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第7話




「やはりダメか......」


 先ほどよりも深い溜め息を吐くグレイル。


「ベネット、どうしてここから出たくないんだい?」


 理由があると考えたアインがベネットに問う。


「この部屋の外に出たら魔物がいます。きっとベネットが一人だったら直ぐに食べられてしまう。そう考えたら......ひぃ~~~!」


 簡単に連れ出せると考えていたが、どうやら違うらしい。

 ケルベロスの襲撃は彼女の心に深い傷を付けたようだ。


「魔獣はもういないし、学生寮までは私達が付いてるよ?」


 胸に手を置き安全性を語るソフィア。


「学生寮までは大丈夫かもしれません。でも部屋に入ったらベネットは一人です。そんな所に魔物がやって来たら......。こ、ここに居ればグレイル先生がいます。つまりずっと安全なんです。だ、だから学生寮に行くのは遠慮しておきます」


 布団を強く握りしめ、断固拒否を選択するベネット。


「と、このように俺が何度も説得しているのだが、ずっとこんな調子でな」


 諦めの表情を浮かべるグレイル。

 数分前よりシワが増えたような気がする。

 どうやら彼も苦労人のようだ。


「そんなびびってちゃ、この先やっていけないぜ? それに学生寮は二人部屋だから、ベネットが一人になるって事はないと思うんだがな」


「う~ん。同室の相手がソフィアさんだったら......43号室がソフィアさんなはずなんて......」


「えっ! ベネット43号室なの?」


「はい、ベネットは43号室ですが......」


「私も43号室なんだ!」


「えっ?」


「すごい偶然だね! これならずっと一緒だよベネット!」


「ほ、本当ですか!? ソフィアさんが一緒なら......大丈夫かな?」


 何という偶然だろうか。

 ベネットとソフィアは同室だったらしい。

 いざとなればソフィアがいる。

 ベネット自身もソフィアの力を認めており、彼女が一緒なら安心なはずだ。

 これでベネットの不安も解消される事だろう。


 因みに、アインとシルバも同じ部屋であり、これは度重なる偶然が生んだ奇跡と言えるだろう。


「という事だベネット。医務室から出てってくれるな?」


「......分かりました。今日の所は出ていくとします」


「今日に限らずこの場所の用にならないことを祈っている......」


 グレイルは疲れた顔をしながらも、何処か安心したような表情だ。


「君達にはまた世話になったようだな」


「僕達は友達として当たり前の事をしたまでです」


「ふむ。良い友人を持ったものだな......。まだ学院生活も始まったばかりだが、困った事があれば俺を尋ねて欲しい。今回のお礼を何かの形でさせてもらおう」


「はい。先生もベネットの事ありがとうございました」


「俺は教師だからな。生徒の面倒を見るのも仕事のうちだ。そろそろ失礼させて貰うが、ベネットの事をよろしく頼む」


「しっかりと送り届けるので任せてくださいっす」


 そんなアイン達に安心した様子で、グレイルは医務室から去っていった。


「あの......ベネットは皆さんのお友達になってもいいんですか......?」


 胸の前に両手を合わせうつ向く少女。

 その表情には不安の色が見られる。

 まだ付き合いも深くなく、懐疑的になるのも無理はない。

 しかし、ベネット以外の全員は皆はもう友達だと思っているだろう。


「何言ってるの! ここに居る皆全員友達だよ。それにベネットと私は同室なんだから今よりもっと仲良くなれるはずだよ」


 ソフィアの言葉に頷くアインとシルバ。


「友達......お友達......えへへ。ベネット嬉しいです。ベネットだって皆さんともっと仲良くなりたいです。だから......だから、末永くベネットとお友達してくださいね!」


 そう言いながら内気な少女は控えめに微笑んだ。

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