必要なかった
不要だった。
あの時間、あの人、あの場所。私には必要なかった。
今でこそそう思う。もしあの時、あの人達に出会わず、あの場所に行かずに過ごせていたら、今がどんなに満ち足りていたことだろう。
私は人より遅くに就職した。だからか、40手前になってもまだまだ下っ端だし、正直学生気分が抜けていないとは言い難い。この歳なのに、だ。
では何をしていたか。精神疾患を患い、ずっと就職出来ずにいたのだ。働くことには常にあこがれていた。自分の好きに体を、お金を動かせたらどれだけ毎日が満ち足りることだろう、どれだけ幸福度が高いだろうと、そう思っていた。
現実では体が思うように動かず、家にいても外に出ても幻聴は聞こえてくる。いつも疲れていた。
それでも何とか週4でデイケアなるものに通い、ウォーキングにて体力をつけ、今では週6勤務上等の体になっている。
もしも、もしも私が大学卒業後すぐに働けていれば。もしも私が精神疾患を患わなければ。今が幸福でも、やはり悔やんでしまうのだ。
だって、同い年の子に比べたら、手取りが少ないのだもの。年齢によって変わる好きなものが、私は満足に買えないのだもの。
車も買えなければ、家も買えない。もっともっとお金が欲しい、稼ぎたい。
もしも私がデイケアなんぞに通うことにならなければ。今頃もっともっと稼げたのに。
それにだ、デイケアメンバーにももうこりごりだ。基本的に病んでる人しかいないから、面倒くさいのだ。今でも友達、なぁんて人は一人もいやしない。
いい歳なのに、友達の友達にヤキモチを焼く女がいたり、急に約束をドタキャンしたりする奴もいる。
そんな連中とは、金輪際関わりたくはない。
あの時間もあの出会いも、全部取り消したい。私の人生から、まるっとなかったことにしたい。自分自身も面倒くさかった黒歴史。必要なかった。




