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母をたずねて三千年  作者: 三毛猫
第三話「ソトの村殺人事件~犯人はあたしだっ?!~」
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 三、謎の少女も来ちゃった!

温泉回。ちょいエロご注意です。

 あいにく一人部屋は開いていなかったが、どーせあたしが金を出すわけではないのだからと二人部屋をとることにした。どうやら普段宿泊の客はあまりいないので、部屋の準備が出来ていないらしい。なんでも今は物置代わりにしていて、すぐに片付けることも出来ないんだとか。

 宿屋としては商売にあまり熱心でないのか、それともあくまで宿はオマケで一階の酒場がメインなのかもしれない。

 まぁ、何にしてもあたしは特に怪しまれることも無く部屋を取ることが出来たのだった。




 出すものを出してすっきりした後、新しく取った部屋でポーチの中の荷物を整理していると、遠慮がちに軽く部屋の戸を叩く音がした。

 誰だろう?

「どうぞ! 開いてますよ」

 あたしが声をかけると、扉が少し開いて宿の女将さんが顔をのぞかせた。

「おかみさん、何か御用ですか?」

 あたしが丁度荷物をまとめ終えて振り返ると、女将さんはちょっと気まずそうに微笑んで「お客さん、大変申し訳ないんですが……」と何か言いにくそうに言いよどんだ。

 ……まさか。あたしのことがばれたんじゃ?

 あたしがちょっと身を強張らせると、女将さんは「……相部屋をお願いできないでしょうか?」と言った。

「……えっ、あ……はい。別にかまいませんけれど」

 一応ほっとしたものの、下手に他人と関わるのはまずい。

 それに思わずうなずいちゃったけれど、食堂で相席くらいならともかく、宿で見知らぬ他人と相部屋なんて普通あまりやらないと思うんだけど。

 最初から雑魚寝が当たり前な寝る場所だけ提供する木賃宿であれば別だけれど、ここはきちんとした個室の宿だ。

 なのに相部屋だなんて、一体どういうことだろう?

「あの……?」

「よかった。いえね、女の子がひとりなんですけれど……他に部屋は開いてないし、馬小屋に寝かせるのも可哀想だし。断られたらどうしようかと思いましたよ」

 女将は胸のつっかえがなくなったのか、明るく笑った。

「なんでも親兄弟を探してあちこち旅してるそうでね、まだ子供だって言うのに健気なもんですよ」

 あたしが無理を言わなければその子はこの部屋に普通に泊まれていたはずなのだ。

 ……うーむ。自分の都合で二部屋も取っちゃって、なんだかごめんなさい。

「……無理を言って、すみませんです」

 女将さんのうしろからひょこりと顔を出してぺこりと頭を下げたのは、フィアナさんと同じくらいか、それより少し下くらいの年頃の女の子だった。

 どことなく異国風の不思議な装飾がぞろぞろとついた服を着て、顔は見えているものの頭にはフードを被っていて髪がほとんど見えない。何か宗教的な理由でもあるのだろうか。

「い、いえ、別にいいのよ」

 なるほど、こんな小さな女の子を部屋が無い等と放り出すことが出来なかったのか。

 あたしのせいで危うくこの子を馬小屋に寝せる所だったのかと思うと、こっそり謝りたいくらいである。

「じゃ、すみませんがよろしくお願いします。御代は食事分だけにさせていただきますので」

 女将さんはもう一度頭を下げ、部屋を出て行った。入れ替わりに女の子がとてとてと入ってくる。

「よろしく、お願いします」

 少女は小さく会釈して、ちょっと所在無げに部屋を見回した。

「あたしはロナよ。よろしくね」

 右手を差し出すと、女の子は少し首を傾げておずおずと右手を差し出した。

 あたしが彼女の手をしっかりと握ると、彼女はびっくりした様子であわててあたしの手を振りはらって手を引っ込めた。

「ごめんなさい? あたし何か悪いことしたかしら? え~っと……あなたのこと何と呼べばいいのかな」

「私は、みぃ、です。すみません、私が住んでいた所には手を握って挨拶する習慣が無いものですから……あの、ちょっと、びっくりしてしまって」

 彼女は顔を真っ赤にして頭を下げた。

 ……どこか辺境の少数民族の出身なのかしらね。

 言葉はしっかりとこの大陸の標準語を話しているが、服装といい、どこか異国の雰囲気があるなーと少女を見ながらそう思った。

 ずいぶんと慣れているように見えるんだけど。握手したことがないって言うのも変な感じ?

