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合宿4

「てめぇっ、」

すごい勢いで殴りかかって来る。この場に部外者が一人でも居たら私はこれを受けただろう。

「………は?」

でも今はそうじゃない。



 昔から私は我儘だった。自分勝手で暴れん坊、凄く手の掛かる問題児。それに比べ、双子の藤は優しくて、大人の言うことを守る良い子だった。周囲の人はそんな私たちを比較した。「ふじくんは優しいわね。お姉ちゃんのひなちゃんも見習わないと」「どうして、ひなちゃんはふじくんときょうだいなのにそんなにこわいの?」そんな風に言われるものだから私の我儘は更に酷くなっていった。問題が起こったのは小学四年生の頃。私は毎日の様に外で走り回っていたから周りの子より頭一つ抜けて力が強く、ガキ大将の様な立場に居た。でも小学四年生になると男なら男としての女なら女としての意識が強くなっていく。男子は外で泥んこになって遊んだり、教室でバカなことをやる。女子はそんな男子を下に見たり、オシャレや恋愛事についてよく話すようになった。私もそうするべきだったのだろう、でも私はそうしなかった。それから、今まで仲の良かった子たちとは、薄いけど壊すことのできない壁を感じるようになった。ある日、転校生がやって来たその子は私と仲良くしたいと歩み寄って来てくれた。私はそれが嬉しくて嬉しくて、その子とよく遊ぶようになった。私はいつものようにその子を遊びに誘ったが、その子は用事があると言った。仕方ないと思った。でもそれは次の日もそのまた次の日、そのまたまた次の日と続いた。彼の行動に怒りを覚えた私はこっそりと彼のあとをついていった。すると、「お前きもいんだよ!」。嘲笑うような声が聞こえた。その声と同時にあの子が尻もちをつくのが見えた。すぐに助けに入ろうとした。

「あいつと仲良くしてるからお前もこうなるんだぞ」

「そうよ、あの子おかしいんだもん、女子なのに男子みたいだし、いつも横暴でむかついたから、孤立させてるのにそれに気づかないで、へらへらさてさ、ほんっとうにバカだよねー!」

ムカついた。悪口を言うやつに。殴りかかりたかった。でも私のせいであの子がいじめられてるのをしって、今自分が割って入ってまたあの子に迷惑をかけてしまうのではそう思うと、急に怖くなって、その場から離れてしまった。それから彼に迷惑をかけないよう距離をとった。我儘も言わなしたし、横暴な態度も抑えた。これでいじめが終わると思った。でもそれは違った。ガキ大将である私が大人しくなり、その子へのいじめはエスカレートしていった。そしてその子は学校に来なくなった。私はそれが許せなくて、いじめに加担してた奴らを殴った、蹴った、骨を折った。その結果、私は完全な悪役になった。周りの子も教師も私のことを軽蔑するようになった。本当のことを言っても怪我をさせたという事実が私の想いと真実をかき消す。親は私の言うことを真正面から聞いて、信じてくれた。私の想いを尊重してくれた。でも、手を出すのはどのような理由があっても人としてしてはいけないことだと叱責された。藤は何も聞かず私の側に居てくれた。それから私たちは引っ越した。私は大人しくなった。クラスメイトに対して、横暴な態度をとることもわがままを言うことも格段に少なくなり、良い子を演じるようになった。もう二度とあのような事が起きないように……


「何しやがるっ!」

「……きっと和田さんはもっと痛かった」

「何言って……ぐっ」

「あんたの浅はかな行動で、どんだけ追い詰めたんかって話っでしょっ!」

数回殴り合っているところに、先生達と藤と和田さんが来て、喧嘩は止められた。罰として私は合宿を中断、反省文と校舎の掃除をすることになった。本当はもっと罰を受けるべきだったが、今までの私の行動と和田さんの説明により、それだけでおわった。もちろんこのことは学校で噂になった。そして、当たり前のように私の周りから人はいなくなった。






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