第四話 岡山銃乱射事件(前半)
前回のあらすじ:新年を迎え、宴をしていた日本原駐屯地の面々。
そんな中、新見と勝山は外へ出る。
外に出ると、駐車していたは74式が雪に埋もれていた。
しかし、その74式は雪像であったのだ。
…それから二十数日…
岡山駅で事件が発生する……
1月24日… 岡山駅2階コンコース… 08:10…
ここは大都会岡山の中心駅。岡山駅。
現在は朝ラッシュ真っただ中。人で溢れかえっていた。
そんな日常が始ろうとしていた…。
ワイワイ… ガヤガヤ…
「現在西川原駅で発生した人身事故の影響によりー、山陽本線の列車に遅れが出ていまーす!」
駅員が遅延の案内を肉声メガホンで行う…これはまだ"日常"の一コマ。
非日常はいつも突然やって来る物である。
ダァン!
そう、この様にしてやって来る。
コンコースに響き渡る1発の銃声。
大量の人が銃声の方を振り向き、動揺する。
そこには1人のサラリーマンの死体。
響き渡る群衆の悲鳴。
この銃声から約5秒後…
ズダダダダダダダダ…
人混みに紛れていた一部の人が銃を取り出し乱射し始めた。
一般市民は何の抵抗する事も出来ずに撃ち殺されて行く。
居合わせた警察官が何とか抵抗しようと拳銃を構えるが…!
ダァン!
無残にも撃ち殺されてしまうだけだった。
**視点変更 三人称→新見**
08:18… 日本原駐屯地…
「まだまだ寒い日々が続くね!さぁ、今日の訓練は…」
今は中隊の朝礼中!
今日の訓練の内容を伝える。
…ん?大尉が紙を受け取った。
大尉の顔がちょっと良くない顔に。
どうしたんだろう。
「どうしたの大尉?」
「こ、これ見てください…!」
「ん?」
[岡山駅ニテ武装集団ガ一部ノ人ヲ人質ニ取リ立テ籠ッテイル。現在勢力拡大中]
「…えぇ!?勢力拡大中って!?」
ザワザワ…
「そこに書いてある通りです。少佐殿」
「立て籠っている…?でも勢力拡大中…」
「駅を本拠地にして周辺にも展開している様です」
「隊長!」
部隊員の1人が手を挙げる。
「何が起こったのですか!」
「今入って来た情報によれば、岡山駅でテロリストが立て籠もってるらしいんだよね」
ザワザワ…
「それで、駅を中心に周りにも展開してるらしんだよね」
ザワザワザワ…
部隊の皆は少し動揺している。
「そ、それで!我々の出動は!?」
「まだ」
「まだァ!?」
「うん。まだ。戦車を出す程なのか判断してるんじゃないかな」
「は、はぁ…」
タッタッタッ…
1人こちらに走って来た。
「新見少佐!勝山大尉!」
「ん?どうしたの?」
「直ちに第一会議室へお越しください!基地司令がお呼びです!」
「「了解」」
「…と、言う事で一旦解散!」
「「「はっ!」」」
第一会議室… 08:22…
急いで会議室に入った。
会議室の机はコの字型で配置されていて、窓側には無線機が置かれていて無線手が無線を操作してる。
私と大尉は左側の一番前に座った。
「集まったか」
基地司令兼第13砲兵隊の神谷大佐。
普通の時はよく冗談を言ったり、下士官や兵達と一緒に喋ってたりするフレンドリーな人。
「さて、君達も報告を受けているだろう…」
大佐がホワイトボードに貼ってある地図の岡山駅を指さす。
「現在、正体不明の武装勢力が岡山駅を占拠していて…」
指を西方向へ動かす。
「駅を拠点に西川緑道公園駅辺りまで勢力を広げている」
「そして、機動隊はココ」
駅から東に言った大きな交差点へと指を動かす。
「柳河交差点で防衛線を張って、東側はにらみ合いが続いている」
皆各々メモを取ったり地図を凝視している。
「北側は国道180号線辺りまで進出していて…」
地図に赤線を引く。
「西が、備前三門駅付近。道で言えば県道236号線」
そのまま続けて赤線を引き続ける。
「南は県道21号線…」
地図上に四角形が出来上がる。
「この赤線で囲った範囲が敵の勢力下に置かれているが、現在も拡大中である」
成程成程。
「意見具申!」
「勝山大尉、どうぞ」
「機動隊が抑えてるのは東側だけなのでしょうか」
「その通りだ。たまたま上空を飛行していた警察のヘリによれば敵の規模は数百人程との事だ」
「「「数百人!?」」」
「あぁそうだ。駅に立て籠もってるのはほんの一部の様だ」
「…大通りの東側以外に奴らは拡大しているという事ですか」
