ」


シェマンは小ぶりの地図を資料の中から取り出した。


「助かる。じゃあ、ちょっと行ってくるよ。何か見つけたらすぐに知らせるから」

「ああ、こちらもな」

「行ってらっしゃいませ、アユールさま」


もう日は暮れかけていて。

森の向こうには、夕陽が染めた赤い空が目に映った。


足早に森の中へと歩を進める。


俺たちの探していたものは、きっとこのどこかにある。


確信めいた予感が、アユールにはあった。


屋敷か、土地か、それとも森の中か。

それはまだ分からない。


だが、この一帯のどこかから、微かに、本当に微かに、魔力の気配が漏れているような、そんな気がしたのだ。


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