 みぃちゃんはじりじりと後ずさりながらあたしから距離をとり、それから開いている方のベッドの上に手に持った荷物を乗せて、ふうと息を吐いた。

「あのー、つかぬことをお聞きしますが、ロナさんは夜はぐっすり眠る方です?」

 ベッドによいしょと腰掛けたみじちゃんが、こちらを見つめて突然妙なことを聞いてきた。

「……え? まぁそうだと思うけど……それが何か?」

「ごめんなさい、ひとつお願いがあるんです。夜中、もし起きた時に窓が開いていても、閉めないでおいてくださいませんか?」

「……かまわないけど……どうして? まわりが荒野のこの辺りは、夜になるとぐっと冷え込むし、開けっ放しだと多分だいぶ寒そうな気がするんだけど?」

「すみません、少し、言い難い事情があるんです」

 そう言って小さく微笑んだみぃちゃんの顔には、年齢に見合わない妙に大人びた所があった。

「うん、わかった。何も聞かない」

 あたしにだって聞かれたくないことは多い。彼女にもそーいうことがあるのだろう。

「んじゃ、そーいうことでお風呂にでも行きましょ」

 あたしは荷物から着替えを引っ張り出した。

「え? お風呂です?」

 少し考えるようにして、それから彼女はふるふると首を横に振った。

「あの、私、他人に肌を見られるのが好きではないんです」

「……あらそうなの? じゃ、あたし今からお風呂はいってくるから、その間にお湯でももらってこの部屋で身体を拭いたらいいわ」

 セナもそろそろお風呂に行ってる頃だろうか。

「下に降りるついでにお湯たのんであげるから、ゆっくりしてて」

 あたしは小さく手を振って、部屋を出た。




 一階のカウンターにいた女将さんに、部屋にお湯を届けて欲しいとお願いしてから風呂場を目指す。なんでも地下の温泉を汲み上げて沸かし直しているというお風呂にちょっと期待が高まる。

 入り口の暖簾をくぐって脱衣所に入ると、手早く服を脱いで浴場に突入する。

 石畳の床に木製の風呂。それほど大きくはないが、十人くらいは入れそうだ。どうやら隣の男湯とは木の壁でさえぎられているだけで、湯船自体はつながっているようだった。白く濁った湯からは湯気が立ち上り、何人かすでにお湯に浸かっているお客がいた。

 泊り客はあたしたちだけみたいだったが、泊まりでなくてもお風呂は有料で一般に開放しているのだろう。

 洗い場でだいじな所を綺麗にしてから、さっそくひゃっはーと湯船に浸かる。

 おおう、にゅるっとしたお湯がなかなかいい感じだ。なんかお肌によさそう!

 じゃばじゃばとお湯で顔を洗うとずいぶんすっきりした。

「……そこのあなた。身体を洗ってから、お湯に浸かるのがマナーではないかしら?」

 声と同時に視線を感じて見回すと、セナがじと目でこちらを睨んでいた。メガネはかけていないようだ。

「ううー」

 せっかくいい気分になったとこだったのに。

 しかし確かに言われてみれば、荒野の埃まみれの身体でいきなりお湯に浸かってはお湯が汚れてしまう。手遅れな気がしないではないけれど、しぶしぶ立ち上がって洗い場に戻り、木桶を逆さにして座ると石鹸を出して身体をこすり始めた。

 玉のお肌、つやつやお肌、綺麗になーれ。

 おまじないをしながら、ハーブの入った薬用の石鹸をよーくお肌にすり込むようにする。

「ロナ、背中流そうか?」

「え? ああ、お願い」

 背後から声をかけられて肩越しに石鹸を渡すと、小さな柔らかい手が優しくあたしの背中をなでまわしてきた。

 ……おおう。なんかすっごく気持ちいい。

 香油の入った洗い液で髪を揉むように洗いながら、柔らかな手の感触に浸っていると、肩、背中とマッサージするかのように手はだんだん下に降りて行き、わき腹を回って不意にするりと前の方に。

「ふひゃぁ!」

 敏感なところに触れられて思わず声が出る。

「ま、前は自分で洗えるからいいわよっ!」

「そう言わずに。きもちいーでしょ?」

「うん、たしかに気持ちいいけど」

 いや、違う意味で気持ちよくなっちゃいそうって。あれ?

