第七話 捜索
前回のあらすじ:岡山銃撃事件が終了し、休息が訪れたと思われた日本原駐屯地。しかし休息は訪れなかった。何故ならば基地内にて爆弾が発見されからである。
その爆弾は既に起動しており、爆処到着時刻も不明。その為、駐屯地は爆発した時に備えて厳戒態勢で待機。爆発に対処する人員以外は、他に爆弾が仕掛けられていないかを確認するべく、爆弾探しに奔走する…
1月27日… 09:48… 日本原駐屯地…
「ここにはありませんね」
「そうね。隣の部屋に行こう」
「はい」
現在、他に仕掛けられた爆弾が無いか基地の総力を挙げて捜索している。
ナナヨンに仕掛けられた爆弾は未だに爆発する気配は無い。
「大尉」
「何でしょう?」
「本当に爆発するの?」
「タ、タイマー音がしたので爆発するかと…」
「タイマーの音がする固形物かもしれないよ?」
「………」
大尉は不安そうな顔をする。
堂々と皆の前で宣言しちゃったから、当てが外れるのが怖いのだろう。
「ま、爆発しないに越したことは無いよ。さ、次の部屋行こ!」
「は、h―――」
隣の部屋に移動しようとしたその瞬間!
ドガァァァァァァン……!!
爆発音がした!
私と大尉は爆発音がした方の窓に張り付いた。
その先にあったのは、炎上するナナヨンであった。
「あぁ!ほら!やっぱり!私の勘は当たってた!」
大尉は心なしか嬉しそう。
こんなに喜ぶ大尉は初めて見た。
「でも、爆発しない方が良かったよね~」
「…あっ……そ、そうですね………申し訳ありません」
大尉はすぐに我に返り、そう言って来た。
「気にしなくて良いよ、大尉のお陰で被害はナナヨン1台だけで済んだんだもの」
「な、なんか恥ずかしいですね…」
顔を赤める大尉。
可愛い。
「あ、消火班が向かってるよ」
「そうですね。このままいけば被害は最小限で済みそうですね」
「そうなると良いね」
「ですね。では、次の部屋に行きましょう」
「OK~」
13:51… 1階廊下…
「ここで最後ですね」
「異常無し…っと」
ここにも爆弾は無かった。
きっと、爆弾はあのナナヨンの奴だけ。
…でも心配だな。
「ねぇ、大尉」
「どうしました?少佐殿」
「もっかい、一から点検してみない?」
「…そうですね、見落としがあったら不味いですもんね」
大尉も乗り気!さぁ、もう一度最初から点検だ!
2時間後…
結局、爆発物らしきものは見つからなかった。
本当にナナヨンに仕掛けられた奴だけだったみたい。
「良かったですね。あの1コだけで」
「うん、そうね」
大尉は安堵の表情を浮かべる。
と、その時…
グゥゥゥゥゥ~……
「!?た、大尉…?」
「……お腹…空きました…」
顔を赤らめながら言う大尉。
「お昼食べずにやってたもんね。私もお腹空いた」
「今から食べられますかね?」
「あ、その前に報告に行かないと」
「そうでしたね。大佐の部屋に行きましょうか」
数分後… 幹部食堂前…
「「………」」
やっぱり食堂は閉まっていた。
予想通り。
今日はコンビニ飯かな。
「やっぱ閉まってっかぁ…クソォ…」
「あ、中川少尉」
「あ、中隊長。それに大尉」
「少尉も食べ損ねたのか?」
「はい。大尉のおっしゃる通りです」
「非常時なんだ、開けてくれたって良いのに…」
大尉がそうぼやく。
「コンビニ…行こっか」
「「はい…」」
道中…
コンビニへ向かう途中、例のナナヨンの近くを通った。
規制線の向こうに、爆発により真っ黒になったナナヨンがあった。
「一体誰が仕掛けたんでしょうね、少佐殿」
「分かんない…」
本当に誰が仕掛けたのだろうか。
分解されていたと言うのも謎な話。
「この混乱の間に、別の事件の準備が進んでたりしませんかね?」
中川少尉がそう言う。
「…確かに、その可能性もありますね」
「そうなってもすぐ対処出来るように、早くご飯を食べよう」
「「はっ」」
15:52…
コンビニでご飯を済ませた。
これで何かあっても大丈夫。
「15時、だいぶ遅めの昼食でしたね。少佐殿」
「そうね、大尉」
「少佐殿、これからはどうしましょうか?」
「やる事やったし、まぁ、いつも通りかな」
