4 リンディア
大変遅くなりましたっ!
なるべく早めの更新を心掛けますのでよろしくお願いします。
2017/2/23 宿屋の名前を追加しました。ユリアが泊まった宿『クラインフィー』です。
そんなこんなで村を出てからおよそ一週間。リュアンの街の一歩手前の街、リンディアまでやってきました。拠点都市のすぐ近くというだけあって人も多く、村ではなかなか見られないお店がたくさんある。街に入ったのが夕方だからほとんど見て回れなかったのが残念かな。
日が完全に落ちる前に宿屋を決めようと街のメインストリートを歩く。さすがというべきかやっぱり宿屋はたくさんある。しかもちょっといいところから安宿まで。
あたしはなんとなく目についた、クラインフィーというこじんまりとしていてどこか可愛らしい感じの宿屋に入った。入り口から入ってすぐ目の前にカウンターがあって、そこから人のよさそうな笑みを浮かべた女将さんが出迎えてくれた。
「あらあらあらあらあら。随分と可愛らしい旅人さんだこと。どちらまでいらっしゃるのかしら。今日はここで一泊する?」
「王都まで行く予定なんです。一晩お願いします」
女将さんは若いのに偉いわねぇ、とにこにこ笑いながら鍵を一つ渡してくれた。
「二階に上がってすぐ左の部屋よ。何かあったら大声で叫んでね。うちのがすぐに飛んでくわ」
にっこりと女将さんが目配せした先にはで可愛らしい感じの女将さんとは対照的なずんぐりとした大柄な男性がフライパンを振るっていた。一階がフロントと食堂を兼ねているらしい。
「ありがとうございます」
女将さんにお礼を告げてひとまず部屋へ荷物を下ろしにいくことにした。夕食は間もなく始まるらしいのでウキウキしながら階段を上っていく。
鍵に書かれた番号と同じ部屋の扉を開けると、そこは決して広いとは言えないけれど可愛らしくまとめられたお部屋になっていた。きっと女将さんの趣味だろう。
「うん、適当に入ったとこだけどけっこういいところかも。あたしってばラッキー!」
荷物を片付けて部屋にしっかりと鍵をかけると、あたしはまた階段を下りた。フロントの前を通り過ぎ、テーブルが並べられたスペースに入ると夕飯時にはまだ少し早いにも関わらず、席の八割ほどが埋まっていた。
「あら、もう下りてきたの? 疲れてない? ここ空いてるからいらっしゃい!」
あたしがどこに座ろうかとあたりを見回していると女将さんが気がついて呼んでくれた。ありがたくそこの席に座らせてもらうと、向かいの席に女将さんが座った。
「ね、名前なんていうの?」
にこにこと笑いながら尋ねてくる女将さんはとても可愛らしい。夕食時なのにいいのだろうか、と思いつつやっぱりひとりより相手がいたほうが楽しいので会話にのる。
「ユリアっていいます。王都に兄がいて会いに行くんです」
「あら、素敵! こんな可愛い妹が来てくれるなんてお兄さん喜ぶわね」
普段言われ慣れていない可愛いという言葉に思わず照れ笑いがもれた。一応あたしだって女の子だからな。可愛いと言われれば照れもする。
それから一言二言交わすと女将さんは「楽しんでね」とにこやかに言いおいて席を立った。さすがに夕食時であたしに付きっきりというわけにもいかないんだろう。
短いやりとりでも女将さんとのお喋りはなんだかんだ寂しい一人旅の不安を和らげてくれた。
そんなこんなで美味しい夕食を平らげると私は部屋に戻った。リンディアからリュアンまでは歩いていくとなると一晩野宿しなければならない。乗り合い馬車も出てはいるけれどそんなに急ぐ旅でもないし、街道沿いに出るような魔物なら自力で対処など楽勝である。旅費の節約のためにも歩いていくことに決めた。
そうと決めれば優先すべき事項は体力の回復である。あたしは早速荷物をまとめると部屋の鍵を確かめてから早々にベッドへと潜り込んだ。