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ヴェイルン王国の双子

今回は、王都の話です。

次はまた、コウエンさんの話に戻ります!


三人称視点で書いてますので慣れないですがよろしくお願いいたします。


評価付けていただきありがとうございます!!!


本当に嬉しすぎました!!


これからも頑張ります!

大国ヴェイルン王国の王都ビスタは別名「剣の都」と呼ばれている。

その大きな理由の一つにこの国が騎士国家で、その中でもこのビスタは剣を扱う騎士の家が大半を占めるからである。


剣の都と呼ばれるだけあってビスタには沢山の剣士が集まり年に一度の「剣祭」では、最も強い剣士を決める闘いが催される。元々はこの催し自体が剣祭であったが年を経るうちにそれが国を挙げた一大行事になっていった。


剣祭とは言われているが剣士だけが出場するわけではない。


魔導師や魔獣使いどんな種族であろうと御構い無しに参加できる。求められるのは力のみ。


しかし、歴代優勝者の中に剣士以外いない。


この事実がまた、この街を剣の都と呼ばれる由縁である。


ヴェイルン王国は、この剣祭の期間中はあらゆる国交を開き世界中からあらゆる強者を集める。


それが犯罪者であろうと間者であろうと御構い無しに王都に入る許可をだす。


これも一重に圧倒的武力を持った大国であるからこそ行える行為である。


この剣祭で良い成績を残せばあらゆる国から声がかかるため、参加者は後を絶たない。


優勝すればあらゆる特権が与えられ、王からなんでも一つ願いが叶えられるようになっている。

大抵は王国に仕官し、側近として最強の名をほしいままに出来る。



そんな剣祭の167代優勝者のコベルト=シュルゼンは199回目の剣祭本戦を見ながらため息をつく。コベルトは優勝時に爵位を貰い貴族の仲間入りをし、今は王国の筆頭指南役を務めている。


教え子には、剣祭優勝者もおり、王都にて名前を知らないものはいないほどである。


「今年も来ないか。」


彼はある一人の教え子を待っている。

10の時にはすでに自分を超え、教えるものは無いと免許皆伝を与えいつの日かこの剣祭で見る日を楽しみに待っているのだ。


「あいつも、今や32歳。剣を諦めておらなんだら、どんな化け物になっておるやら。」


彼自身は普通に笑ったつもりでも後ろで観戦している弟子たちには不気味な笑い声に聞こえていた。

70手前に差し掛かったコベルトは今もなお王国の強者であり、今でこそ温和な表情も増えたが昔は怒り狂ったような怒髪天がトレードマークであった。


そんな不気味な笑みを浮かべるコベルトにラフに話しかける一人の弟子がいる。


「おっちゃん。また兄貴のこと考えてるだろ。不気味すぎて弟子たちが引いてるよ。」


そう話しかけるのはコベルトに肩を並べる強者である。剣聖フェルナンドである。


「フェル坊も期待しておるのであろう?そうでなくては毎年わざわざ優勝しない理由がないでは無いか。」


フェルナンドはここ5年間常にベスト8に入る強者である。

名門ケルビン家の()()であり実力は折り紙つきで毎年優勝候補筆頭に挙げられている。


「おっちゃん。変なこと言わないでくれよ。今年こそは優勝しようと、毎年頑張っているのさ。」


そう言うがその言葉は嘘臭さを滲ませている。これもこの二人の中では挨拶の一つであり、あえて突っ込むこともせずコベルトはフンと鼻を鳴らし試合に目を向ける。


「全くお主ら双子には困ったもんじゃ。妹なぞベスト8にすら残ろうとせんとは。早くわしの指導に報いて欲しいもんじゃのう。」


(ま、気持ちはわからんでも無いがのう。)


