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極限状態の成り上がり~  作者: 狛犬さん家
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悪魔の子③

 祝福の儀が終わり司祭は一人教会の資料室で古い文献を漁っていた。


 昔大司教様からチラッとスキルなしについて聞いたことがあったのだ。




「あ、あったぞ!!これだ」




 そこには、こう書かれていた。




『創造神アシュラー様の祝福を授けられぬしものが現れたときこの世に災厄と災禍が舞い降り、再び混沌が訪れるだろう』




「っ!? ディアスロードの再来だと!!」




 今から約1000年前に起きたとされる人魔大戦。


 野原は焦土と化し、水は腐り毒となり、森は枯れ落ち砂漠と化し、村や街、都市は破壊され更地と化し、人々の生活に混沌が訪れた。


 数十年は続いたとされ、大戦に終止符を打ったのがアルペント王国の初代国王で創造神アシュラーの御使いのアーサー・アルペントである。


 逆に魔族を率いていたのが災禍の悪魔ディアスロードなのだ。




 まさか災禍の悪魔がかかわっているとは思っておらず、司祭は慌てて司教を呼び出しケリーの捕縛命令を出した。





 ***




 日が暮れ始めまもなく夕闇に包まれる頃、アシュリーとロスは沈痛な面持ちで気持ちよさそうに寝息を立てている愛する息子を眺めていた。




「んっ…はぁぅ~あ、お母さん、お父さん」




 目をこすりながら、大きな欠伸をして起きだした。


 そしてお母さんとお父さんがこちらを見ているのに気が付くと寝る前のことを思い出したのかすこし気恥ずかしそうに手で頭を掻きながら挨拶をした。




 そんな愛らしいケリーの様子に苦笑し、二人は心が揺れそうになるがケリーの未来を考え改めて強く心に誓った。




 そんな二人の様子に気が付いたのだろう。


 ケリーは少し不安そうな顔で「どうしたの?」と聞いた。




「ケリー、お前が生まれるときな。産婆さんいなくて、いざ始まるってなったらもう父さん、何やったらいいか分からなくて大慌てでな。あちこち行ったり来たりしてたら、母さんに『シャキッとしなさい!』って怒られたんだよ。母さん初産で大変なのにだよ。ほんとに初産なの?ってちょっと疑っちゃったよ。あれはケリーが2歳ごろの時かな、仕事終わって帰ってきたら『くさい』って初めての言葉がそれだよ、それからしばらくは帰ってくると『くさい』って言われるし、でもそのたびに笑ってくれて疲れてたはずなのに一瞬で元気になってたよ。ありがとね、ケリー。




 ケリー、いいかい。


 今から大事な話をするから落ち着いてよく聞くんだ。


 今日の夜に教会に呼ばれただろう。教会に夜に呼ばれるのは普通ありえないことで、夜に呼ばれたものは帰ってこなかったっていう噂があるんだ。だから行かない。教会がなんで呼んだかは分からないが、これからは教会に気を付けるんだ。




 ケリーが生まれてから10年俺たちは幸せだった。


 ケリー、俺たちのところに生まれてきてくれてありがとう。


 これから『いやだ、いやだいやだいやだ、いやだよ……またみんなで一緒に暮らそうよ』」




 ケリーはその続きを聞きたくなかったのか慌てて言葉を重ねる。


 そんなケリーに対してアシュリーが優しく抱擁しながら




「ケリー、強く、強く生きなさい『ドン!ドン!ドン!ドン!』」




 アシュリーが話を続けようとしたとき、玄関から荒々しくドアを叩く音が聞こえてきた。




「「「ッ!!」」」




「ケリー!!行きなさい!裏ならまだ逃げられるでしょう。ほら、行け!!ケリー!!!」




 鋭い声でそういうと、最初は家族と一緒にいたくて戸惑っていたケリーはアシュリーの初めての怒鳴り声に驚き、その言葉通りに行動し、裏口に走っていった。




「ふふっ、記憶の中のあたしは笑顔が良かったけれどダメね、涙が止まらなかったわ。これが最後だとおもうと…っ…」




「そうだな…俺も無理みたいだ。でもまだ、俺達にはやることが残っているだろ」




「そうね、愛する息子が少しでも生き残れるように…」




 そういうと二人は玄関に向かって歩いて行く。


 その表情にはさきほどまでの息子を心配する親の顔ではなく、たとえ何千何万と敵が来ようとも絶対に退かない決意が表れていた。

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