「訓練ですか」
これから訓練…うーん、皆爆弾探しで疲れてるだろうし、今日は止めにしようかな。
あ、私デスクワーク残ってたんだった。
「…デスクワーク」
「少佐殿の仕事の方が先みたいですね」
「今日の訓練は無しにしよう」
「分かりました。各員に通達しておきます」
「頼んだよ」
「お任せください」
16:01… 駐屯地中隊長室…
「えーっと、この書類は参謀本部に送り付ける奴で…」
ハンコは何処にやったのかな。
「あ、あったあった」
しっかりハンコに朱肉に付けてから、書類に印を押すっ。
「綺麗に押せた」
書類のハンコを押すところには綺麗に[新見]の印が押された。
ハンコは綺麗に押せると嬉しい。
…早く電子化しないかな。コレ。
コンコンコン
「勝山大尉、入ります」
「はーい」
ガチャッ。バタン。
「少佐殿、参謀本部に送付する書類の準備は出来ましたか?」
「うん、今出来た所」
「ありがとうございます。どれでしょう?」
「えっと、コレとコレだね」
大尉が送付作業をしている間に、残りの仕事を片付ける。
と言っても、今日は基本的にハンコを押すだけだけど。
「分かりました。では、失礼します」
「は~い」
ガチャ。バタン。
「さっ、大尉が戻って来るまでに全部片づけるぞ~」
20分後…
「終わったー!」
今日の書類仕事終了!
今日は凄く早く終わった。
「…ホットミルク飲みたいな」
久しぶりにホットミルクが飲みたくなって来た。最近働きすぎたのかな。
大尉は郵送作業中だから、自分で入れに行かないと。
そう思い、椅子を立とうとした瞬間。
コンコンコン
「はーい?」
「勝山大尉です。入りますよ」
ガチャッ。バタン
大尉が入って来た。大尉は何かを持っていた。
あれは…お盆とマグカップ?
「少佐殿、ホットミルクをお持ちしました。それと、郵送完了しました」
「ありがとう、大尉」
「いえいえ」
大尉は私の心が読めるのかな。
ホットミルクを飲みながらそんな事を考える。
「お味は如何ですか?」
「うん、美味しいよ」
「良かったです。お口に合わなかったらどうしようかと…」
あれ、なんか駐屯地で淹れるホットミルクと少し味が違う。
いつもよりだいぶ甘い様な。
「駐屯地にある奴…じゃないよね?」
「分かりますか。私の自作です」
「へぇ~」
大尉の自作何だ。
…自作?
「親が牧場を経営していまして…仕送りの中に牛乳が入ってるんですよ。それで作りました」
「そうなんだ。…うん、美味しい!」
「良かったです。両親も喜びます」
大尉って家族思い何だね。
…大尉の手料理が食べたくなって来た。
「大尉って、家で自炊するの?」
「毎日しますよ」
「ご飯もちゃんと炊いてるんだ」
「はい。毎日お鍋で炊いています」
「鍋!?」
炊飯器で炊かないんだ。
大尉の食生活がますます気になる。
「…お恥ずかしい話なんですが、炊飯器を買うのが面倒で…」
「め、面倒」
「別にお鍋でも炊けるんだったらそれで良いかな~…って」
「保温とか…出来ないでしょ?」
「出来ますよ」
「出来るんだ」
「電気代の節約です」
大尉って意外と変な子かもしれない。
「…大尉の手料理が食べたいね」
「えっ」
大尉の顔が一気に赤くなる。
あれ、私そんに恥ずかしい事言ったかな?
「ててて、手料理…ですか?」
「うん。大尉の手料理」
「手料理って事は…少佐殿が家に…来るって事…!?」
「うん。そうなるね」
「しょ、少佐殿がい、い、家に来るなんて私その…●%◎※@〇……」
「大尉、舌回ってないよ~」
大尉ってこういう所が可愛い。
「はっ!し、失礼しました少佐殿」
「それで、食べさせてくれるの?」
「勿論ですよ!少佐殿」
さっきの慌てた様子から一転して、大尉は笑顔だ。
「今日行っていい?」
「きょ、今日ですか!?か、構いませんけど…その…家…掃除とか、まともに…」
「大丈夫だよ、ちょっとご飯食べる位」
「そ、そうですか」
「うん」
大尉の家、楽しみだな。
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