旧友に魔法の指導をお願いします
投稿したつもりが出来てなかったです。
申し訳ない。
朝は早くに眼が覚める。
これは、20年間欠かしていない朝の鍛錬をするためである。
今日も同じように眼が覚めベッドに立てかけている剣を手に取り外に出た。
外はまだ薄暗く朝と夜がどっちつかずの状態である。
井戸から水を汲み、顔を洗う。
まだまだ、暑い日々ではあるが井戸の水は変わらずに冷たく、この暑さにはちょうど良い温度だ。
思わず剣を取り外に出たが転職していたことを思い出す。習慣とは怖いものだ。
「一息ついたは、良いものの魔導師はどんな鍛錬をしたら良いのだろうか。」
独り言を漏らしながら考えるが、20年間剣一筋の俺には魔導師の鍛錬が一切思い浮かばない。
「鍛錬の仕方がわからなくてはどうしようもないか。」
魔法の鍛錬を諦め日頃からしている剣の素振りを始めた。
俺の鍛錬は基本の繰り返しだ。
型を確認しながら最初はゆっくりと振り、その軌跡をなぞるようにだんだんと速度を上げていき、それを繰り返すことで自分の中のズレを修正していく。
剣を振る事で自分の体調、剣の重みなど様々な要素を確認することができる。
手に馴染んだ剣は20年来の相方であり、折れては打ち直し、焼ければ再刃し、もはや元の剣とは言えないかもしれないがそれでも相棒に変わりはない。
剣は、片方にしか刀身のない独特の形状で切ることに重きを置いており、正しい角度で切らなければ簡単に折れてしまう。
そのため最初のうちは鍛治代がバカにならず、途中からは鍛治士のドワーフに頼み込み打方を教わったものだ。そのため、より一層この剣に愛着が湧いているのかも知れない。
一通り朝の鍛錬を終える頃には体中から汗が噴き出していた。
空を見上げると太陽が燦々と照りつけ今日も暑い日になることを予感させる。
水浴びをし、着替えを終えシュルカのもとに向かう事にした。腰には剣をさしている。これが無いと落ち着かないのだ。
「シュルカ。起きているか。」
時間を確認すると今は12時少し前、いつものシュルカなら、この時間には起きているはずだ。
しばらく待っても全く返事がない。
昨日はかなり飲んでいたので寝ているのだろう。
起こしては悪いと思い別の知人を訪ねることにした。
すでに日は登り街も活気が出だし、人通りも多くなってきた。
すれ違う人たちにあいさつしながら目的の場所へと向かう。
目的の人物のいる場所はシュルカの家から20分ほどかかる街のはずれにあるので、滅多に街に降りてくることはない。
おそらく今日も怪しげな魔法の研究でもしてるだろう。
「パルクス。いるか。コウエンだ。魔法について聞きたいことがある。」
家の前で大声で叫ぶ。パルクスは基本的に家を出ない。たまに外出するときは、知人のためにと名前の表札を裏返して行くのだ。
今日は表だったのでいるはずなのだが。
「いないのか。」
そう言いながらドアに手をかけると鍵が開いていた。
「入るぞ。」
そう言いながらも空いている方の手は刀の柄に手をかけておく。
何か事件に巻き込まれているかもしれないからだ。
慎重にあたりを警戒しながら進み、地下の研究室に向かう。そこからだけ人の気配がしたからである。
「なぜだ。なぜ成功しない。式は完璧なはずなのに…」
ドアから少しだけ光と声が漏れていて、それが知人のものだと知り警戒を解いた。
「パルクス。久しぶりだな。」
パルクスは突然声をかけられたので一瞬ビクッと体をふるわしこちらを向いた。
「なんだ。コウエンか、びっくりするじゃないか。しかも君。不法侵入だからね。まぁ、そんな事は置いといて、ここでは話がしづらいのでね。とりあえずリビングにでも行こうか。」
リビングで座りしばらく雑談をした後、パルクスに転職して、訓練の仕方がわからないことを告げた。
「そうか。ついに転職したんだね。剣士クラスが出なかったのは神様も君の才能が恐ろしくなったからだろうね。」
「はは。面白い解釈だ。単に才能がなかっただけだと思うがな。」
パルクスは肩をすくめこいつは何を言っているんだと言う様なポーズをとった。
「天職と、才能は似て非なるものなんだよ。天職ではあるが才能のないもの。才能はあるが天職ではないモノいくらでもあるのさ。」
確かにそれはその通りなのだろうが。それでもなんだか納得がいかないのだ。
「まぁ、いつかきっと気づけるさ。」
悩んでいるのが顔に出ていたのだろうか。パルクスは話を終わらしてくれた。
「さて、本題に入ろうか。魔法の鍛錬だったね?僕はきみに山ほどの借りがあるので教えるは吝かではないのだが、僕の鍛錬はいささか特殊のようでよく弟子を壊してしまったのだよ。それでもいいかい?」
「ああ。俺はきみより優秀な魔導師にはあったことがないからな。」
1番優秀な人から教わるのが一番良いだろうと付け足す。
パルクス以外の魔導師とパーティーを組んだこともあるがこいつ以上に優秀な者は今までいなかった。
俺自身とパーティーを組んでくれる冒険者自体かなり貴重なので母数が少ないが、それでもパルクスは優秀だと言えるだろう。
「お褒めに預かり光栄だ。私は魔導師ではないが、優秀であるのは間違いないので否定しないでおくよ。ではその件引き受けようと思う。いつから始める?」
パルクスに聞かれるが聞いているパルクス自身も答えは分かっていると行った表情である。
「当然今からだ。」
そう行って俺は立ち上がった。
「分かっていたとも。では、最初は座学から始めるとするか。」
パルクスは立ち上がった俺にニヒルな笑みを送りつけて来た。
俺は立ち上がった気恥ずかしさから目を合わすことなくもう一度席に着いた。