小話 優しい女将さん
短いけれどちょっとした小話です
ユリアが出たあとの女将さんの話
早くヒーロー出したい(´・ω・`)
「あの子、大丈夫かしら……」
隣町まで歩いていくのだと朝早くに出て行った女の子が気になる。宿屋の女将という仕事からたくさんの旅人を見てきたけれど、あんなに無邪気で素直で危なっかしい子はなかなかみない。
「やっぱり無理にでも馬車に乗らせるべきだったかしら」
宿で出すための野菜を手に取りながら一つため息をつく。
「ううん、やっぱり心配だわ。自警団のほうに相談しに行ってみましょ」
そうと決まれば必要なものをさっさと手に取って支払いを済ませる。一旦宿に戻って荷物を旦那に渡してから街の自警団のほうへと足を向けた。
「すみません、少しいいですか?」
「クラインフィーの女将さんじゃないか。何かあったのか?」
自警団の詰所に顔を出すと、顔見知りの団員さんがこちらに気づいて声をかけてくれた。
「実はね、昨日うちに泊まってくれた女の子がいるんだけど、その子旅費の節約だ、って言ってリュアンまで歩いて行っちゃったの。腕が立ちそうだって言っても女の子でしょ? ちょっと心配で……」
「女の子がリュアンまで歩いて……。それは心配だが街を出たのか……」
団員さんは難しそうに顔をしかめた。
「街の周囲ならなんとか巡回できるが街から離れると我々の手に余るからな。どうしたものか……」
やっぱり自警団は町を離れるわけにはいかないし、街を出ちゃった旅人の護衛なんて無茶よねぇ。
団員さんと悩んでいるとカツカツと誰かがこちらに近づいてくる足音が聞こえた。
「その話、我々に任せてもらえないだろうか」
顔を上げるとそこにはこの国の騎士団の制服を纏った二人組。どうして騎士様がこんな街にいるのかは知らないけれど、これは運がよかったわ!
「ちょうどリュアンまで向かう予定だったのです。今から馬に乗っていけば女の子の足に追いつくのは容易いでしょう。様子をみて必要ならリュアンまで送っていきます」
そう言って上品に笑った騎士様は一礼して詰所から出て行った。
「どうして騎士様がここにいたのかは知らないけれど、これでひと安心ね」
この国の騎士様は優秀ですもの。きっとユリアちゃんを見つけて守ってくれるわ。
「お騒がせしました。今度うちの宿にご飯でも食べにいらしてね」
詰所にいた団員さんたちににこりと会釈して帰り道についた。遅くなっちゃったし急いで戻らなきゃ!