第52話
開幕一閃。
近藤真由美の1撃とハンナ・キャンベルの1撃はお互いを喰らい合い消滅する。
それは3週間前と同じ光景だった。
違う点は1つ。
今度はお互いに様子見などする気が欠片もないということだ。
『開戦の1発は両者のリーダーから放たれた常軌を逸した魔導砲撃です! これが世界最高峰の後衛の力なのか!』
『わ~綺麗ですね~』
威力よりも数と速度重視した砲撃を放つ真由美。
本来の火力押しを彼女が行わないのはそんなことをすれば即敗北に繋がるためだ。
静かに、そして力強く彼女が警戒している理由がその姿を現す。
『こ、これは驚きです! シューティングスターズの陣地から放たれる砲撃の数が倍になりました! 一体これはどういうことなのでしょうか!』
『きゃ~すごい~。写真に取らないと~』
「ありゃ……予想よりずっと早いね。アリスちゃんをもう入れちゃうのか。あおちゃん、本陣突入分はお願い。和哉くんも準備を『さなえん、フォワードに連絡』っとこれで全部かな?」
「ご苦労様です。これは誘ってますかね?」
「うん、アリスちゃんが居れば数の差で必ず被害が出るからね。万全なら遠さないけど、いくら私でもハンナとハンナに近いクラスはきついかな」
「攻撃を誘って一網打尽ってところを狙ってますかね?」
「可能性は高そうだけど、どうだろう? ちょっと読み切るには材料が少ないから結局突いてみることになるかな」
真由美は本陣で砲撃群を相手にする傍らで今後の流れを予想する。
1番あり得る方向性としては和哉のものだろう。
相手の動きが明らかにこちらの攻撃を誘っている。
だが、逆に怪しい部分もあった。
基本的に前衛の個別の力量はこちらが上なのだ。
チームのでの動きを前提としているシューティングスターズに劣る部分など個人単位なら得手不得手はあれど負けてはいない。
「長くなりそうだね」
「はい」
読み切れない思惑、相手の実力とその戦術。
面白い勝負になりそうだ、と真由美は好戦的な笑みを浮かべ唇を少し舐めるのだった。
「お達しが来たわ、まずは私たちで突入して様子を見るってことよ。戦闘は私で行くわ。優香ちゃんは単独行動でお願い、速度差がある状態で団体行動するとその速度が潰されちゃうから」
「わかりました、皆さんご武運を」
フォワードとしての役割を振られた彼らは行動を開始する。
相手側に攻撃を誘導されていることに僅かな不快感を感じつつも任務は完璧に遂行する。
「罠があるならそれごと砕く、それぐらいの気概でお願い。圭吾くんは周囲の警戒を密にお願いね」
「任せてください」
幾度目になるのか、砲撃と砲撃が相殺しあった間隙をつく形で4人は空を舞う。
「目的は本陣です! 突入後は細かい違和感に気をつけてね!」
『はい!』
「いくわよ!」
シューティングスターズ第2陣地、海上陣地を九条優香が強襲する。
いや、本陣前の砲撃群を避けると必然的に迂回することになる。
そして攻撃を仕掛けた優香は思わぬ相手と出会っていた。
「申し訳ありませんが、あなたはここで拘束させてもらいますよ」
「サラさん、どうして……」
事前の予想では本陣にいると考えれていた相手が何故か1人で陣地にいる。
しかも最悪なことに相性がもっとも悪い優香がそこに噛み合ってしまった。
「反対側にはヴィエラたちがいますよ。これで私たちの作戦はわかるでしょう? こちらに残るのは8名。残りは全員そちらに進攻してますよ」
「っ、足止め!?」
「ご賢察です。私は足止めも得意ですので今回はこの立場になりました。当然こんな風におしゃべりしてる間に念話は封鎖していますので悪しからず」
優香が攻撃側に入ることは予想されていたことだろう。
その後にどちらに攻めるかは運だ。
2択でサラが勝ち取ったのだ、この展開を。
だが、優香も初めて彼女と戦った時とは違う。
「あの時と……同じだと思わないで下さい」
「それはそちらにもお返しますよ。私もいつまでも壁だけというわけではありません。わかりやすいヒントをくれた方もいますからね」
「行きます!」
「どうぞ、後で本気を隠していたなどと言うことはないように本気で来てくださいね?」
「っ、はああ!!」
烈火の気迫と共に優香はサラとの戦闘を開始する。
戦いの幕が切って下ろされたのはここだけではない。
彼女たちが切り結び始めたのと同じころ、ほぼ全ての陣地で戦いが始まっていた。
『両チーム1歩も引かない熱い戦い! 各陣地では既に攻略戦が開始されています! 本陣では物凄い火力の応酬、ハンナとアリスによる流星群が相手を蹂躙する。しかしクォークオブフェイトも負けていません。『破星』と『凶星』のタッグがなんとか攻撃を防いでいます! 戦況は僅かにシューティングスターズの有利と言ったところでしょうか!!』