「うむ、その通りだ」
「東側以外への機動隊の配備は進んでいるのでしょうか」
「恐らく進んでいるだろう」
地図に書かれた施設をよく見てみると、南の最前線に市役所が面している。
それに民間人の避難が進んでるか心配。
「大佐!」
「どうした、新見少佐」
「民間人の避難は進んでいるのでしょうか?」
「敵の勢力下以外の地域は進んでいるが…勢力下は拘束されたままだ」
「向かっている部隊は?」
「……」
「た、大佐?」
「それがだな…」
**視点変更 新見→三人称**
同時刻… 第13旅団司令部… 海田市駐屯地… 旅団長室…
「何ですと!?まだ出るな!?」
旅団長室では旅団長の豊岡少将が中部方面隊の津軽中将と電話をしていた。
<あぁ、そうだ。まだ様子見だ>
「は、はぁ…しかし…相手は小隊、いや中隊規模の武装集団ですよ?」
<中隊規模の武装集団と言えど、相手は拳銃やナイフ位だろう。流石に小銃や機関銃は持っとらんよ>
「う、うーん…機動隊だけで太刀打ちできるでしょうか…」
<可能だろう。最近の機動隊は自動小銃や狙撃銃も持っている。それに大隊規模で展開している>
「し、しかし…」
<君、機動隊をもう少し信用してやってもいいんじゃないか?>
「ま、まぁそうなんですがね…?どうも心配でして…」
<何が心配なのかね?>
「相手の武器です」
<どうせ拳銃やナイフ位だろう。心配する必要は無いだろう>
「見立てが甘すぎませんかね…小銃持ち出してそうで怖いな…」
<まさか。武器の密輸は大部分は阻止出来てるだろう>
「そうだと良いのですが…」
**視点変更 三人称→新見**
08:22… 日本原駐屯地… 第一会議室…
「…と言う事で、まだ機動隊に頑張ってもらおう~…との事」
「「「……はぁ!?」」」
「上の奴の頭ン中どうなってんだ!?」「機動隊にも限界あるぞ!?」
「AKとか持ってたらどうするの!?」「防衛は出来ても攻勢は…」
「陸軍の存在意義って…?」「あの人なんで中将なんかになれたんだ?」
「まぁまぁまぁ、抑えて抑えて」
「「「……」」」(シーン…)
「うわぁ!いきなり急に落ち着くなぁ!」
シーン………
「喋っていいよ」
「武装集団の武器が気になりますね。少佐殿」
「そうね…RPGとか持ってたら不味いし…」
上層部の武器の見立てが甘い…!甘すぎる…!
昔の事件じゃ火炎瓶とか普通に使われてたらしいし…
…やっぱり津軽中将はちょっと信用できない。
「神谷、武装集団から何かメッセージは来てないのか?」
第13後方支援隊の杉山大佐。
神谷大佐とは陸士の同期。
「今の所は何も無いな」
「はぁー…金なら金ってさっさと言えよ…」
現場の詳しい状況がまだ分からない…。
テレビも一応流してるけどニュースキャスターだけが映ってるだけ。
映像は入ってない。
「映像欲しいなぁ…」
「欲しいね」「分かる」「短くていいから…」
「5秒とかでもいいから欲しい」
皆同じ気持ちみたい。
「少佐殿、皆さん。Ustubeに映像が上がってるかもしれませんよ」
「!それだ!」
「あ、あす…つべ?」
時代についていけてない人が。
まぁ、50代後半だから仕方ないかな…?
「インターネット上の動画配信サービスの事です。誰でも自由に映像をアップロードする事が出来ます。宮木少佐殿」
「自由にあ、あっぷろーど出来るから…何なんだ…?」
「たまたま現場に居合わせた人が、スマホで撮影してアップロードしているかもしれませんよ」
「そんな事する奴居ないだろ…死ぬかもしれないじゃないか」
「いえ、最近は自らの危険を顧みず撮影しアップロードする人が増えています」
「えぇ…?」
「とにかく、少し覗いてみましょう。あ、他のSNSとかでも上がってるかもしれませんよ」
「よし、そうしよう」
大尉の進言を受け入れて、神谷大佐が机の上に置いてあるPCを操作する。
「あ、誰かプロジェクターを」
「私がやりましょう」
第13高射砲中隊副司令の長澤大尉がプロジェクターの用意をする。
1分後…
「勝山大尉、ちょっと選んでくれないか。俺にはよく分からん」
「はっ。直ちに」
プロジェクターから映し出されているのは"eagle"のタイムライン画面。
大尉が検索ボックスに"岡山"と入力する。
すると…!
