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母をたずねて三千年  作者: 三毛猫
第三話「ソトの村殺人事件~犯人はあたしだっ?!~」
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 えぴろーぐ

 大変申し訳ありません。6/20初回投稿版の「えぴろーぐ」を2013/06/30に加筆修正した結果、旧「えぴろーぐ」が「十、手をつないじゃった」と新「えぴろーぐ」に分割されています。

今回分は6/20版の旧「えぴろーぐ」の後半部分の微修正版となり、お話は進んでおりません。

 基本的な話の筋は変わっていませんので、6/30以前に6/20初回投稿版の旧「えぴろーぐ」を読まれた方はわざわざ読み直さなくても大丈夫ですが、ひとつ前の「十、手をつないじゃった」は大分書き足しているのでお暇な方は読みなおしていただけると幸いです。

「さて、落ち着いたようですから朝食を取りに参りましょうか」

 サークが指を鳴らすと、ぴくん、と寝たままのセナとティムが身体を振るわせた。

「あれ、そういやこれだけばたばた騒いでたのに、セナもティムも良く寝ていられるなって思ってたけど。サークなんかやってたんだ?」

「そちらのお二人にまでみぃ殿の素性を知らせるわけにもいかなかったので、今まで魔法で眠っていただいていたのですよ」

「そうなんだ?」

 んー? なんか忘れてる気がするけど。なんだっけ?

 ぼんやり考えていると、まだあたしの右手を握っていたみぃちゃんの声にならない声が聞こえてきた。

”使い魔の影族シエラなら、ロナさんの影の中で寝てるのです”

 あ、エバ忘れてた。どうもあの子っては妙に影が薄くて、ときどき意識からはずれちゃうんだよね。

 ……って、あれ使い魔?

”魔力がつながってるですよ? 契約してるです”

 あー、そうなの? なんかいつの間にかそういうことになっちゃってるわけ?

 はぁ。なんかもう、ここ数日で変なことばっかり巻き込まれて嫌になる。

”使い魔の管理は、しっかりお願いするです”

 あたしはとりあえず、自分の影からエバを引っ張り出してたたき起こした。

 それからまだ寝ぼけているセナとティムの二人もたたき起こし、「そういうことだから」とだけ言ってみぃちゃんのことに関して何も言わずに、ただ同行するということだけを告げた。

 セナはあくびをしながら「ふぅ~ん」とだけつぶやいて、特に何も言わなかった。ティムは「なんか、いつのまにかこのパーティ、女ばっかりになってねーか?」とだけぼやいた。

 エバはただ黙ってにこにこしていた。

 そういや、エバってみぃちゃんの首なしの身体見ちゃってたはずだけど、口止めとかしなくていいんだろうか?

 みぃちゃんをと見ると、無表情に微笑んでいた。

”さっきも言ったですけど、使い魔の管理はしっかりお願いするデス”

 みぃちゃん、また語尾がデスになってるーっ!?




「あ、そうだ。あんたたちに言っとくことがあったんだった」

 本当は昨日の夜、寝る前にでも言っておくつもりだったんだけど、なんやかんやとドタバタしてたから結局話をするヒマがなかったのだ。みんなそろってる丁度いい機会だから今のうちに言っておこう。

