第一話 上陸演習
前回のあらすじ:日本原駐屯地でいつも通りの日常を過ごしていた中隊。
その中隊長の凛に茶封筒が届く。その茶封筒の内容は「上陸演習を実施する横須賀へ向かえ」とのことだった。
様々な反応を見せる隊員達。そして、鉄道連隊で横須賀へ運ばれる中隊…。
さぁ、初めての上陸演習はどうなるのか…
12月20日… 蒼龍格納庫…
「凄い…!これが空母…!」
人生でこんなに興奮した事は無かった。
私の目に映るのは沢山の戦闘機。そして、パイロットや整備員。
テレビとかでしか見たこと無かった人達。
凄い…!
「ね、凄いよね…!」
この人は第8歩兵科連隊の連隊長の宮津 雛大佐。
私の幼馴染。"雛ちゃん"って呼んでる。
「雛ちゃんも空母乗るのは初めて?」
「うん」
雛ちゃんも初めてだったみたい。
「ねぇ、凛ちゃん」
「?」
「秋月司令には挨拶に行った?」
「…!!!忘れてたぁ!!!」
「あーらら」
「ちょ、ちょっと行ってくるね!」
「はーい、行ってらっしゃーい」
ヤバイヤバイ…!挨拶行くの忘れてたぁ…!
私は急いで司令官室へと向かう…。
司令官室前廊下…
「はぁ…はぁ…!」
よし着いた…!
コンコンコン…
……………
あれ、居ない?
…居ないの…?
私が困惑していると…。
「あ、司令は艦橋に居るよ」
「!ありがとう!」
優しい海軍の人が教えてくれた!
急いで艦橋に行かないと…!
私は艦橋に向かってまた走る羽目になった。
蒼龍艦橋…
ここが艦橋…意外と狭いね…。
えーっと司令は…?
あ、あれかな。
明らかに他とは違う雰囲気を放ってる女性。
多分あの人…!
私はちょっとだけドキドキしながら、司令と思われる女性に話しかけた。
「秋月司令」
「ん?」
「もうすぐですね…」
「そうだね…」
「いやぁ、わざわざ岡山から…ご苦労様」
この人で合ってた!良かったぁ~。
「いえいえ!鉄道連隊のお陰で楽に来れましたから」
「鉄道連隊…最近復活した鉄道部隊かぁ」
「えぇ、お陰で戦車の移動も楽々ですよ~」
「へぇ~。機会があったら使わせてもらおうかな」
「是非是非!本当、凄いですよ!」
噂で聞いてたより全然話しやすい…。
噂じゃ、氷みたいに冷たくて…そっけない人って聞いたけど…そんな事無かった。
でも…目に光が無いのが妙に気になっちゃう。
「あ、あの…」
「ん?」
「その目…どうしたんですか?」
私は気になった事があったらすぐ聞いちゃう。でもそれが良い時もあるし、悪い時もある。今回はどっちかな。
「え?えっと…その…あの…」
こ、これは…聞いちゃいけない事聞いちゃった奴だ…!
「そ、その…すみません…」
「え、ええんやで、そ、そんな気にせんでええよ、ホ、ホンマに気にせんでええからね」
「そ、そうですか」
「う、うん」
ヤ、ヤバイ!私のせいで艦橋の雰囲気が最悪に…!