「……?」

 肩越しに振り返ると。

「どしたの、ロナ?」

 後ろからあたしの胸をやさしくマッサージしながら、エバがニコニコ微笑んでいた。

「えーーーーーっ?」

 な、なんでエバがここにっ?

「……あー。もしかしてロナもボクのこと男だと思ってた? セナにもさんざん驚かれたんだけどボク女の子だよ?」

 ほら、ついてないでしょと局部を指差されて、えー! とまた声をあげてしまう。

 ……確かにオンナノコだった。意外なことに、胸もちょっぴり膨らんでいた。

「だから、気にしないでボクにまかせちゃって」

「……え、うん?」

 オンナノコだったらいいのだろうか。何かおかしい気がするけれど。

 混乱して首を傾げていると。あたしの胸をやわやわと揉んでいた、その小さな手がすっと下の方に。

 ……って。

「そこはダメでしょっ!!」

 後頭部で背後のエバに頭突きすると、あいたーと洗い場にエバがころがった。目を回したらしく、大また開きで仰向けにひっくり返っている。

 ああ、もう。何がなんだか。

「そこの人たち、お風呂で騒がないように」

 ぴりっと小さな雷が石の床を打った。

 湯船からセナが指をこちらに向けていた。どうやら指輪の発動体を持ち込んでいるようだ。

 あたしはふぅ、とひとつ息を吐いて手早く石鹸の泡をお湯で流した。

 セナはメガネをかけていないので、どうもあたしだとはわかっていないらしい。まだ目を回しているエバを引きずって湯船に沈める。それからセナの隣に行き「あたしよ」と声をかける。

「……あら、どこの無作法者かとおもっていたらあなただったの」

 顔をしかめてキスでもするようにあたしの顔をのぞきこんだ後、セナは小さく鼻を鳴らした。

「いい年した大人がお風呂で騒ぐなんて。恥ずかしいわよ?」

「あれはエバが悪いのよ。あいつが変なところ洗おうとするから……。それよりこの後のことなんだけど」

「……お風呂上がったら、一階の酒場で。そろそろわたしのぼせそうだから、あがるわ」

 言いながらセナが立ち上がり、形のいい胸がぷるんとゆれた。

「幻影魔法のことなら、あとでいいものを用意しておくわ」

 ちいさくひらひらと手を振って、セナが浴場から出て行った。

「じゃ、後でね」

 それを見送って、ずぶずぶと鼻のあたりまで湯に沈みこむ。だらりと手足を伸ばして、半分湯に浮かぶようにする。

 はふう、と息を吐いてゆらゆら漂う。

 マナー、マナーってうるさいのいなくなったし。ちょっとくらいいいいよね。ぷかぷか身体を浮かべても。流石に泳いだりはしないけれど。

 ……胸が水面に出ないのがちょっと悲しい。

 いい気分で浸っていると。不意に違和感を感じてぎょっとした。

 足の間になんかいるっ!

「ろ~なぁ~ごぼごぼ」

 沈めたはずのエバがあたしの腰にしがみついていた。

 あんたはも一度沈んでなさいっ!

 無言で肘鉄を脳天に落としてやると、ぷかりとかわいいおしりが浮かんできた。

 この子どこまで本気なんだろう……。

 あたしは深くため息を吐いて、かわいいおしりをつんと指でつついた。

 元となる文章はもう少し(3000字ちょっと)あるのですが、旧仕様から設定の追加変更を行った結果、大部分が使えなくなってしまっています。

 このためこの後の文章書くのにかなり時間がかかりそうです。

 普通に数ヶ月放置する可能性がありますので、気長にお待ちくださいませ。

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