『サブ陣地も激戦です~。『鉄壁』対『閃光』が海上陣地1で、陸上陣地1では巨兵たちが戦士の進攻を妨げています~』
『クォークオブフェイト側の陣地は数で押されています! 特に1年生の佐藤選手が守る陣には3人も攻め込んでいます! 彼は陣地を守り切ることができるのか!』
「現状把握に役に立ったよ、ありがとさん!」
健輔は舌打ちと共に鬱憤をぶつけるかの如く軽口を放つ。
古の昔から戦場における最大の力とは数であった。
魔導師の戦闘においてもその鉄則は変わらない。
勿論、一握りのエースはそういった状況でもなんとかするだけの力を持っている。
しかし、彼はエースではないのだ。
端的に言ってこの状況はよろしくなかった。
「諦めるわけにもいかないけどな!」
相手側から放たれた牽制の射撃を避ける。
健輔の体勢が崩れたその隙を見計らって相手の前衛が切りかかってくる。
「ちぃ!」
カン、と魔導機同士がぶつかる音が周囲に響き渡る。
呑気に鍔迫り合いなどしてる余裕はないのだ。
なぜなら――
「もう1人! そして射撃! シルエットチェンジ!」
『了解』
正面にいる相手に蹴りをお見舞いして距離を離す。
咄嗟に考えた回避方法だったがうまくいった。
仕切り直すわけではないが時間が稼げる。
健輔は情報を整理する。
今考えることは目の前の相手を打破すること――ではなく。
どれだけ拘束することができるのか、である。
真由美は撃破ではなく足止めを命じてきた。
そこには必ず理由があるのだ。
だから、健輔は少しでも長く相手と戦わなければならない。
そして、その上で生き残れという無茶ぶりをされているのだ。
「ふふ、ふふふはははっは」
信じてなければこんな役割を託しはしない。
近藤真由美のその辺りの判断はシビアだ。
情で勝敗が低くなるような采配はしない。
つまり、健輔が3人相手に粘るのが1番勝率が高いと思ってくれたということである。
「だったら、その信頼には答えないとダメだろう」
状況は悪い。
まずはそこから想定していけばいい。
相手は前衛が2後衛が1のバランスが取れた編成だ。
その上慎重でもある。
今得られた情報はこの程度でしかない。
「仕掛けるしかないか」
せめて系統がわからないとやりづらいことこの上ない。
こういう時、相手が慎重派なのは助かる。
早めに健輔を落とそうと無理をしてこないからだ。
蹴りと同時に外に弾かれた振りをして時間稼ぎを行ったがうまくいった。
相手はフラッグを確保して、タイムカウントを始めている。
不足の事態に備えて1分だけ残しておけば2分は外に出ていい。
今回は30秒程使ったようだが。
「まずは1射!! モードM!」
砲撃形態を取って相手の後衛を狙う。
うまくいけばダメージぐらいは取れるだろう。
余裕そうな笑みを顔に浮かべて健輔は相手を挑発する準備をしておく。
(さて、次はどうしようかな)
こちらに気付いて慌てて向かってくる2人の前衛に対しての対策を考えながら、健輔はチャージした砲撃をプレゼントするのだった。
『フレッド選手、ライフ70%! 佐藤選手が陣地に戻ったことでカウントが停止します。3対1という状況で離脱ではなく死守を選ぶとは、余程自信があるのでしょうか!』
『頑張れ~』
『ちょ、ダメだよ! そういうのは実況でやったらダメなの!』
『え~? どうして~? テレビの人とかは頑張れ日本って言ってるじゃない~』
『私たちは審判も兼ねてるから、中立だからね!』
『なっちゃん、怒らないで~ごめんなさい~』
「彼女たちは漫才でもしに来たのか?」
やれやれと言った感じで隆志は戦場を俯瞰する。
海上陣地を守る真希と隆志は2対4と倍の戦力を相手にすることになっていた
そしてこの陣地での戦局はそのまま全体の勝敗に影響するほど重要な局面となっている。
戦力比のバランスから言って逆転の可能性が1番高いのがここだからである。
攻め込んだメンツはそれぞれあまり相性が良くない相手に拘束されてしまっている。
妃里たちの中から突破するものが出る可能性はあるが妃里以外のものではハンナに勝てない。
相手の本陣に生まれた隙を突いて真由美が何かをするかもしれないがそこは隆志としては指示を待つしかない。
健輔は言わずもがな、耐えるので精いっぱいだろう。
「これは困ったな。俺は決定力に欠けるんだがな」
相手の斬撃を軽く往なして、口元には皮肉下な笑みを浮かべておく。
これだけで相手は簡単に激昂してくれる。
冷静な相手でもいらっとしたもの程度は感じるものだ。