「で、では失礼しますね」
「う、うん。演習、頑張ろうね」
「は、はい!」
私は足早に艦橋から逃げた。
新見が去ったすぐ後の艦橋…
「司令」
「ん?」
「そろそろ話してもいいんじゃないですか?」
「な、何を?」
「そんな目をしてる理由!」
「さ、参謀長落ち着いて!」
「皆もそう思うよな!?」
「「「「あぁ!!!」」」」」
「あぁ…!これは…!どうしたものか…!」
蒼龍待機室… 09:23…
演習はだいぶ前に始まった。
今、海軍が戦闘機や爆撃機で海岸に上陸する準備を整えてるみたい。
「上陸用舟艇…どんな感じ何でしょうね。少佐」
「うーん…きっとLCACみたいな感じじゃないよね」
「ですね」
「中隊長!もしかしたら一昔前みたいな奴かもしれませんよ!」
「あぁ~…確かに、そんな奴かもね」
「そんな悲観的になる必要は無いですよ、仮にそうだとしても貴重な体験ですよ」
「少佐、乗ってる時間は少しだけです。そこまで気にする必要は無いでしょう」
「そうですよ中隊長!重要なのは上陸した後ですよ!」
「うん…!そうだね…!」
隊員達が居てくれるから、私は中隊長で居れる。
…皆、良い人。
ビーッ。ビーッ。
[第二段階へ移行。上陸予定の者は準備せよ]
「皆聞いたね?」
「「おう!」」「勿論」「「「はい!」」」
「えぇ、勿論」
皆、個性豊かだね。
さ、舟に乗ろう。
蒼龍格納庫 前部ハッチ前…
「少佐、第8歩兵連隊の乗船完了。後は我々です」
「了解。中隊、予定通りの舟へ乗船せよ」
[[[了解]]]
ブォォォォォォ…
次々舟に乗り込むナナヨン達。
不思議と楽しそうに見えた。
22分後…
「少佐殿、乗船完了しました」
「了解。報告するね」
「はい」
「こちら勝山、乗船完了。いつでもどうぞ」
[蒼龍了解。指示あるまで待機]
「勝山了解」
「…私の苗字が符号ですか。…なんだか恥ずかしいですね」
「…仕方ないよ、地名でもあるし」
「仕方ないですね」
舟を運転するのは当然海軍の人。私達には舟の運転は出来ない…と、思う。
ビーーーッ!ビーーーーッ!
[上陸開始!直ちに海岸を制圧し、橋頭保を築け!]
上陸開始だね。
ゴゴゴゴゴゴゴ…。
目の前の扉が開く…!
迫力満点…!
ガゴン!
ガゴンと大きな音がすると、1番前の舟が海岸へ向けて出発した。
1番前の舟が出てすぐに2番目の舟が出た。間隔は開けないみたい。
「少佐殿、頑張りましょうね!」
「ねっ!」
「出発します!」
いよいよ私達の番!
舟は勢い良く蒼龍を飛び出した!
「うわっ!結構揺れるんだね」
「え、えぇ、そうですね少佐」
ヒュン!
「来たね…!」
赤色のレーザーが飛んできた。
これが弾扱い。これが当たったら撃破判定。でも、一回当たっただけじゃ戦車は撃破されない。
多分、この舟もそのはず…。
キィィィィィィィン…!
「あ、戦闘機」
戦闘機が飛んできて…海岸を攻撃し始めた。
飛んでくるレーザーの数がだんだん減って来る。
「心強いですね、少佐!」
「うん、心強いね!」
舟は水しぶきを上げながら海岸に向かって進んでいく…。
戦車を載せてるのにこんなに早く進めるなんて…凄いね。
「間もなく到達しまーす!衝撃に備えて下さーい!」
「りょうかーい!」
もうすぐ上陸…!
歩兵と同時に上陸するから、着いたらすぐ前進だね。
「接地-!!」
ズザザザザザザァァァァァ…!!!
砂と舟が擦れる音と同時に凄い衝撃で揺れる!
ザザァー…。ガコン。
舟が止まったと同時に前の板が倒れて、上陸出来るようになった。
「前進!前へ!」
ブォォォォォォォ…!
「対戦車砲!左20度!」
「目標、左20度対戦車砲!」
「目標、左20度対戦車砲ッ!」
「撃ェ!」
ダァン!