剣祭優勝者は、二度と剣祭に出ることは出来ない。これは新しい武の台頭を阻害しないため出来た唯一の規則である。


コベルトも年老いたとはいえ強者との闘いを望むものであり、少し優勝してしまっていることを悔いている。


「さて、目ぼしい者の闘いも終わったことじゃし、わしは帰って寝ることにしようかの。」


そう言ってコベルトが立ち上がり会場から足早に去って行ったその足取りは70手前とは思えないほど軽快であった。


弟子たちはあっけにとられるがすぐさま追いかけるのであった。


ちょうど会場ではユーベルの試合が終わり勝者の名が呼ばれている。


無傷のユーベルとボロボロの相手。もちろん勝ったのはユーベルの相手である名も知らぬ剣士である。


「こんな茶番早くおわらせて兄貴のところに行きたいよな。ユーベル。」


フェルナンドの言葉を聞くものはおらず広い部屋に独り言がこだました。


ーーーーーーーーーーーーーー


「つまらない。」


ユーベルは控え室に戻り早々に帰り支度を整えていた。治療の必要が無いので準備はすぐに終わる。


(今日もよつかぜ亭で愚痴でも聞いてもらおうかしら。)


ユーベルもフェルナンドと同じようにわざと優勝しないようにしている。

しかしフェルナンドと違うのはあからさまに負けること。

フェルナンドは接戦の末負けたように見せかけているのだがユーベルにはそんな演技をする器量はない。

圧倒的に打ちのめし、相手が敗北を宣言しようとした瞬間に自ら敗北を宣言するのだ。


相手からすれば堪らないが、ユーベル自身が自分より強い者からしか求婚を受けないと宣言している以上ある程度の実力は示さなくてはいけないのだ。


控え室から外につながる通路をスタスタと歩き会場を出る。


「ユーベル。」


会場から出てすぐに呼び止められ、苛立ちの顔で振り返る。


「フェルか。何よ。」


「何よ、じゃねぇよ。今日も行くんだろ?多分コベルトのおっちゃんも来るから一緒に行こうぜ。」


「ほんと、双子って嫌ね。なんでもお見通しなんだもん。」


そりゃな。と一言言うとフェルナンドはユーベルの横に並び歩き出す。


二人の間に会話はいらない。


足早によつかぜ亭に向かい中に入る。


よつかぜ亭は知る人ぞ知る名店で、昔からよく連れてきてもらっていた。

店長とも顔見知りで一言挨拶すると奥の個室に向かう。


「遅かったのう。先に始めとるよ。」


個室の中にはすでに数本の酒瓶が転がって少し出来上がっているコベルトが座っていた。


「おっちゃん。気持ちはわかるけど、早すぎるって。」


「なーに。心配せんでもまだまだ酔っとらんわい。」


ユーベルとフェルナンドは顔を見合わせ。ため息ひとつ。直ぐに向かいの席に着いた。


「さてさて。ユーベルよ。今年もいかんかったか?」


「みんなダメね。弱くはないけど精々お父様レベルよ。」


コベルトはハッハッハと大笑いをあげる。


「そうかそうか。あのヒヨッコ程度ではお主らのお眼鏡には敵わん訳じゃのう。」


酒お煽りながらさらに大笑いする。


「剣祭のレベルは昔より上がっておるのじゃがどうも寂しいのう。」


コベルトの雰囲気が変わり少ししんみりした様子に変わる。


「どうしても、俺達の求めるところに達してる人は簡単には見つかりませんね。」


フェルナンドも横から同意する。


ユーベルも酒を呑みながら頷いている。


「このままではいつまでたってもユーベルが結婚できんのう。」


コベルトは少し寂しそうな顔をして、ユーベルを見る。その顔は孫の幸せを願うお祖父ちゃんそのものである。


「私より強い人がいないのが悪いのよ。」


コベルトはガックリとうなだれさらに酒を煽る。


実際ユーベルには見合いの話がたくさん舞い込んでおり、その全てを断っている。

その中には王族も数多くおり、ケルビン家の悩みの一つになっている。