そういった細かな積み重ねいざという時に重要になる。
「うおおお!」
「ふむ」
相手の渾身の1撃を無視する。
後衛の直撃弾は魔力弾でも創造してとりあえず投げておく。
「どうしたんだ? 早く倒さんとそっちも厳しいだろう?」
「っ、舐めるな!」
挑発に乗った相手は攻撃が単調になる。
葵に言わせれば眼鏡をかけたインテリ風味のイケメンが鼻で笑ってこちらを見下す様が死ぬほどむかつくとのことだった。
隆志としては意識してやってるわけではないがいつも間にかそんな態度が染み付いていた。
相手の攻撃を余裕が雰囲気で避け続ける。
後のことは自分の仕事ではないからだ。
「さて、早めに頼むぞ真希」
『まあ、頑張りますよ』
海中で身を潜めるスナイパーはたまにこちらを探るように放たれる攻撃を細心の注意を払って避けていた。
水中行動用の術式を無理を言って組んでもらってよかった、と真希は笑う。
後衛らしからぬ戦い方と言われる彼女の戦法はあまり効率が良くない。
隆志のように挑発に長けた上で技量がある前衛を必要とするためだ。
意識の間隙を突く彼女の狙撃は強力だが、そうと知られていれば脅威のレベルは明確に落ちる。
それでもなんとかするのが腕の見せ所だが、やはり互角の技量相手にはきついものがあった。
『先輩、1度いきます。その後は念話を切りますからこちらから再度連絡するまで待って下さい』
『わかった』
狙撃を行うと同時に相手の攻撃を呼び込むだろうが、いつまでも隠れているわけにはいかない。
ここいらで戦局を動かさないとジリ貧だ。
『さて、ごめんよ。リリーちゃん』
敵の前衛の1人に狙いを定めて、銃型の魔導機の引き金に指をかける。
相手の攻守切り替えのタイミングはもうわかっている。後は――
『リリー選手、ライフ0%! 本陣に転送されます! 1人落ちましたがこれで状況が動き出すのか! ……いや、これは! 石山選手撃墜! 佐竹選手撃墜! 巨人の猛攻を防ぎきれなかった! 残った高島選手も流石に厳しい!』
『どっちも負けるな~』
「真希ちゃんは頑張ってくれたけどこれは不味いね。妃里、何があったの?」
「あの子たちを甘くみたわ。2人で1人のゴーレム奏者なのよ。1人の時とはレベルが違ったわ。ゴーレムに機敏な動作をさせたり、一気に数を増やしたりいろいろやられてね。剛志君が圭吾を庇ってくれなかったら3人一緒だったかも」
「……っ、これは……ちょっとやばいかな」
額から汗を流しながら真由美は独白する。
状況がかなり向こう側に傾いていた。
葵を動かして状況を変えることもできるがそれは本陣が全滅しかねない大博打だ。
復活権があるため1度は博打も打てるが決定打にならない。
状況をイーブンに戻すための博打などあまり打ちたくないのだ。
「さなえん、2人が戻れるまでの時間は?」
『サポートしながらだ。3分は貰うことになる』
「これは……個々に頑張って貰わないとダメみたいだね」
ハンナたちは攻め所と判断したのだろう。
敵側からの砲撃数が一気に倍になる。
今までなんとか拮抗した状態だったが、これは危険だ。
真由美がオーバーヒートする覚悟で迎え撃つ必要があった。
「お兄ちゃん、圭吾君、真希ちゃん、健ちゃん、優香ちゃん」
彼らを信じるしかない。
どこかが完全に崩れたら負ける。
「あおちゃん、和哉君、迎撃するよ!!」
「任せて!」
「精いっぱいやりますよ」
本陣が相手の猛攻にひたすら耐え忍んでいるとき、各方面も新たな局面に突入しようとしていた。
『加速する本陣の打ち合い! 勝利の女神がどちらに微笑むのでしょうか! 激しい乱戦があちらこちら繰り広げられています!』
『あ~、大変です~。海上陣地2がシューティングスターズの1人を残して全滅です~。3分間のカウントダウンが始まります~』
「マジか!?」
健輔は激変する戦況に声を上げる。
突然起こった2:2の交換、一体何が起こったのか健輔には直ぐわかった。
間違いなく彼の十八番だろう。
この状況ならその選択肢は大いにあり、だ。
仮に健輔が相手側なら迷わず実行する。
何せ陣地の陥落を阻止のために送り込める人材がいない。
防ごうと思えば貴重な復活権を使う必要がある。
相手のリソースを削るという意味ではどちらを選んでもハンナたちが有利になる。
「クソ! 1:1の交換もレートがいいよな!?」
道理で先程からこちらを拘束しようとするわけである。
いやな予感がしたため、一切組み合わないで逃げ続けた甲斐があった。
交戦を開始して軽く10分経っているが健輔はよく逃げ続けていた。
相手の系統は前衛が収束・創造系の火力型、後衛はおそらく創造と遠距離の組み合わせだろうと予想している。