実弾ではなく、赤色のレーザーが砲塔に付いてる物から出る。
でも、空砲だけど主砲の射撃が行われる。
「対戦車砲撃破!」
撃破判定がされたら、白色の煙が上がる。
[勝山4、被弾!炎上中!戦車を放棄する!]
「勝山1、了解」
「やけに冷静だね、大尉」
「こういう時こそ冷静であるべきです。あまり感情的になっていては…」
「…そっか」
「敵戦車確認!右13度!」
「目標敵戦車!右13度!撃ぇ!」
ダォン!
「撃破!」
「少佐殿、現在的勢力の7割を撃破しました。後もう少しです」
「了解!」
ババババババババババババババ…!
「ん?」
[こちら合鴨!上陸部隊の支援を行う!]
「こちら勝山、支援感謝スル!」
[おう!74式の勇姿、しっかり見届けてやるからな!]
「そりゃありがたいね!」
「前方!200m!敵戦車2両!」
「2両…取りあえず…」
取りあえず後退しよう。そう指示しようとした瞬間…。
バババババババ…!!!
ヘリから機関銃の雨が降り注いだ!
そして、敵戦車は白煙を上げた!
流石海軍!練度が高いね!
[こちら勝山6、敵影見られず。オクレ]
勝山6を皮切りに、続々と『敵影見られず』との無線が入った。
敵を掃討した…って事でいいかな?
[こちら合鴨8、海岸に敵影は見られず。全て掃討したものと思われる]
「了解。蒼龍に報告する」
掃討したみたい。報告しよう。
「勝山より蒼龍へ、海岸を制圧。敵影は見られず」
[蒼龍了解、引き続き警戒せよ]
「了解」
10分後… 蒼龍待機室…
演習終了が宣言された。
いつもの演習と違って、上陸演習だったからちょっと手間取っちゃった。
特に船から出るのに。衝撃が凄く強かったから、ちょっと混乱しちゃった。
「少佐殿、お疲れさまでした」
「お疲れ、大尉。皆もお疲れ様!」
「「「「お疲れ様です!中隊長!」」」」
「今回の演習、どうだった?」
「船酔いしかけました…」「戦車の中に猫が紛れ込んでいました…」「砂浜じゃ動きずらかったです」
「ヘリが心強かった」「装甲車欲しい~」「歩兵連隊が有能でした!」
「そっか~」
皆、感想は様々だね。
ん?猫?
「ん?猫?」
「はい…なんか猫が紛れ込んでいまして…」
「あら~その猫は何処に居るの?」
「…あそこに」
と、隊員の1人が部屋隅っこを指さす。
「…ニャー…」
白猫ちゃんが丸まっていた。
可愛い!
「おいで~怖くないよ~」
大尉が猫ちゃんを…。
「ほら~おいで~」
「………シャー………」
「…はぁ…」
駄目だったみたい。
「大尉、こうですよ~」
と、野浦一等兵がさっきの大尉と同じ様にして…。
「おいで~」
「…ニャー」
トテトテ。ピョン。
「おぉ~」
「…なんで…私には…来ないの…」
「あらら…」
ちょっとだけ悲しい顔をしてる。
「それで…この猫ちゃんどうしましょう?」
「私達の所で飼う…?」
「「「「いいね…!」」」」
「よしっ!一回連れて帰って、駐屯地司令に交渉してみよう!」
「「「「おぉ~!!」」」」
と、言う訳で…猫ちゃんを飼う事にした。
その後、駐屯地に帰って司令に許可を取ってみると…。
『いいよぉ~可愛いよね~』って、感じで、すぐ承諾してくれた。
因みに名前は募集中!
お読みいただき、ありがとうございます!
ほんの少しでも「良いね」と思ったらブックマーク、評価の★の方を是非!
(付けると作者が凄い喜ぶよ)
よろしくお願いいたします!
【ご案内】
海軍目線の上陸演習…
【パイロット目指してたら艦隊司令にされた 第二十六話】
https://ncode.syosetu.com/n4473hq/28/