~序章~
あの人に会いたい。
すれ違うだけでもいい。
その言葉が、私を動かしていた。
どれだけ走っただろうか。とうに限界は超えている。
しかし、私は走り続ける。
「確か、あの人はここのあたりに住んでいるはずだけれど・・・。」
あの人が住んでいたマンション。
部屋にいる気配はない。
「どこにいるの・・・?」
前の体だったら、こんなことなど、楽だったのに。
私はマンションを後にする。
その時だった。
救急車のサイレンが鳴り響いてきた。
私は音のするほうに向かって走る。
いったい誰かしら・・・?
若干嫌な予感がした。ザワリとするものを感じた。
救急車に追いつくと、そこは、スーパーマーケットの前。
私とあの人がであった、最初の場所。
買い物帰りのおばさんたちの声が聞こえる。
「残念ね」
「まだお若いのに」
「あんな無茶な走り方をするから、こうなったのよ」
「嫌だわ、このスーパー。もう行きたくない」
私は救急車に収納されていく人物を見た。
血だらけだが、顔ははっきりとわかる。
「嘘でしょ・・・?」
それは本当だった。
「ねえ、嘘なんでしょ?」
顔をつねる。
「痛い・・・」
嫌だ。
信じたくない。
あの人が、逝ってしまったなんて・・・。
深い闇に放り投げられた気分。
私の記憶が途切れる・・・。
小6の春咲恵琉です。
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