[刈谷太郎 @toukaido 9分前]
[変な奴が俺の目の前で銃撃ってんだけどwww]
[#岡山 #テロ #銃 #乱射]
[EGG @tamego 9分前]
[銃持ってる奴大量にいるけど俺はどうしたらいい]
[#岡山 #テロ #銃]
[野生の牛丼 @usi 9分前]
[隣の奴が前のサラリーマン撃ち殺した]
[#岡山 #テロ #銃 #死亡5秒前]
・
・
・
…スクロールしても出てくるのは文字だけ。
映像が出てこない。うーん…流石に映像を撮る余裕が無かったのかな?
「映像出てこないですね…」
「そうだな…でも、これだけでも凄い情報量だ。もしかしたら、銃の種類を特定できる奴がここに書いてるかもしれん」
「そうですね。もう少し見てみましょう」
大尉が検索ボックスに"テロ"と打ち込む。
すると…!
[ただの銃好き @M82 3分前]
[命からがら駅から逃げて来ました。犯人が持ってた奴、ぱっと見た感じ56式だったと思う。少なくともAK系統]
[#岡山 #テロ #銃 #56式自動歩槍]
「大佐殿の読み通りですね」
「56式…オイオイ自動小銃かよ…!」
「機動隊で相手できますかね…?」
「機動隊の盾はポリカーボネート製だ。7.62mmなら防げる…はずだが…」
「防戦一方になるのでは…?」
「如何せん武装集団の規模がな…」
「それにしても何処から入手したのでしょうか?」
「そりゃお前、密輸だろ」
「やはり密輸ですか」
やっぱり密輸かな。コンテナとかに紛れさせて。
「意見具申!日本国内で生産されたという可能性も否定できません!」
「ふむ、国内で生産か…有り得るな」
長澤大尉の意見は最も。
昔もAKを量産しようとした宗教団体があったし。
勝山大尉は一心不乱に更新ボタンを連打し続けてる。
[野生の野生児 @kia5q522 30秒前]
[やべぇ目の前めっちゃ燃えてんだけどwww]
[#岡山 #火災 #火の海]
[保安検査場 @kaqtre325 20秒前]
[陸軍キター!]
[#岡山 #陸軍 #救世主]
「何?陸軍だと?オイ!無線手!司令部に問い合わせろ!」
「はっ!直ちに!」
あれ?陸軍…?独断専行で出動しちゃったのかな?
いや…流石にそんな事は…。
きっとこの人の見間違いでしょ。
「大佐、司令部からは出動命令は下してないとの事です」
「ふむ…独断専行か?」
「大佐殿、その陸軍と思われる人の写真が上がっています」
「おっ、どれどれ」
写真には数人の陸軍の人間と思われる人が写っていた。
「迷彩3型か…?」「持ってるのは89式に見えるなぁ」
「何処の部隊だ?」「小隊規模か」「他の部隊は何処に居るんだ?」
疑問や予測が飛び交う。
「まずはどうにかして、この謎の部隊の正体を確かめる必要がある。無線手!13旅団の部隊が駐屯している全駐屯地に連絡して、部隊の所在を確かめてくれ!」
「はっ!直ちに!」
無線手は忙しくなるね。
「部隊章は…見えませんね…」
「この画像だけじゃ判別は厳しそうですな…」
大佐はこの画像を保存して、他の画像を探し始めた。
タイムライン上には現地に居る人の投稿溢れかえっていたいた。
だけど、画像が全然ない。
皆投稿する事に必死で、写真を撮る余裕が無いみたい。
こういう時、普通は動画が沢山投稿されるんだけど…それ所じゃない…!?
「意見具申!」
私は手を挙げながら立ち上がる。
「新見少佐?」
「現地の状況は我々の想像を超えているかもしれません!」
「根拠は?」
「まず、このeagleの投稿に動画が少ない事です」
「?何故動画が少ないだけでそう言える?」
「大抵の場合、このような事態が発生した時は動画や写真が大量にあげられます」
「…それはそうだな、機動隊が突入する瞬間の映像は瞬時に大量にあげられている」
「しかし、今回は画像や映像がほぼ見られません。この事から、現地の状況はかなりひっ迫していると思われます」
「成程、一理あるな…しかし、これだけでひっ迫していると考えるのは…やはりリアルタイム映像が欲しいな」
やっぱりそうだよね。リアルタイムの映像が欲しいよね。
私もちょっと思ってた。
「…大佐殿、大佐殿」
「どうした?勝山大尉」
「備中放送の公式Ustubeが上空からの映像をリアルタイム配信しています」
「何?見せてくれ」
神谷大佐がPCの画面が覗き込む。
「…凄い事やるな、備中放送」
「えぇ、そうですね」
…それにしても、勝山大尉っていつも落ち着いてるよね。
ほぼ無表情だし、声のトーンも落ち着いてるし。
なんでそんなに落ち着いてられるのかな?