速度型はおそらく隆志たちの方に振り分けられたのだろう。
おかげでなんとか逃げることができている。
「こうなったら仕方ないか!」
恐らく真由美は1人分回復させる、それは妃里になるだろう。
だがそれはイーブンに状況を戻すだけだ。
攻めるにはもう1手いる。
「シルエットモード『ラッセル姉妹』!!」
創造を2、操作系、収束系を1つずつセットする。
これより健輔は巨人になる。
「まずは1発!」
追いかけていた相手が突然石の巨人になったのだ。
相手が驚いている隙をついて拳をプレゼントする。
大質量攻撃は一気に掃討することはできないが防ぐことが困難な攻撃だ。
4系統を同時に操れる時間はおよそ7分。
それを過ぎれば5分は冷却時間が必要になる。
「ここで3人片づける!!」
『健輔、そのまま聞け。真由美が2人を一気に復活させて両側に2人を回した。お前は隆志が到着したら直ぐに前線へと向かえ、いいな』
「っ!」
早奈恵からの念話は真由美が博打を打つことを決めたという内容だった。
ゴーレムの中に隠れているおかげで表情を悟られずにすんだのは幸いだった。
そうでなければ相手も何かを感づいたかもしれない。
しかし、この状況で攻勢と選んだと言う事は状況は余程悪いという認識で間違っていないようだ。
とりあえず、ここは1人だけでも削っておくべきだ。
「そういう訳だから申し訳ないアレックスさん」
相手チームの3年男子で大和撫子が好きだと言っていたアレックス。
女性の好みが被っていて意気投合したのだが、敵となってしまった今は仕方のないことだった。
ゴーレムの拳に掴んだ彼を握り込んだまま地面に投げつける。
障壁で防いだようが、もう遅い。
彼の味方たちは突然ジャンプした巨人にあっけに取られながら、アレックスがそのボディの下敷きになるのを見届けるしかなかった。
『アレックス選手、戦闘不能! 本陣に転送されます! 巨人によるフライングボディプレス、威力はご覧の通りです! 私は喰らいたくない!』
『こ、怖いわ~あんなの落石と同じじゃない~。いや~なっちゃん、手を握っていて~』
『今は仕事中だよ!?』
「美咲、お前は佐藤の術式を支援してくれ、あいつなら相手の陣で固定式を使えば念話の封鎖を突破できるはずだ、あちらの支援術式を潰すこともな」
「わかりました。念話を最優先で回復させます」
「香奈、こちらのやつらの術式はお前に全て任せる。抜かるなよ?」
「誰に言ってるんですか。香奈ちゃんを舐めないで下さいな」
「私はアタックに集中する。敵のラインを切断しないとな」
目まぐるしく変わる前線の状況に合わせてバックスたちも次々と手を打っていく。
攻勢に合わせたシフトに変更しつつ、敵の支援ライン切断に主眼を置く。
相手の連携が妙にうまい。
こちらの念話封鎖を突破されている可能があった。
ここまで不利になった一因は間違いなくそこにある。
「鍛えすぎたか? ここまでうまく連携されると予想だにしない方法でやってきてる可能性があるな」
「ですね、ちょっと自爆のタイミングとか良過ぎでしたし。現場の判断かもしれないですけど、それにしてもタイミングどんぴしゃ過ぎます」
「こちらの陣なのにここまでうまく支援がきているのも変です。隆志さんが苦戦したのもそれがあったためかと。こちらの支援はうまくいかないのにあっちは全て素通し、ありえないです」
後輩たちの意見から早奈恵は自分の違和感が正しいことを確信した。
相手はどうやってかわからないが支援をうまいこと連携させている。
相手に進攻している優香と圭吾の状態もわからないほどに遮断されているのに、こちらに攻めてきた相手は十全の支援を受けている。
その差がダイレクトに前線にまで出ているせいで押されている。
「……もしかしてだ。魔力の波形を完全に遮断すれば妨害も容易いのではないか?」
「そりゃ、自分たちの無線ごと帯域全部潰すみたいなものですから妨害というか、封鎖は完璧だと思いますよ。でもそれって、自分たちの支援も潰してるじゃないですか」
「いいえ、早奈恵さんの予想あってるかもしれないですよ。無線の支援だけできないようにしたんじゃないですか? 見えないように偽装してラインを繋げれば有線支援でいけます」
早奈恵が考えた不調の原因に2人が予測を重ねてくる。
現在の状況は相手が好調でこちらが絶不調というものだ、相手の予想位置計測、障壁の補佐、念話の開通とあらゆるサポートが行えないように潰されている。
「ふむ、美咲の言うとおりだな。そっちで探ってみよう。もしかしたら特定の相手だけラインを繋いでいる可能性もあるからな」
