Ⅰ 始まり。
深々と降り積もる、雪の中に、佇む一人の少年。
この国には珍しい、雪のような色の髪と、赤茶色の瞳。
ひゅう、と白い息を吐いて荷物を背負いなおす。
そして、先の見えない道を再び歩き始める。
雪が降り止まない国、アルカディアにて。
雪のイメージとはかけ離れたざくざくとした雪を踏んで行く。
ここは首都、ユランの町外れ。早朝であることもあり、この道を通る人は誰も居ない。
朝であることを確かめるように太陽を見上げ、白い息を吐く。
今日は太陽に厚い雲がかかっていて日差しは届かない。
それを確認すると一段と寒くなったような気がして、マフラーを口辺りまで引き上げた。
旅を始めて早二週間。寝床の見つけ方も獲物の狩り方も身についてきたこの頃。
覚えてきて油断しているこの頃が一番死にやすい、と言っていたのは誰だったか。
「…母さん、元気にしてるかな…」
ぽつりと呟いた言葉は、周りの木々と雪に囲まれてすぐに聞こえなくなった。
木と低木しかない、辛うじて道と呼べる道を進んで三時間。
途中途中休憩も取りながら一歩一歩確実に、歩みを進めている。
日が完全に上に昇った時刻。休憩を取るために近くの切り株に腰を下ろす。
太陽にかかっていた雲は晴れ、日差しが照っていた。
水筒に入った水を飲み、レンバスを齧る。
冷たい水の味も、レンバスの甘い味も、もうこの体に馴染んでいた。
「!」
休憩を終えて立ち上がった時、殺意を孕んだ視線を感じた。
これは、獣だ。瞬時に把握し、背中に背負った両刃剣を持つ。
いつ飛び掛ってきてもいいように構え、感覚を研ぎ澄ます。
敵は5メートル先、森の中。数は…2体。
雪を踏む足音のリズムから狼ということが分かる。
「っ!」
準備はしていたものの、遠めの距離から飛び掛られ後ろに押される。
両刃剣を振り、狼を振り放すと狼は背を低くし威嚇をした。
「はぁぁっ!」
狼が飛ぶとちょうど口の辺りにあたる高さに剣を構え、走り出す。
すると、奥にいた一匹の狼が勢い良く飛び掛ってくる。
だが、構えられた剣によって上下に裂かれ、絶命した。
残るは先ほど倒した奴よりも大柄な狼。
次は飛び掛る、ではなく、身を大きくのり出して噛み付いてきた。
黒いマントを靡かせながら右に避けると、剣を振り上げ両断した。
「こんなものか…」
剣についた血を拭い、他に敵はいないかと確認する。
…どうやら何もいないようだ。武器を背中の鞘に戻す。
それからサバイバルナイフを取り出し、狼の牙と毛皮を剥ぎ取った。
すると、剥ぎとった直後に黒い霧となって霧散した。
この森では狩猟が行われているが、死臭がしないのはこの為だ。
立ち上がって荷物に牙と毛皮をしまいこみ、戦闘で分からなくなってしまった方角を確認する。
さっきまで北に向かっていたのだから…
「…あっちだ」
ちょっと考えてみると、足跡の無いほうに向かえばいいのだと、
無駄な時間を使ってしまったことに少し後悔した。
また歩き始めてから一時間。途中途中休憩を挟みながら足早に進むと、
嗅ぎなれた煙の匂いが鼻についた。
小さい頃の思い出であやふやな部分も多かったが、
そういえばここらに小さな小屋があったな、そこに住んでいたおじいさんは元気かな、と
一つの出来事をきっかけに色々と思い出していく。
まだ妹が生まれたてで、俺が5~6歳ごろのこと。
読む本も、遊ぶ道具も無かった家は、よく父に散歩に連れて行けとせがんだものだ。
父は金を稼ぐのに必死に働いていたが、
それでも仕事の合間を縫って俺の願い事を快く聞き入れてくれた。
遠く歩くこともあったし、近場で遊んだり…仕事で疲れていただろうと思うが、
それでも付き合ってくれた父には感謝しかない。
思い出を掘り起こしながらも歩みを進めていくと、
うっすらと思い出に残っている風景が目の前に現れる。
煉瓦作りで一階建ての小屋。高く積まれている薪。
屋根から突き出た煙突から出る煙。
「…懐かしいな。ここの人、なんて名前だったかな…」
大切なことを忘れたままだったが、少し近づいてみようと早足になる。
近づくに連れ、硬いもの同士がぶつかる音が大きくなっていく。
…薪を割っているようだ。
斧を振り上げるくらいパワフルなおじいさんだったか…?それとも娘か…?そもそも娘なんて居たか…?
色々な推測を脳内で挙げながらざくざくと音を立てて近寄っていく。
薪割りをしているところは、薪置き場のすぐ近くのようだ。
ふと止まると、薪割りの音が止まっていることに気がついた。
終わったのかな…と思いつつもまた歩き始める。
家の角を曲がった、その時。
…どうでしょうか。
読みづらい、テンポが悪い等、指摘がありましたら
活動報告のコメに下さると私は有頂天になって飛び跳ねてから
指摘された点に注意しながら話を書きます。