「大佐殿。機動隊が展開していますよ」
「あぁ、そうだな。西側への展開も完了しているな」
「神谷、機動隊の増援が向かってるぞ」
「え?あ、あれか。意外と見えるもんだな」
「最近のカメラは凄いからな~」
備中放送のリアルタイム中継はUstubeでしかやってないみたい。
テレビはキャスターと専門家しか映ってない。
「大佐、13旅団の全駐屯地と連絡を取りましたがどの部隊も出ていないとの事です」
「成程…14旅団と連絡は取れるか?」
「時間はかかりますが可能です」
「なら善通寺駐屯地と連絡を取ってくれ。もしかしたら即応機動連隊かもしれん」
「はっ。分かりました」
13旅団は動いてないんだ。
…うーん…ここに連絡があったのが10分後…。
瀬戸大橋を渡って岡山市街に向かったとしても…早すぎるね。
…やっぱり偽物なのかな?
もしかしたら離反部隊?
色んな可能性が私の脳内をよぎる。
頭がパンクしそう。
「テレビのチャンネルを変えてくれ、他の局も見たい」
「分かりました。何番にしましょう?」
「…あぁ、現場からの中継がある局に変えてくれ」
「了解」
…勝山大尉って感情あるのかな?
こんな事本人の前で言ったら失礼だけど…。
大尉が局をリモコンで変え続けてると、6chの岡山中央テレビが中継をしていた。
大尉はリモコンのボタンを押す手を止めて机に上に置いた。
〔えー、柳川交差点です!機動隊の車両で道路が封鎖されています!〕
道路上には機動隊のバスが横向きに並べられている。
これで道路を封鎖しているみたい。
〔さっきまで大量に居た見物人も、先ほど機動隊が退避させました〕
〔秋山さん?犯人からの要求は何かありますか?〕
〔…えー、今のところは何もありません。事態発生から約30分程が経過しましたが犯人からの要求は何もありません〕
〔…はい、分かりました。ありがとうございます。銃乱射事件。CMの後も続きます〕
「正体不明の陸軍の事は何も言っていませんね」
「あぁ、そうだな」
うーん…正体不明の陸軍!
……大尉ってやっぱり美人だね……
「…少佐殿?どうかされましたか?」
「うぇ!?い、いや…何でもないよ。テレビ見てただけだよ」
「そうですか…それにしても、あの正体不明の陸軍の事が気がかりですね」
「あぁ、そうだな」
無線手が善通寺駐屯地と頑張って連絡を取っている。
内容が内容だから、時間がかかってるみたいだね。
…あ、終わったみたい。
「大佐、善通寺と連絡を取りましたが第15即応機動連隊は全部隊出ていない様です」
「何?」
「車両・人員共々確認したみたいですが、全て揃っています」
「了解…。司令部からは何か来ていないか?」
「い、いえ何も…」
「…やはりアイツが邪魔してるのか…?」
神谷大佐が"アイツ"と呼ぶのは1人しかいない。
中部方面隊の津軽中将だけ。
あの人の評判は良くない。
旅団長でさえ愚痴を言う。
09:50…
数十分が過ぎた。
SNS、テレビに無線。色んな事から情報をかき集めた。
それで成果は沢山あった。
・機動隊は西側を除き展開完了
・敵が持っている武器は小銃・機関銃・狙撃銃の3種類
・正体不明の陸軍が追加で入って行った
・銃声は岡山駅での乱射以降、1度も聞こえていない
その情報を受け取った神谷大佐は難しそうな顔をしていた。
やっぱり大佐もそう思うよね。
「…陸軍の姿が確認できないな」
備中放送のヘリがさっきよりも高度を下げている。
そのお陰で地上が良く見えるようになった。
「仮に陸軍が展開してるなら…何故機動隊の包囲網の内側に居ない?」
神谷大佐がちょっとだけ厳しい口調でそう言う。
「やはり偽物か!」
「離反部隊の可能性もあります」
「あぁ、そうだな。駐屯地ぐるみでやってるかもしれん」
「司令部に連絡しますか?」
「あぁ、今すぐだ!情報も同時に渡せ!無線手!」
「はっ!直ちに!」
20分後…
「司令部への連絡が完了しました」
「返答は?」
「津軽中将ノ判断ヲ仰グ。シバシ待タレヨ」
「…了解」
大佐がちょっと不機嫌。
…仕方ないよね。
「どうしましょうか?大佐殿」