「ハブ的な感じで、ですか? うわ、それはありそう。端から勝負するつもりなかったってことか……潔すぎるでしょ」
「まだ確定ではない、それよりも支援をしっかりとやれ。10程度の同時制御に根を上げたら秋の試合に出場させんぞ」
「10ぐらい、じゃなくて10もですよ。早奈恵さんの基準はおかしいですから!」
「なんというスパルタ……間違いなくブラックだよ……」
ギャーギャーと抗議の声を上げる後輩を無視して早奈恵は集中を行う。
用心深く隠してあるだろう相手の補給線を潰さなくてはならない。
決して華やかではないが、重要な戦いがそこにはあった。
「流石です、高島様。ここまで粘られるなんて予想外ですわ」
「すごいわ、こんなに戦ったの初めてかも!」
双子の美しい姉妹が感嘆の声を漏らす。
事実、圭吾の粘りは驚異的なものだった。
1人になってからただひたすらに囲んでいる巨人の攻撃を逸らし続ける。
「私、ゴーレムの奏者としてはそれなりに自信があったのですが、あなた様の糸裁きには目を奪われましたよ」
「それは光栄だよ、お嬢様」
会話を行う最中も油断は無い。
彼女たちはお互いを補い合う系統だ。
ゴーレムを作る姉と操る妹。
振り分けられた役割は究極的にはそれだけだ。
シンプルな構造は簡単には突き崩せない。
ヴィオラの見事な操作も目を見張るだけのものがあるが、ヴィエラの多彩なゴーレム創造も同じく見事なものだった。
今までゴーレムと言うのは質量に優り単純な防御力と攻撃力に優れるが機動力は劣悪なものだった。
それをずんぐりとした形ではなく獣を模した姿などにすることで解決している。
ヴィエラの形とヴィオラの操作が1つになることで強力な選手となる。
「これは……きついね……」
理屈は簡単だがだからこそ彼女たちは凄かった。
獣の精巧にイメージを行い、さらにはそれを簡単に大量に生み出す。
「そしてヴィオラちゃんも凄い、と。さっきから凄いって思ってばかりだよ」
獣のゴーレムを獣のように動かす。
同じ操作系だから断言できるがどんなイメージ力があれば実行できるのか皆目見当もつかなかった。
それだけ素晴らしい操作だからこそ、ちょろっと歯車を乱しただけで粘ることができたのでもあるが。
しかし、それももう限界だ。
圭吾のライフはちみちみと削られて今は30%程しかない。
「これで終幕です」
「終わりですわ」
異口同音、声も似ている少女たちの最後通牒が聞こえる。
身体は咄嗟に防御に動くがもう遅かった。
正面には狼を模したゴーレムが3体、獲物に飛びかかるような機敏な動作でこちらに噛みつこうとしている。
背後にはライオンを模したゴーレムがその威容に相応しく王者のように前足を叩けつけようしている。
高島圭吾の系統にこれを防ぐ手段は存在しない。
だから、ここを切り抜けるには彼以外の存在が必要だ。
「楽しそうなところ申し訳ないが俺も混ぜてくれないか」
圭吾にとっては聞き覚えのある声が周囲に響き渡る。
声が聞こえると同時に圭吾は全力で後ろに飛ぶ。
今までは空を飛んでも無数のゴーレムによる投石を避け切れない上に、相手の本陣から援護もあるため地上に張り付いていた。
だから空という安全地帯を活用できなかったのだ。
しかし、今は違う。
謎の声と同時に閃光が圭吾の視界を埋め尽くす。
魔導砲撃――ゴーレムの天敵である。
「陣地の守り手がこんなところに居ていいのかい?」
「今は失業中だ。よかったら何でも屋を1人雇わないか? 安くしとくぞ」
頼もしい親友のおかげか燃え尽きようとしていた圭吾の闘志に再び火が灯る。
「落とすなら」
「ヴィオラからだろ? 彼女がいなければ威力は半減だ。わかってるよ」
ここからは時間が敵となる。
戦いは新たな局面へと動き始めた。
人形使いの姉妹と凸凹親友タッグどちらの絆が優るのか。
「よっしゃ行くぞ!」
『気を付けて、かなりやり手の操作系だよ。妃里さんたちが居た時は8体でこちらを相手していたけど、僕が1人になってからは6体になってた多分』
『そこが無理していけるラインか……サンキュー』
健輔が動く。
先程消し飛ばした1体を除けばゴーレムは5体。
おそらくヴィオラが余裕を持って操作できるのが6体あたりなのだろう。
圭吾の情報を合わせれば大体相手の全力は予測できる。
ゴーレムは強いが爆発力には欠ける。
一気に相手を潰すには人間は小さすぎるのだ。
健輔は魔導機の先端をヴィオラに向ける。
あの2人は共に行動することでゴーレム系の最大の弱点である術者本人をうまくカバーし合っている。
圧縮は多少雑で構わない、来る途中なるべく節約しながらやってきたが焼け石に水としか言いようがなかった。