「……なんだぁ?」

 ティムがあくびをしながら伸びをした。

「今日のお昼ごろには、王都に着くと思うけど。ひとつだけお願いしておくね」

「今更なんの話なのかしらぁ?」

 もそもそと起き出して来たセナが、杖の一振りで寝巻きからいつもの黒いローブ姿に変わる。

「……王都で何があっても、あたしのこと助けようなんて思っちゃだめよ?」

 そんな間柄ではないことは百も承知の上で、念のために言っておく。

「どういう意味だ?」

「言葉通りよ。仮にあたしが王都で捕まったとしても。あんた達は何もしないでね、ってこと。どうせそんな義理も義務もないでしょう?」

「……まぁ確かにそうだが」

 ティムがどこか不満げにうなずいた。

「わたしは約束は破らないわ」

「一緒に死ぬなんて約束はしてないはずでしょう?」

「でも……約束は破らないわ。無実の罪、証明する」

 セナが口をとがらせる。

「まぁ、万が一の話だからね。正規の手段で証明してくれる分には頼らせてもらうけど。無理やりあたしを助け出すなんてことはしないでね、ってこと」

 あたしの言葉に、しぶしぶながらセナがうなずいた。

「まぁ、サークは言わずもがなよね」

 苦笑しながらサークを見ると、応えるようににやりと笑った。

「無駄なことはしない主義でして。マスターが不要とおっしゃるのでしたら、最後をきちんと見届けましょうか」

「みぃちゃんは……。そのときはサークについていけばいいわ」

 望みどおり、サークのマスターになればいい。

”……”

 おや、にこにこって笑わないの?

 心の中で意地悪に問いかけると。

「ロナさんが賞金首だなんて、今初めて知ったです……」

 複雑な顔でみぃちゃんがつぶやいた。






 色々話をしていたせいですっかり遅くなってしまった。

 そろって一階に下りると、どうやら朝は一般のお客は入れないようで、酒場はがらんとしていた。なんとはなしに、皆そろってひとつの丸テーブルに着くと、すぐに厨房の奥からフィアナさんがパンのいっぱい入った籠を持って出てきた。

「すぐに料理をお持ちしますね」

 フィアナさんは籠をテーブルの上に置くと、ぱたぱたと足音させて次々にスープやサラダの皿を運んで来た。そうして最後にフィアナさんが運んできたのは、チョコレートで出来た丸いタマゴのようなお菓子だった。

「これはお詫びとサービスです」

 そう言ってフィアナさんは、あたしたちの前にひとつづつチョコのタマゴを置いていった。

 どうやって作ったのか知らないが、かぶりつくと中は空っぽでほんとにタマゴみたいだった。

「……ん。なんか入ってたのです」

 ぱくりとひと口でチョコタマゴを口に入れたみぃちゃんが、ちょっと顔をしかめて何かを手のひらに吐き出した。

 それは、涙滴型の青みがかった透明の宝石のように見えた。

「あら、まさかそれ宝石かしらぁ?」

 セナが自分の分を手で割ってみたがハズレだったようだ。

「あら、当たりですよ。よかったですね!」

 水の入ったポットを片手にやって来たフィアナさんが、みぃちゃんのコップに水を注ぎながら微笑んだ。みぃちゃんはしばらく無言でその宝石を眺めていたけれど、突然ぱくりとまた口に入れてしまった。

「あー、みぃちゃん食べちゃダメじゃない!」

「……しょっぱいです。しょっぱいのです」

 みぃちゃんは、じーっとフィアナさんを見て、それからなぜか厨房の奥をみつめた。

「そう、なのですか」

 ただそうつぶやいて、みいちゃんは口に含んだ宝石をごくりと飲み込んでしまった。

「うわ、飲み込んじゃって大丈夫なの?」

「氷砂糖を加工したものですから、食べても大丈夫ですよ」

 フィアナさんが皿を片付けながら言った。

 あれ、でも、みぃちゃんしょっぱいって言ってたみたいだけど。岩塩と間違ってたりしない?

「ところでロナルド様、いつまでその格好をしてらっしゃるんですか?」

 フィアナさんがちょっと首を斜めにして言った。

「その格好もお似合いですけれど……もしかして、あの、女装、お好きなのでしょうか?」

「……あはは」

 あたしは笑ってごまかした。

 実際、フィアナさんってどこまで本当のことをわかってるのだろう。あたしのことを本気でロナルドの女装と思っているのか、それとも……。

 少し考えて、みぃちゃんがフィアナさんの推理を受け入れた以上、それに合わせておくべきだろうという結論に達した。しょうがないので部屋で再びティムの鎧を着込んで勇者様の格好になり、セナに幻影魔法をかけてもらうことにした。




「またのお越しをお待ちしております」

 笑顔で手を振るフィアナさんに見送られて。

 あたしたちは、再び王都へ向かって歩き始めた。

 こちらの都合で大幅に内容を修正してしまいすみませんでした。

 次が「もうひとつのえぴろーぐ(フィアナ)」の予定です。

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