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災いの子と言われ、捨てられた私と四つの国の龍  作者: メガネ族
第一章 Living things cannot live without contact with society.
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四つの国と現実

前回のあらすじ


不審者二人に名前がなかったー。

屁理屈で二人にそれぞれアトラス、ヒュアって名前をつけたよー。

代わりに”私”はテオドラって呼ばれることになったー。

「まあ、そロそろ巫山戯(ふざけ)てなイで話を戻そウか」


「…始めに(みどり)のが巫山戯だしたのだろう」


「テオ、まず君ガ足を踏ミ入れたコの森はこノ世界の中心に繋がる森デあり、本来は誰一人としテ立ち入ることを許サれてない場所ナんだ」


「おい、みど」


「簡単なモのなんダけど、君が来たノは森から北ニあるオルトロス皇国」



 そう言ってヒュアはアトラスのことを無視しながら、その辺に落ちていた枝を拾って足元の地面に菱形(ひしがた)を描き、その上部の角にこの世界の文字だと思われる字で何かを描き込む。そしてその少し下、菱形の中央に小さな円を描いていく。



「森と皇国の(さかい)にハ流れが早く、浅いながラも足を取られる浅瀬があッて…この丸に位置すル場所がコの森」


「…あさせ…そのあさせというのは、川のですか?」


「ウウん、ちゃんトした海のダよ。たまニ川くらい水位ガ下がる時期があルんだ」



聞いている限りあくまでも菱形にしたのは簡易的な区別であり、森と皇国に浅瀬とはいえ海があるのなら、ほとんどの陸地は島国が多いかもしれない。


つまり…現在地であるこの森はさまざまな島などを、対角線で結んだときの線の中央にあるってことでいいのかな。



「そレで皇国の反対にはイスキオス帝国、そノ西にエクリクスィ王国、ソの東にヒュドール公国があるヨ」



それにしても…ヒュアはいつまでアトラスのことを無視するんだろう。

さっきからアトラスが「不満」って書いてある顔で私を見てて、困るんだけどなあ…。


当の本人であるヒュアは、先ほど描いた菱形の頂点の先にそれぞれ大きさの違う円や楕円(だえん)を描いて、描いた円の内側にこの世界の文字らしき何かを描いていた。



「君はマだ幼いし、16歳…つマり結婚でキる歳になるまデは森にいてモいいケど…16歳にナったら、異種族が多く住ンでいるイスキオス帝国に行クんだよ?アそこナら種族名をシツコク聞かれタりはしなイから」


「ヒュア、この小娘が森に滞在することを許すつもりなのか!?我は反対だ!!」


「だケど、テオはきっト人間の多イ国だト危険な目ニ遭う。たダでさえ、過去の聖女ヤ聖者がサキュバスに対しテ妙なイメージを付けていっタから、サキュバスやインキュバスは嫌わレているのニ…」



 過去の聖女や聖者という言葉が出てくるってことは、何らかの方法で異世界転移的なことをしてコッチの世界に来てる人がいるってことなのかな?それともあくまでも比喩(ひゆ)的なもの?



「さきゅばすやいんきゅばすは、どうしてきらわれているのですか…?何かワルいことでもした?」



確かにファンタジー系の物語では、サキュバスやインキュバスという存在は悪く言われることが多い。まあ、例外がないとは言えないけど…少なくとも子供が見られない部類だと思う。


実際私だって、サキュバスだと言われたショックはかなりあった。元ネタである悪魔はまぁ………年齢制限がかかるタイプのゲームとかに登場する悪魔、ですからねぇ…。



「…サキュバスやインキュバスは生まれ付き魔素を吸収・放出することに長けている魔族だ。そして魔素は誰しもが持っている生命力のことを指す、つまり本人以外から命を吸い取れるのだ。嫌われないわけがないだろう」


「いのち…」



それはそれは、またトンデモない異世界事情だなあ。そんな嫌われる種族で、サキュバスの幼子なんて人間じゃなくても嫌われる要素ありまくりだ。



「使いようによっては魔物や魔素を減らせるが、サキュバスは特に男から奪った方が手っ取り早いというわけだ」


「…だカら、テオ。悪い事は言わなイから、いつかイスキオス帝国に逃ゲることをオススメするヨ」



_「お母さんも…ティアも魔族だけれどね、人間と仲良くなれないわけじゃないの」

確かそう言って、寂しそうな目で私を見ていたカサンドラのことが脳裏によぎった。



「…たしゅぞくから、まそをうばわなくても生きられるほうほうは…ないんですか?」


「ナイよ。テオはこれカら先、何らかの形で他の生き物かラ魔素を奪っテ生きるしかなイ。魔素はワタシやアトラスにとっても生命力でアルように、テオが奪おうとしてナクてもいつか身体が生きル為に勝手に吸収し始めるんダ」



 一難すら去っていないのに、壁の向こうに壁を見てしまったような気分だ。結局異世界だからと言っても、生きる為に鶏の命を奪い食糧とするようなことをしなくちゃいけないのは変わんないのか。



「それにテオ、お前の両親は精霊龍の血縁者である以上…お前は災いの中心に巻き込まれるだろう。それに母方は黒龍ときた…。イスキオス帝国でサキュバスだとバレても悪いようにはされまい」



災い…か。

確かカサンドラお母さんが私に話しかけてた時に来た村人が、私のことを災いの子だって言ってたし、あながち間違いじゃないかもしれない。


日本でいうところの台風の目みたいなものなんだろうな。…というか、それ以外あんまり聞き取れなかったし。…あまり思い出したくもない。


元日本人の私、テオドラ…身体年齢七歳、精神年齢二十歳以上。前世の記憶持ちだけれど、異世界来て早速災いに巻き込まれました。笑えない冗談だったらよかったのに。

次回、閑話休題。


【ヒュア】

アトラスに案内された先にいた幼く中性的な子供。身体全身が少し透けていて、一番透けているのは足。

目は細い瞳孔の薄緑で、長い天然パーマの髪で前髪が長く、口元しか見えない。話している言葉が時折カタコトになる。アトラスと同じようにボロ布を着ているが、ボロ布はサイズが合わなくて引き摺っている。基本的に親切な対応が見られ、子供という見た目に反して達観的な発言が多い。

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