収束2、遠距離1の3系統で戦闘を行う。
だが、この距離ならば問題ない。
「これでもくらえ!!」
「お姉さま!」
「ヴィオラ!!」
健輔は砲撃を打ち込む。
ゴーレムが2体は壁となり残りは健輔を叩き落とそうとジャンプしていた。
ヴィエラは新しいゴーレムを創造しようとしているらしく都合4体分程の壁が控えていることになるが生憎と相手が悪かった。
万能系の使い手たる健輔は全系統の使い勝手を身を持って体験している。
つまり、その限界も大体想像が付くのだ。
「止められるかよ!」
「っ……間に合わない。ヴィオラ!」
「お姉さまは早くゴーレムを!」
消し飛ばされるゴーレム。
補充をヴィエラが急ぐが間に合うものではない。
健輔は空から砲撃を続けるだけで終わる。
魔導戦闘は相性こそが最も重要な要素である、これは変わらない事実だ。
ヴィエラとヴィオラのコンビは強かったが相性が悪い相手に粘れる程の経験はない。
まして空中砲台はもっとも相性が悪い。
ゴーレムは1撃で消し飛ばされる上に攻撃は届かない。
勿論、落石を作って投げつけたりとまったく方法がないわけではない。
「お姉さま! お願いします!」
「わかったわ、ヴィオラ!」
激変した状況に合わせてヴィエラが切り札を創造する。
通常ゴーレムの全長15メートル程に対して優に3倍はある巨人が立ちあがる。
量ではなく質での攻撃に切り替えてきたのだ。
「それも予想通りだ! シルエットモード! 『杉崎和哉』!」
『了解』
創造・遠距離系。
いろいろと小回りが利く系統の組み合わせを選ぶ。
少女たちがド派手な健輔の攻撃に集中して大型に切り替えてきたということは、もう1人に対しての警戒が緩んでいるというでことだ。
満身創痍の圭吾にそこまで集中を払わなくてもいいのは事実だったが、戦う相手が万能系であるということがすっかりと抜けている。
戦法の多彩さで万能系と競って他の系統が勝てるわけがない。
「力押しにもこのデカ物は向いてないぞ! 拠点攻撃用か? 焦り過ぎだぞ!」
「魔力弾!? 小細工です!」
ヴィオラが魔力の糸で放たれた魔力弾を迎撃する。
左手でゴーレムを操り、右手でこちらの攻撃に対処する。
「そこ!」
「甘い! 次々いくぞ!!」
手のひらに魔力を集めて、威力度外視で魔力球を大量に創造する。
出来た端から相手に投げつける。
単純だが無視できない。
狙い通り巨人はこちらを捉えるのに苦労している。
「圭吾!」
「わかってるよ!」
「お姉さま!」
「わ、わかってます!」
圭吾の左手から束ねられた糸がヴィエラ目掛けて放たれる。
咄嗟に展開された障壁でヴィエラはなんとかそれを凌いだように見える。
障壁に圭吾が放った渾身の攻撃は防がれてしまい、決定打にならない。
大巨人はまだ残っており、彼女たちは決定的に不利なわけではないのだ。
「まだ終わっていません!」
反撃に出ようとヴィオラが左手でゴーレムを操作しようと魔力を伝達した時に違和感に気付く。
動きが鈍い、彼女の精密な操作イメージを伝導し切れていない。
このタイミングで今までうまくいっていたものが失敗する理由など1つしかない。
「右!」
「正解」
圭吾の右手から伸びた糸がヴィオラの左手の糸を絡め取っている。
姉は障壁を展開しているため、動きが取れない。
ゴーレムはうまく動かせない。
右手は健輔の攻撃を迎撃しているだけだ。
つまり――行動の自由を得ている人物が1人だけ存在していることになる。
「しま――」
最後まで言い切ることはなく放たれた閃光が彼女たちを飲み込む。
『ヴィオラ選手撃墜! ヴィエラ選手、ライフ70%で残りましたが、追撃が入ります! ライフ0%』
『痛そうです~。でも、状況が動きました~』
『佐藤選手、本陣へと突入。高島選手はフィールド確保に動きます。石山選手、近藤隆志選手はサブ陣地で敵の残りと交戦中です』
『リリー選手と少し遅れて、佐竹選手がフィールドに復帰します~』
「流石、健輔さんですか。あの2人じゃ持ちませんでしたか」
サラと優香の戦いは続いていた。
優香が攻めて、サラが守る。
かつての戦いの焼き直し、違う部分は1つだけ。
「爆破します!」
「っ、きゃ」
爆発の余波で優香が吹き飛ばされる。
それは自爆を見て思いついたサラの新しい戦い方だった。
障壁を爆破する、やっていることはただそれだけだ。
「これで多少は攻撃も補えるようになりましたよ」
瞬間的に数十の障壁を展開できる彼女にとってこれぐらいのリソースは負担にすらならない。
しかし、問題が全くないわけでもなかった。
「やはり大したダメージになりませんか」
「離れればすみますから、その程度は脅威になりません」
