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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

モヤっとする話

気持ち悪いもの

作者: 伊藤@

諸事情により、前作を加筆修整していたのですが書いた時の気持ちにならず、削除も考えた結果。全くの別作品を上書き致しました。突然内容が変更してご迷惑をお掛けします。ブックマークを付けて下さった皆様本当にありがとうございました。


「あのねっとりとした気持ち悪さ。きっと誰にも理解してもらえないと思います」


 そう言うと私は黙り込んだ。

 



 30年も離れて暮していた母親がいきなり田舎から上京して一人暮らししたいと言ってきた。

 育てて貰ったが、この30年の間にお互い大きな溝があると私は思っている。

 2月に祖母が亡くなり、5月には母の弟が亡くなった。私はどちらの葬儀にも出なかった。

 

「出なくてもいい」


 母からそう言われた。


 叔父が引き篭もり家庭内暴力を振るわれて、骨折させられたと言われた時に、もう警察に相談しようと母に言っても。


「弟は家族だから」


 母からそう言われた。


 母一人で祖母と叔父の面倒をみて、金が無いから10万送ってくれ、次の月は5万送ってくれと金の無心をされた時も、これ以上私も無理だからと弁護士をつけて生活保護でも受けてほしいと言った時も。


 無言で電話を切られた。



 私が結婚に失敗して離婚し、住む場所すら無い時。


「あんたが帰ってきても住む部屋が無いから帰ってこないで欲しい」


 そう言われた。



 

 心配しても家族ではないからと線を引かれ、口を挟めば拒絶され、自分に不利益になりそうであれば切り捨てられたのに。


「2年後にはそっちに住みたいからよろしくね」

「市営住宅に住みたいから資料取りに行ってきて」


 引っ越し費用はどうするのか、部屋を探すまで私をあてにされても困ると伝えたら。


「市営住宅は諦めるから、貴方が住んでる街のシェアハウス探しておいてよ」


 今までの事を無かった事にして、世話をしてもらう事を望む母を、私は、どうしても、どうしても許せない。


 ドロリとした気持ち悪さ。

 私に、線を引いたのも。

 私を、拒絶したのも。

 田舎で一人暮らししているのも。

 全部母が自分で決めて、そうなるべくしての人生だから。

 母の事を許せない私にした母が許せない。



 私の中の母はもういない。子供の頃に私を慈しんでくれた、あの頃の母はもういない。とっくの昔に私の中で死んでしまった。


 今存在しているの母は、私にとっては他人と同じ。興味もなければ、心配もしないし、思い出しもしない。



 母は上京してきた。

 私を丸まるあてにして、買い物してきて、銀行に行ってきて、洗濯して、病院に連れて行って、お金が足りないから少し用立てて。

 最初は遠慮していたようだが、どんどんと要求が酷くなる、まあ図々しいのは前からか。



 だから携帯電話を解約して引っ越した。

 私の中のこの後味の悪い罪悪感さえすぐに消えてしまった。


 こんな私の最後はきっと母のように寂しく侘しいものだろう。

 しかし私は後悔はしない。

 他人を切り捨てる人間が他人から救われる訳がない。切り捨てる覚悟がなければ、切り捨ててはいけない。


 こんな私は、この世で一番気持ち悪く理解されないものなんだろうと思う。

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