表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【異世界転生言語学探求物語】転生美少女コハルの異世界言語ノート ~前世知識チート? いいえ、好奇心と足で稼ぐ地道なフィールドワークです!~  作者: 霧崎薫
第7章:始まりの香りと泉の秘密

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/27

第7章2節:謎掛けの答え合わせ

 神秘的な泉のほとりで、私たちはしばらくその不思議な香りと空気に浸っていたが、いつまでもこうしているわけにはいかない。謎掛けの答えを得た(と私は確信した)今、私たちは長老の元へ戻り、報告をする必要があった。


 「エルウィン様、リアン、ガルムさん。そろそろ里へ戻りましょう。長老に、私たちの考えをお伝えしませんと」

 私が声をかけると、エルウィンは名残惜しそうに泉から視線を外し、リアンも「もう行くのか?」と少し残念そうな顔をしたが、二人とも素直に頷いた。ガルムは、無言できびすを返し、帰り道を先導し始めた。彼の表情は硬いままだったが、私たちが泉に対して敬意を払ったことに、わずかな安堵の色が見えたような気もした。


 帰り道は、不思議と長く感じなかった。リアンは、行きのような鋭い感覚は働いていないようだったが、ガルムの的確な先導もあり、迷うことなく森狼族の集落へと戻ることができた。


 再び、長老の家。

 私たちは、厳かな雰囲気の漂う部屋で、長老と再び対峙した。長老は、私たちの帰還を静かに待っていたようだ。その表情からは、感情を読み取ることは難しい。


 「して、コハルよ。試練の結果は、どうであったかな?」

 長老が、静かに問いかける。

 私は、一歩前に進み出て、深呼吸を一つしてから、答えた。

 「はい、長老様。浅学非才の身ではございますが、私なりに考えた答えをお伝えいたします」

 私は、まず、謎掛けの言葉を一つ一つ解き明かしていった過程を説明した。「森の囁き」と「石の歌」が特定の条件を示し、「見えぬ道」がリアン君の特殊な感受性によって示されたこと。そして、その道の先に、清らかな香りに満ちた泉があったこと。


 「…そして、最後の問い、『始まりの香りとは、何か?』。その答えは、あの泉を満たしていた、あの香りそのものであると、私は考えます」

 私は、きっぱりとそう述べた。

 「あの香りは、言葉では言い表せない、生命の根源や、森の記憶、あるいは調和といったものを、私たちの心に直接感じさせる力を持っているように思えました。それは、理屈ではなく、魂で理解する『始まり』の感覚。だからこそ、『始まりの香り』と呼ばれるのではないでしょうか」


 私の答えを聞き終えても、長老はしばらくの間、黙ったままだった。部屋には、再び重い沈黙が訪れる。長老が、私の答えをどう判断するのか、固唾を飲んで見守る。エルウィンもリアンも、そして背後に控えるガルムも、息を詰めているのがわかった。


 やがて、長老は、ゆっくりと、本当にゆっくりと、その厳格な口元に、微かな笑みのようなものを浮かべた。それは、威厳を損なわない、ほんの僅かな表情の変化だったが、私たちには衝撃的だった。

 「…ふ、ふふ。まさか、人間の子に…いや、異界の魂を持つと言うべきか…それに、これほど早く辿り着かれるとはな」

 長老の声には、驚きと、そしてどこか面白がるような響きがあった。

 「見事だ、コハルよ。お前の答えは、我ら森狼族が代々受け継いできた、謎掛けの真髄に限りなく近い」


 長老の言葉に、私は安堵と共に、大きな喜びを感じた。私の考察は、間違っていなかったのだ。

 「では…!」

 「うむ。お前たちの知識欲と、そのリアンの持つ稀有な才は、本物と認めよう。約束通り、我らの里に滞在し、学ぶことを許す。ただし…」

 長老は、そこで言葉を切り、再び厳しい表情に戻った。

 「我らの言葉と文化の深奥に触れるには、まだ足りぬものがある。それは、この森への、そして我らへの、真の『信頼』だ」


 真の信頼。確かに、私たちはまだ、彼らにとって客人であり、警戒すべき対象だ。謎掛けを解いたからといって、すぐに全てを明かしてくれるわけではないだろう。

 「長老様、私たちは、その信頼を得られるよう、これからも誠意をもって努めます」

 私がそう言うと、長老は頷いた。

 「うむ。期待しておるぞ。…さて、褒美というわけではないが、謎掛けを解いたお前たちに、一つだけ、『始まりの香り』の秘密について教えてやろう」


 秘密。私たちは、再び息を呑んだ。

 「あの泉はな、『心のこころのいずみ』と呼ばれておる。そして、あの香りは…我ら森狼族が、互いの『心』を偽りなく伝え合うための、特別な香りなのだ」

 心の香り。心を伝え合うための、香り。

 それは、私の想像を超えた、匂い言語の奥深い意味を示唆していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