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災いの子と言われ、捨てられた私と四つの国の龍  作者: メガネ族
第一章 Living things cannot live without contact with society.
10/23

知識欲の示す答え

キングクリムゾンではない。


前回のあらすじ


エクリクスィ王国は天変地異が起きやすい諸島や群島で出来た国だねー。

少しの災害で人が行方不明になったりすることが多いんだー。

でも、王子が帰って来ないのは流石に心配しよーよー。

 時間とは早いものである。なんだかんだで森に居候(?)しているうちに私の身体は中学生くらいの身長と、七歳だった年齢は四年の時を経て十一歳になった。


その間にヒュアとアトラスは私にたくさんの知識や技術を教えた。

地理・歴史・戦闘技術…魔法も、その中の一つだ。


一から全て覚えられたかと言われると、多分覚えられていないけど…。それは基本的に私に合わなかったものだった為に省かれただけらしい。


個人的に森から出たことのない二人がどうやって外部の情報を得ているのか気になるが、聞いてしまうとなんだか良くない予感がして結局聞いていない。



「テオ、魔法と魔術の違いはなんだ」


「魔法は魔力のみを用いて世界に干渉する術で、対して魔術は魔力を一部工程に必要とするもの」



 やはりと言うべきか、前世の世界では(かじ)りも(かす)ったことすらもない魔法や魔術の勉強には一番時間を費やした。


この世界では魔法は魔力を使って世界に干渉し、神がかりのような現象を意図して起こすものと言われているようだった。


分かりやすくするなら、火を付けられる道具もなしに火を付けて料理をするようなものなんだとか。ちょっと何言ってるか分かんない。


そして魔術は前世で見ていたアニメ的に言うならば錬金術に近いもので、作業工程の一端に魔力を少し使う程度らしい。


個人的には、ショートケーキ用のホイップクリームを魔力を使って作るようなものだと解釈している。泡立て器を魔力で動かす的な感じで。



「では精霊魔法とは何か説明してみろ」



 そして私が一番苦戦しているのは、この精霊魔法だ。

魔法と言っていながら魔法とは原理が違い、精霊と契約することによって精霊魔法使えるかも?という、精霊との契約が大前提の術である。


まず、精霊の()の字もないんじゃないかと思うくらいに精霊はこの世界にいない。実はティアの記憶にもなかった。あくまでも絵本や話で聞くばかりで、実物を見たという人は片手に数えられたら多い方だ。


精霊はこの世界を作り出した神の目、つまり代弁者(だいべんしゃ)のような存在でもあり友だという。…というか、友なら姿くらい見せて欲しい。


それに精霊は気に入ってくれれば契約したい相手と接点を勝手に作って契約させることもあり、稀に幼い子供が友人がいると言って向かった先が、精霊が宿ると言われていた遺物だったという実例もあったそうだ。


…地味にホラーテイストに走るのは何でなんだろう。



「精霊魔法は精霊と契約していることを前提に、契約している精霊から力を借りて魔法を使うことで、消費する魔力が限りなく少ないです」



大きな違いは魔法や魔術よりも消費する魔力が少なく、精霊の力を借りることで少しレベルの高い魔法を使えることだ。


ただし力を貸してくれるほど気に入られることは珍しく、精霊との契約方法も契約者との他言無用状態になるので詳しくは知らない。


アトラスは私の答えがあまりあっていなかったのか、顔を(しか)めてため息をついた。



「…違う。精霊魔法以前に、精霊一体一体の契約方法には微々なる差がある。つまり同じ種の精霊でありながら契約者に望む対価が大きかったり小さかったりする。そしてその差によって消費する魔力も変動するのだ」


「はぁ……また間違えたよ〜もう精霊魔法いいから魔法の訓練したいよ〜」


「ダメだ」


「アトラスの鬼」


「何とでも言え、問題に答えられないのであれば魔法訓練はさせん」



 アトラスがどこかへ行った後、私はぐったりとヒュアが登って行ってしまった大樹の根元に寄りかかった。


頭を使って疲れたということもあるが、純粋にこの世界の魔法は前世で見ていた大抵のアニメよりも危険性が高いことにいつも疑問を思っていた。


あのアトラスだって魔法を教えて欲しいと頼み込んだ時なんか、正面から胸ぐらを掴まれて殺意を向けられた。


どうしてあんなに怒ったのか、どうしてその時に「我らをまた裏切る気か」と言っていたのか、私には分からない。


ヒュアに頼ろうにもヒュアは「教えラれる状態じゃナい」って苦笑いで断られたし、代わりに歴史や地理を教わっているから文句すら言えない。



「…………精霊魔法は、精霊と契約していることが前提……か」



アトラスは教える代わりと言って、私に条件を課した。一応達成したことは覚えているのだが、肝心の条件をアトラスの魔法か魔術かで忘れさせられたので覚えていない。何となく…辛かったような。