「待つしかない…独断専行して、他の部隊や司令部を混乱させる訳にはいかない」
「そうですね」「神谷の言うとおりだ」
「それがいいですね」「謎の陸軍の調査を進めましょう」
「そうだな、謎の陸軍の調査を進めようか」
「「「「はい!」」」」
「あぁ、各隊の隊員を2人ほど呼んできてくれ」
「「「「分かりました」」」」」
15分後…
野浦と籠原を連れて戻って来た。
…あ、チハちゃんも付いてきたんだった。
机の上で丸まってる。可愛いね。癒し。
「可愛い」(ナデナデモフモフ)
大佐はチハちゃんをモフっている。
このまま吸っちゃいそうな勢い。
「…大佐殿?全員揃いましたが…」
「あっ、ごめんごめん。可愛かったからつい…」
「…そうですか」
大尉は真面目だね。
真面目で損する事はあんまり無いしね。
「それで…君達はこの謎の陸軍をどう見る?」
「やはり偽物かと…」
砲兵隊の古城伍長が偽物だと言う。
私も偽物だと思う。でも、離反部隊かもしれないし…。
「だろうな…だが目的は何だ?」
「…イメージダウンでしょうか?」
勝山大尉はイメージダウンと言う。
うーん…。
「でも、今のところは救世主みたいな扱いだよ?イメージダウン…うーん…」
「この後、陸軍の服を着た人間が民間人に銃を撃たないとは限りません」
「そうね…大尉の言う通りだね」
うん、大尉の言う通り。
今後、陸軍の恰好した奴が民間人を撃たないって言う保証は無いもんね。
「おい、神谷!見てみろよ北側にも展開し始めたぞ。これで包囲網が完成するな」
「そうだな。これで敵の補給路が断てる」
「………」(チョイチョイ)
チハちゃんが大佐にチョイチョイしてる。
可愛いね。どうしたんだろう?
いつもはずっと丸まってるのに…。
「チハちゃんどうしたの?」
大佐は首を傾げながら言う。
「ん~?」
更に大佐は首を傾げる。
するとチハちゃんが地図の上の[想定される敵補給線]と書かれている所へ飛んだ。
「ニャ~ン!」
「…補給線?…補給線…補給!!!」
大佐が叫んだ。補給線がどうしたんだろう?
「大佐殿、補給線がどうかされました?」
「奴ら、補給を絶やさない為に陸軍に偽装して武器や人を送り込んでるんだ!」
「「「「!!!!」」」」
成程…!そういう事…!
「このままでは武器や食料が継続的に補給されてしまいます」
「勝山大尉の言う通りだ」
「我々がこうして待機してる間にも、敵の数は増えて行っています。
今すぐにでも出動して、敵の偽旗作戦を辞めさせましょう」
大尉が真顔で言い放つ。
「無線手!司令部に連絡するんだ!」
「了解ッ!」
15分後…
「大佐!返答です!」
「おっ!内容はどうだ!」
「情報提供感謝誠ニスル。コレヨリ第13旅団及ビ第14旅団ハ総監部ノ指示ヲ待タズ行動スル。作戦書ヲ送付スル。確認セヨ。尚、第15即応機動連隊ハ1046ヲ以ッテ善通寺駐屯地ヲ発ッタ」
「「「「「おぉ…!!!」」」」」
「流石豊岡旅団長だ!」「やっぱり旅団長だよな…」
「あの人こそ中部方面隊の総監になるべきだ」「津軽は信じられんな…」
「君津旅団長も良く決断したよ」「流石に旅団長も我慢の限界だったか」
「機関銃もあるんなら機動隊だけじゃすぐに一掃されちまうよ」
「それに人もどんどん増えてってるし…」「今出ないでいつ陸軍が出るって言うんだ!」
第14旅団の君津少将も決断したみたい。
作戦書まだかな…!
すると、作戦書がデータで送られて来た。
PCの専用アプリに作戦書が送られて来た。
最近はデジタル化が進んでるね。
「さ、作戦書を開けるぞ」
そう神谷大佐が言うと、送られて来たファイルを開く…!
お読みいただき、ありがとうございます!
ほんの少しでも「良いね」と思ったらブックマーク、評価の★の方を是非!
(付けると作者が凄い喜ぶよ)
よろしくお願いいたします!
【ご案内】
事件に巻き込まれてしまう人
【パイロット目指してたら艦隊司令にされた 第四十四話】
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