“こ“ “ろ“ “し“ “て“ “や“ “る“
「う~ん」
先輩が難しい顔をしてレントゲン写真を睨んでいた。
「どうしたんです。そんなに難しい写真ですか?」
「難しいって言うのか……
原因不明の高熱が続いている患者さんがいてね。肺炎の疑いがあるんでレントゲン撮ったんどけどさ。まあ、診てみろよ」
レントゲンを診て、僕は、うっ、と唸った。
「なぁ、女の顔に見えないか?」
先輩の言う通り、レントゲンの白と黒の陰影が女の顔に見えた。それも一枚ではない全部で六枚あるレントゲンの写真全てに女の顔が写っていた。
「俺さぁ、こんなの前にして患者さんに説明できないよ。
困ったなぁ~」
先輩は頭を抱えた。
どうやら先輩は気づいていないらしい。
僕はその事を言うかどうか悩んだ。
気づいてしまったのだ。
レントゲンの女の口がこう言っていることに。
“こ“
“ろ“
“し“
“て“
“や“
“る“
2019/07/08 初稿
夏ホラー参加前のお祭り投稿です。
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