合宿1
それからしばらく経って段々クラスに馴染めてきて、北川くんとも話す機会が多くなってきたが、まだ私の中の北川くんに対する苦手意識は払拭されない。
「これで朝礼を終わるこの後クラス長来てくれー」
っていうか、なんでこんなに苦手なんだろ。イケメンで明るくて運動も出来るっぽいし、多分頭もそれなりに
「小町さん!」
「え、はっはひ!」
最悪だ。噛んだ。恥ずかしくて死にそう。
「大丈夫?何回呼んでも気づかなかったから、もしかしてどこか悪い?」
「ううん、考え事してただけだよ、心配かけてごめん」
……びっくりしたー、北川の事考えてたら本人に話しかけられるとか、しかも心配までついてきて……他の女子だったら落ちてたな。
「ところで何かよう?」
「先生が昼に第一講義室に来てくれって」
「了解ーありがとね」
昼に第一講義室かぁー、めんどくせぇ。そんな事を考えていたら授業開始のチャイムがなった。
キーンコーンカーンコーン
「つっかれたー、やっと午前の授業終わったよー」
「お疲れですなぁー、でもさすが学校のマドンナ!最後の超難解問題もスラスラでしたのぉー」
「まぁね、でもその学校のマドンナってなに?」
この独特な喋り方をする丸メガネが特徴の女子は、花岡 舞という、クラスでの私の貴重な友人だ。
「あれぇー、知らないんすか?今学校中で一番ホットな話題っすよ!」
「へえー」
「なんすか、その中身のない返事は!」
「あははっ!」
舞と一緒にいるのは結構楽だ、私とこんな風に話してくれる人なんて藤以外いないかも
「っていうか集まりはいいんすか?」
「あっ忘れてた」
「”あっ忘れてた”って私に感謝して欲しいですー」
「そうですね、花岡さんに感謝です。」
「うんうん……って北川くんっ?」
「はい、北川です。そろそろ行こうかなって思ってて、花岡さん、小町さん借りるね?」
「ちょっ何その言い方」
「はいっどんだけでもぉー」
「舞までー」
「ふふっ、では行きましょうか?」
「うん、じゃあまた後でね」
舞と別れて廊下に出た。
「なんの話するんだろうね」
気まずい沈黙を避けるために絞り出した言葉だった。
「多分だけど行事のことなんじゃないかな。そろそろ合宿の時期っぽいですし」
「なんで分かるの?」
「超能力です。」
「えっ?!」
「冗談です。ほら、着きましたよ。」
はぁー、北川冗談とかいうやつだったの?一杯食わされたみたいですっごいムカつく。
「おっ来たな。これで全員揃ったか…じゃあ話しを始める、なんとなく分かってるかもだが、今回集まって貰ったのは2週間後にある合宿についてだ!」
えっ?2週間後?早くない?もうすぐじゃん。
「担当するのは1年3組担任の澤田と」
「5組担当の新山です。よろしくね。」
見た目は若いけどベテランな雰囲気が漂っている新山 奈緒先生
「早速だけど今年の合宿は例年とは趣向を変えてクラスを越えた仲を深めようと思います!」
…え?クラスを越えたってどういうこと?…え?私まだクラスで仲良い人1人なんだけど、この人たちは私に孤立しろと言っているのか?
「先生それだったらクラス内で孤立する人がでてしまいます」
発言者の方を見る。髪型おさげ、姿勢良い、真っ直ぐな目、どこからどう見ても真面目な子という印象だ。
空気が重くなる。この空気は苦手だ。静寂が続く中、女子の隣でずっとうつ伏せになっていた人が顔をあげる。んっ?!
「和田さん、取り敢えず先生の話聞かない?先生達だってその点について考えてきてないわけないと思うけど。」
光が当たらず分からなかった濃い紫の髪に、少しのんびりとしていて、どこか安心する声。
「そうね。小町君の言う通り…話を遮ってしまってすいません。」
藤だ。……って、藤?!小学校の頃からずっとリーダー的役割に推薦されてきてそれを断り続けてたあの藤が、委員長?!
「いいのよ〜。先生も説明からするべきだったわね。詳しく言うと、今回の合宿では8クラスを2クラスずつに分けて4グループを作ってもらおうと思うの。」
「理由は色々あるが、1番大きいのはお前らの上の先輩方から感想を聞いたら、クラスではどうせ仲良くなるから他クラスともっと交流したい、というものが過半数を超えていたためこういう形ですることになった。
だが、さっき和田の言った通り孤立する者を出してはいけない、よってクラス内でグループを作った上で他クラスのグループとグループを組んでもらい、それぞれのグループでの活動を提示するもりだ。」
なるほど、クラスという枠組み内でグループを作った上で他クラスの一部と関わるのか。そうすればクラス全体の仲、クラス内での特定の人との仲、他クラスとの仲全てが深まるのか。
「どう、和田さん?」
視線が集まる。
「はい、それなら安心出来ます。」
新山先生は笑顔で頷く。
「では、今から4グループに別れてもらいます。方法はもちろん、くじ引きです。」
澤田 紀人 白雛のクラス1年3組の担任
新山 奈緒 1年5組の担任
和田 透子 1年3組副委員長