ほとんど無傷の優香を見て溜息を吐く。
サラは2つ名を持つ歴戦の魔導師だ。
だからこそ少しづつ自分たちの手から勝利が離れて行っているような不吉な前兆を感じ取っていた。
葵と真由美を本陣に釘付けした代わりにハンナとアリスも身動きが取れない。
その代償を払ってもこちらの人数で押した選択肢が間違っていたとは思わない。
計算違い、最大の誤算となったのものはは1つしかない。
攻勢に出た段階でどちらかの陣地は落ちているはずだったのだ。
「まだ想定が甘かったみたいです。隆志さんではなく健輔さんを4人で相手するように、さらには早急に自爆してもいいから潰すように進言するべきでした」
目の前で天井知らずに魔力を高める優香を相手に独白する。
優香は彼女の2つ名『蒼い閃光』に相応しい姿に変わっていく。
過剰適合を起こしているのだろう。
普段は魔力で水色に染まっているように見えるだけの髪が本当に水色に変わっていく。
髪の毛は魔力光の影響を受けやすいため、毛先が変色することはあるがこの短時間で全てが染まるなど尋常な現象ではない。
瞳の色も僅かながら変わっているように見えた。
「番外能力――あの日見たのは短時間だからですか……もはや、その状態は変生と言っていいですよ」
「1週間、真由美さんにお付き合いいただいてようやくマシになりました。これが私の本気です」
水色の髪、蒼く澄んだ瞳。
噴き出すオーラのような魔力光。
かつて健輔が優香を戦乙女とある意味で的確な表現だったと言えるだろう。
神秘的な雰囲気さえ感じさせる優香の真なる姿。
優香の過剰収束能力は魔力との親和性が良すぎる故に起こっている現象である。
肉体が彼女の魔力に最も適合したのがあの姿なのだ。
「あまり時間がありません。3分持てばいい方ですので――早めに終わらせます」
魔導機がカウントダウンを行っているのだろう。
180秒と表示されたカウンターが物凄い勢いで減っている。
「簡単に突破できると思っているなら心外ですよ」
「……行きます『雪風』」
『ブレードフォーム展開します』
それまで両手で構えていた魔導機が2つに分かれる。
2刀流、バトルスタイルすら大きく変化するということなのだろう。
魔力の爆発と共に、優香の姿が消える。
「っ……速い!」
全方位に障壁を展開してサラは防御を行う。
しかし、それはこの姿の優香には通じなかった。
風切り音が聞こえ振り返るとそこには砕かれた障壁と彼女の残像しかなかった。
サラ最低でも常に10枚は同時展開している障壁が1撃で粉砕された。
「これは――」
「貰いました!」
頭上からの声に従い、全力で障壁を展開する。
後先考えない全力防御。
僅かでも時間を稼がないとこれはまずい、サラの直感が彼女に警告を発する。
50は展開した障壁が半数破壊される。
「半分残れば!」
残りの障壁を一斉に起爆する。
かなりの衝撃になるが後のことを考えている余裕はない。
サラと優香を巻き込んだ大きな爆発が2人の間で起こる。
「ライフは……半分持っていかれましたか」
魔導機を確認するとライフが半減しているのが確認できた。
だが、それだけの払った価値は――、そこまで思考を巡らせた彼女がそれを見つけたのは偶然だった。
大きく爆発から逃れるように空に描かれた一筋の蒼い軌跡。
それがなんなのか理解するよりも先に答えが真下から叩き込まれる。
「終わりです」
「そんな――」
斬撃双閃――。
蒼き剣の2連撃が鉄壁を粉砕する。
剣が刻んでいたカウントは100秒を超えようという数字を示していた。
120秒を示した時、まるで幻だったかのように優香の姿が元に戻っていく。
落ちていくサラを見ながら1言彼女は呟いた。
「ごめんなさい、本当は2分ぐらいが限界なんです」
サラに短期決戦を強要するための小さな嘘。
それを告白して彼女はフラッグを勝ち取る。
両陣地陥落まで後少し、天秤は大きく傾いた。
『鉄壁が砕かれた! 蒼き戦乙女が双剣を持って切り裂く! 両サブ陣地が占拠されています、陥落まで陸上が1分を切りました。海上はまだ時間に余裕がありますが、これは間に合うのか!』
『きゃ~かっこいいわ~あの子、なんて名前なの、なっちゃん?』
『お願いだから仕事して、さっちゃん!』
「これは困ったわ。カード切り方を間違えたみたいね」
「姉さん……」
チームシューティングスターズ本陣。
健輔とリリーが攻防を行っている傍で姉妹は敵の本陣を狙い討つ。
状況は悪い。
復活したメンバー2人を優香の陣地に向かわせたが到着した時には向こうの増援もついているだろう。
相手側に攻め入った2人も粘ってくれているが妃里と隆志というベテラン魔導師相手に勝ち切れていなかった。