事実精霊魔法の話を聞いた私はアトラスと条件を交わし、それを達成した契約があると言って魔法を教えて貰えばいいとかトチ狂ったことを考えたりもした。しかしアトラスは精霊ではないので当然無理だった。泣き寝入りした。



「まず精霊すらいないのに、勉強する意味ある…?」



 そう、思わず口に出していた時だった。



__いるよ


「!?誰、!!?」


__せいれいは、いるよ


「何を言って」


__みえないだけ



 大体幼稚園児くらいの高い声が周囲の木々に紛れるように聞こえる。


クスクスと笑う声もあれば、聞いたことすらない声に「すきーいっしょー」と友好的な声、「くろ様、どこにやった」と敵意剥き出しの声も聞こえた。


不気味。

その一言が脳裏に貼り付けられたように剥がれないまま、風が頬を撫でるように流れてやっと声が消え、警戒心から地面に二本足で立ち上がっていた足から緊張感と共に力が抜けていく。


思わず不安から片足に触れると、その触れた手もふるふると情けなく震えていた。寒いわけでもないのに唇周りの筋肉が引き攣るように震え、指先は冷え切っていた。


頭がグラグラと重く感じて、呼吸できているか不安に感じて深呼吸をして、過呼吸になって苦しくて。



「テオ、大丈夫。ここにハもう何もいなイし、安全だヨ」


「………ヒュ、あ」


「うン、ワタシ」



 どれくらい時間が経ったのか分からないまま、気付いたらヒュアがしゃがむ私の隣に座り込んでいた。治りかけていた傷に塩を塗られたのか抉られたのか分からないけど、ヒュアがいることで少し安心したのか過呼吸もゆっくり正常な呼吸に戻る。


けど…動くだけの気力すら全て持っていかれたのか、足に力が入らなかった。



「………あのさ」


「ナーにカな」



 …一人でいることはこんなにも辛かっただろうか。

前世で私がどうなってしまったのか分からないまま異世界に転生して、アニメだ何だって言ってるけど…結局それも建前で。


誰一人として私と血の繋がった相手はこの森にいないし、森を出ようものならサキュバスという種族のイメージで嫌われて、けど森にも私の味方はいなくて。


いつかこの森を出なきゃいけないって分かっているけど、出たところで何がどうなるんだろう。本当に一人でこの先、生きていけるのかな。嫌われてるし、この先も嫌われるんだから…いない方がいいのかな、私。


…あぁ、こういう時は前世だと好きなゲームやアニメを見て癒されていたっけ。「ネットとかで誰かを傷付けあったりしてストレスを解消させる」って言ってた同級生はいた。


けど、私にはそれが合わなくて好きなものに縋って、同級生が世間的には宜しくないことをしている自覚があったけど、そうなってしまった原因も理由も何となく知ってたし…。


まあ、如何(いかん)せんそんなものはない。強いて魔法が気になっているが、アトラスは私が魔法を覚えることをよく思っていない。


裏切るとか言われても、誰かに予言されたわけじゃないんだからきっとそうならない対策もある。そう、頭では理解できてるけど。



「………魔法って…本当は、なに?」


「そレはワタシじゃなくテ」


「おねがい、おしえて」


「……魔法ノ本質はね、テオ」


「…ん」


「…テオ自身の、心のことナんだ」


「…なに、それ」


「魔法は自由で、変幻自在(へんげんじざい)。それは間違ってない。けどね、心のない生き物には使えない」



…もし、神様がいるのなら私とティアからお母さんを奪わないで欲しかった。唯一の血縁者であり、母親だったあの人を。


例え私が森に捨てられていたことに意味がなくて、ただ育てるのが面倒だったのかもしれないけど。それでも奪うことはしないで欲しかった。


異世界にたったの一人で、(すが)る当てもなく生きることが簡単にできるわけないのに。



「心ガ生み出すエネルギーが魔素デ、テオや他の生き物ノ生命力。ダから心のなイ生き物にハ魔素を扱えナい。扱えテも大しタ魔法はでキない」


「サキュバスは、じゃあサキュバスはどうして生まれたの。どうして、」


「サキュバスやインキュバスの生い立チは、テオ自身が森カら出た時に知っタ方がいイ」



 私は何のために生きればいいの?

サキュバスとして生きることしかできないの?

そんな疑問が森から出ることへの意味を大きくしていった。

ザ・ワールドでもない。


【魔素】

この異世界全体に存在する生命力のこと。魔法を扱う為に必要なエネルギーであり、世界を壊すエネルギーでもある。過剰な吸収、または放出はサキュバスかインキュバスのみが可能とする。場合によっては魔族や魔物の発生原因となる。

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