3 旅立ち
なんだか説明回になっております。
設定しっかり作ってるとどこまで出すか悩みますよねぇ…
王都に旅立つまでの一週間、それはそれは有意義な時間を過ごせた。父様との稽古にはより力が入ったし、現れるであろう強者に思いを馳せれば自然と笑みが浮かんだ。まあ、その笑みを見た村の男どもはなぜか皆全速力で逃げていったのだが。
時は流れて一週間、とうとう王都に旅立つ日がやってきた。
「ね、姉様? まさかとは思いますが本当にそれだけの荷物で行きますの?」
お見送りにきたリリアがおそるおそるというように声をかけてくる。
「そうだけど、何か問題あるの?」
あたしが背負ったのは自分で軽く抱えられる程度の大きさの背負袋。中身は三日分の着替え、路金、携帯用保存食と水筒、雨具だ。王都までの道はわりと整備されているし、街と街の間もそれほど距離はない。
「なるべく街に泊まるようにするつもりだし、そこまで装備は必要ないと思うんだけど」
「そういう問題じゃないですわ……」
化粧品は、肌のお手入れは、ドレスは何だかんだとリリアは言うが、それほど必要ではないしなにより旅の邪魔になる。
「ユリア姉様も女の子ですのよ? それなのにこんなに荷物が少ないなんて」
「いい、リリア。荷物増やして旅が煩わしくなるくらいならあたしは身軽で快適な旅を選ぶわ。……そもそもあたし手入れなんてしたことな……」
「嘘ですわよね!?」
嘘も何も生まれてこの方剣を振ってばかりで化粧やドレスといったものからは縁遠い生活をしてきた。そんな必要性なんて感じたことなかったし。
「いいですか、姉様。殿方の心をつかむためには女性としての魅力を上げることもひとつの手です。王都ではぜひ、ぜひお化粧のひとつやふたつ、やってみせてください!」
「お、おう。試してみるよ……」
なにやら妹の気迫に押されたかたちになったが、たしかにあたしも年頃の女の子というやつだ。化粧のひとつやふたつ、さすがにそろそろ覚えたほうがいいだろう。
「きっと王都には良いものがたくさんあると思いますから頑張ってくださいね、ユリア姉様!」
「おう! じゃ、行ってくるね」
両親には朝二人が出かけるときに挨拶は済ませた。あたしは最後にリリアと軽くハグしてから家を後にした。
村からは一本の細い道が出ており、その道をたどっていくと王都へと続く大きな街道に出る。途中にある街に立ち寄るとして、およそ二週間の旅。今は季節的にも暑すぎず寒すぎず、旅には非常に適した時期だ。
「おし、気合い入れてくぞー!」
あたしの叫びにリリアが微妙な顔をしていたなど気分が高揚していたあたしには知る由がなかった。
とりあえず村からは一本道を辿って街道を目指す。街道に出れば看板が立っているはずだし、王都まで通じているのだから人通りもそれなりにあるはずだ。迷う心配などほぼ皆無。あたしは森に挟まれた道を鼻歌交じりにのんびりと歩く。
「なんか母様に無理やり追い出されたみたいな形になったけど、よく考えてみたらすごくいい経験になるわよね。うん。やっぱり親って偉大だわぁ」
この際自分の婿探しだとか兄の嫁探しだとかは置いておくことにする。そんなものなるようにしかならないわよ。
一本道をしばらく進むと急に視界が開け、道幅も少し広くなった街道に出る。たまに人とすれ違うレベルだった森の中に比べ、この道では固まって談笑しながら歩いていく者、急ぎ足で荷物を抱えていく者、馬に荷馬車を引かせている商人らしき者など様々な人がすれ違って行く。
「ただの街道でこれだけの人がいるのなら、主街道にはどれだけの人がいるのかしらね」
この国は王都を頂点として木の根のように町や村が続いている。王都から直接街道で繋がっている都市が副都リュッツェン。リュッツェンから五つ主街道と呼ばれる大きな道が太い根のように伸びており、それぞれ拠点となる街が二つずつ存在している。主街道からまた細い根のように複数の街道が伸びていて、そのうちの一つが我が故郷ロクサ村にも通じているってわけ。
ちなみにロクサ村が通じている主街道の街は王都に近いほうからリュアンとロンダー。というわけで王都に近い街の名前からリュアン街道と呼ばれている。主街道から伸びる細かい街道は多すぎて特に名前は付けられておりません。いったいどのくらい街道とか村とかあるんだろうね。
「他の主街道に行きたければ副都を経由するしかないっていうのが若干不便だけど、基本的に拠点都市とか副都で大抵のものは揃うし関係ないっちゃ関係ないのよね」
そもそも王都を目指すなら道が複雑になっているよりも分かりやすいほうがいい。守るところがはっきりしているほうが警備もしやすいし、人通りが多ければ野獣も避ける。
「周辺国とも関係は良好だし治安も良し。そうすれば流通も活発になる。よく考えられてるわよね」
恩恵を受ける側としてはありがたいことこのうえない。あたしはのんびりと人通りが増えた道を進んだ。