「前衛力不足、わかっていたけど今回は痛感するわね」
「で、でも私たちの火力があれば!」
「そうね、でも真由美と葵に対応されてしまったわ」
真由美と葵を釘付けにする。
間違っていなかったが正解でもなかった。
その2人を警戒しすぎてもっとも注意しないといけない人物を見誤った。
いや、真由美の作戦勝ちということなのだろう。
「戦術では私の負けね。定石以上のことができなかったわ。個性を織り込めなかった」
「ま、まだ負けてません!」
「ふふ、そうね、最後まで諦めずにいきましょう」
『陸上陣地陥落! これ以後チーム『クォークオブフェイト』にはボーナスとして回復効果が入るようになります!』
「作戦をシフトしましょう。攻めてる2人にはまだ念話はできる?」
『いけます! でも気付かれたみたいなので、そろそろラインを切られそうです。新しいやつを引き直してますのでもうしばらくはいけますが、今までほど簡単ではないです』
「OK、問題ないわ。これより全員復活まで本陣で耐えます。そっちの2人は悪いけど戦力を釘付けにして頂戴」
『わかりました!』
全員復活までは大体5分程だ。
それぐらいならまだ持つだろう。
向こうも全員復活しているだろうが少ない戦力で本陣に殴り込んでも確実に殴り負ける。
「アリス、気合を入れなさい。ここからが、本番よ」
「はい!! 任せてください!」
ハンナたちが決意を固めていた時、同じように真由美たちも決意を固めていた。
もっとも、種類は僅かに違うものだったが。
「それではこちらの作戦を伝達します。健ちゃんは予定通り、例のやつを展開しちゃってくださいな。本陣の方は私と和哉君で気合で守るんで」
『了解!!』
「ハンナは間違いなく本陣狙いにシフトするはずだよ。そのためには時間がいる。そのままにさせたら逆転される可能性は十分ある。――だからこっちが先に本陣を落とします」
『だからの間にかなりの数の単語が抜けているが、まあ構わん。今回はその作戦を採用したのだからな』
早奈恵の同意の言葉に頷き、真由美は宣言する。
「じゃあ、あおちゃん、行ってらっしゃい」
「はーい! 行ってきます!! これがあるから真由美さん大好きです! さあ、健輔! 私を呼びなさい!」
『うーす、ゲート展開します!』
健輔の言葉と共に転送ゲートが開かれる。
出口がある場所は敵、本陣前。
最前線にもっとも突破力に長けた前衛がいきなり現れる。
ハンナからすれば考える限り最悪の展開だろう。
『こ、これは! ゲートです、しかしバックスによる敵陣に対する転送はルールで禁止……万能系? な、なるほど、本人を起点とした出口の生成、それならば問題ありません!』
『きゃ~!! 葵さんよ~、凄くかっこいいわ~』
出口から飛びだしてきたその瞬間、葵は健輔と交戦中だった敵前衛を1人すぐさま沈める。
「ごめんなさいね」
轟音と共に唸り上げた拳は完璧な奇襲として相手に突き刺さる。
1撃――。
落ちていく相手に目もくれずに葵はハンナに向かって翔ける。
「健輔は妹ちゃん!」
「うっす」
本陣を狙っていた2人が向かってくる健輔たちに狙いを変える。
ここまで接近してしまえば、彼女たちの制圧力もうまくは使えない。
何よりハンナに比べて妹のアリスはやはり幾分荒い部分が目立った。
「真由美さんよりも温い!」
「っ、舐めないで!」
障壁を展開しつつ砲塔をこちらに向けてくる。
こちらを障壁ごと貫くつもりなのだろう。
そうはさせないと健輔はもっとも信頼する姿を借りる。
「シルエット発動!」
九条優香、と心の中で選択する。
砲撃を発射するタイミングを見計らって回避を行う。
健輔は驚いたような顔を見せるアリスに笑みを返しながら別の姿を引き出す。
拳が届く距離、目と鼻の先にいる相手を撃破するにはこれが1番最適だ。
『モード『藤田葵』』
「ふへ?」
妙に不吉な響きが籠った名前を聞いてアリスは不思議そうな顔を一瞬見せる。
拳に魔力を込めて腹に向かって1撃。
葵から伝授された必殺の腹パンがアリスを捉える。
ほぼ同じタイミングでハンナも本家を叩きこまれていた。
『ハンナ・キャンベル、アリス・キャンベル撃墜! 事前に撃破された3名が復活しましたのでカウントは生じませんが、これは決まったか!!』
『凄かったね~、なっちゃん』
この撃墜で勝負はほとんど決まり増援が到着したこともあり復活した端から撃破されたチームシューティングスターズは敗北することになった。
試合時間およそ40分。
夏の合宿はチームクォークオブフェイトの勝利で始まり、終わることになったのだった。