「こいつこの前なんか、コルクス第一王子からの求婚を「弱い人とは結婚しない」って断ったんだよ。」


「フェル!それは言わない約束でしょ。」


「おっちゃんにはいいじゃんか。」


フェルナンドからの爆弾発言にコベルトは一瞬目を丸くし直ぐに大笑いしていた。もちろんフェルナンドはユーベルに思い切り叩かれたが。


「そうかそうか。王妃にも興味が無ければ、誰も結婚できんじゃろうて。」


そんなたわい無い話をしながらどんどんと時間は過ぎていった。


ーーーーーーーーーーーーーー


夜も更けて街の明かりもだんだんと少なくなりよつかぜ亭からも喧騒が冷めて行く。


「入るぞ。」


周りとは裏腹にまだまだ話し足りない3人の部屋に不躾な声が響き、扉が開く。


「ゴンド、遅かったのう。もう店は良いのか?」


ゴンドと呼ばれた男はよつかぜ亭の店主で剣祭186代優勝者である。

優勝者特典として店を貰うという変わり者であり、何を隠そうコベルトから免許皆伝をもらった数少ない弟子の一人である。


「あらかた落ち着いたからこっちに混ぜて貰うことにします。」


そう言ってゴンドは上等な龍酒を片手に席に着いた。


「ゴンドさん。それって龍酒じゃない?私飲んだことないのよ。ちょっとちょうだい?」


ユーベルがすぐさまそれに気づきおねだりする。


「ああ。いいが、これはかなり効くぞ。」


ニヤリと笑いユーベルの杯に酒を継ぐ。

ユーベルがそれを一口に飲み干しむせる。


「龍酒を一口とは良くやるもんじゃ。」


ユーベルは慌てて水を飲み咳を落ち着ける。


「本当に効くわね。でも美味しいわ。」


「ユーベル嬢は、ドワーフに嫁入りしても大丈夫そうだな。」


そう言って場は笑いに包まれる。


「それで、ゴンドや。それは()()で手に入れたものなんじゃ?」


少しだけ真面目な顔でコベルトが聞くとゴンドも真面目な顔になる。


「そうなんだ。その事で今日は報告がある。」


ゴンドは3人に向き直り改めて話し出した。


「この酒は、俺の故郷の辺境の街から届いたものだ。この辺境の街は、ドラゴン狩りができるレベルの冒険者など一人もいないはずだった。しかし何故か最近ではかなり珍しい物がたくさん届くようになった。それもここ10年で、だ。」


ゴンドの話を聞きもしや、と3人は顔を見合わせる。


「どうやら10年前に何処からともなく現れた剣士の男が関係しているようで、その男は誰とパーティーを組むでもなく一人で剣を極めているらしいんだ。」


「名前はわかるかのう?」


「すまない。そこまではわからない。ただ、10年前に王都からやってきた男で、身なりもそれなりらしいぞ。」


ゴンドは情報屋としても優秀で3人は密かに10年前に消えた剣士の捜索を依頼していたのだ。


「可能性は、ありそうですね。ゴンドさんありがとうございます。僕達はそこに行ってみる事にしますよ。詳しい場所だけ後で教えてください。」


改まって感謝の念を伝えるフェルナンド。隣ではユーベルも頭を下げている。


「ほっほっほ。今回はわしも一緒について行く事にしようかの。」


「おっちゃんは、王都から出たら大問題だろうが。」


フェルナンドが口を挟むが、コベルトは行くの一点張りで引く様子がない。


そんな会話を見ながらユーベルとゴンドは笑い合うのだった。





次の日、剣の都ビスタから3人の剣豪が置き手紙を残し消えた。


特に王家筆頭指南役のコベルトが消えたのは大問題となるのだが、この3人はそんなことつゆ知らず辺境の街へと旅立つのであった。


行き先を知るのは飲み屋の店主のみ。

そして、五年連続ベスト8のフェルナンドは、この年初めて本線初戦敗退したのだった。

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