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必要なかった

作者: 噺 角蔵
掲載日:2025/10/25

 不要だった。

 あの時間、あの人、あの場所。私には必要なかった。

 今でこそそう思う。もしあの時、あの人達に出会わず、あの場所に行かずに過ごせていたら、今がどんなに満ち足りていたことだろう。


 私は人より遅くに就職した。だからか、40手前になってもまだまだ下っ端だし、正直学生気分が抜けていないとは言い難い。この歳なのに、だ。

 では何をしていたか。精神疾患を患い、ずっと就職出来ずにいたのだ。働くことには常にあこがれていた。自分の好きに体を、お金を動かせたらどれだけ毎日が満ち足りることだろう、どれだけ幸福度が高いだろうと、そう思っていた。

 現実では体が思うように動かず、家にいても外に出ても幻聴は聞こえてくる。いつも疲れていた。

 それでも何とか週4でデイケアなるものに通い、ウォーキングにて体力をつけ、今では週6勤務上等の体になっている。


 もしも、もしも私が大学卒業後すぐに働けていれば。もしも私が精神疾患を患わなければ。今が幸福でも、やはり悔やんでしまうのだ。

 だって、同い年の子に比べたら、手取りが少ないのだもの。年齢によって変わる好きなものが、私は満足に買えないのだもの。

 車も買えなければ、家も買えない。もっともっとお金が欲しい、稼ぎたい。

 もしも私がデイケアなんぞに通うことにならなければ。今頃もっともっと稼げたのに。

 それにだ、デイケアメンバーにももうこりごりだ。基本的に病んでる人しかいないから、面倒くさいのだ。今でも友達、なぁんて人は一人もいやしない。

 いい歳なのに、友達の友達にヤキモチを焼く女がいたり、急に約束をドタキャンしたりする奴もいる。

 そんな連中とは、金輪際関わりたくはない。


 あの時間もあの出会いも、全部取り消したい。私の人生から、まるっとなかったことにしたい。自分自身も面倒くさかった黒歴史。必要なかった。

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