逃避行②
ダンケロ達はカルロスが見つけた洞窟に向かっていた。
ダンケロは洞窟の隙間の狭さを見て全員だと厳しいと考え
「おい、三人で行き中が広かったら待機して一人は知らせにこい」
「「「はっ!」」」
三人は匍匐前進して洞窟の中に進みだした。
***
ダンケロ達が洞窟を見つけたころケリーはまだ寝ていた。
10歳のケリーにとって初めての命の危機を感じつつの逃避行、よほど疲れがたまっていたのか硬い地面に直に寝ているのにも関わらず熟睡している。
「おい、三人で行き中が広かったら待機して一人は知らせにこい」
「…ん、……ハッ…ッ!?」
混濁した意識を一気に覚醒させるように頭を振り、声が聞こえたほうを確認する。
すると、歩いて3分ほど先に松明を持った二人の男が立っており、洞窟の入口から続々と人が入ってくるのが見えた。
やばいやばい、早く逃げないと。
くそっ、こんなとこまで追ってくるなんて、僕が何をしたんだ!?
ただ家族三人で貧しくも楽しく暮らしていただけなのに!
空気が奥のほうに流れているからどこかにつながっているはずだ。
幸い僕は昔から暗い場所でも目がきくから、あいつらよりも早く移動できるはず。
そう考えできるだけ音をださず、しかし素早く奥へ進む。
しばらく進んだころ、「ザァー」と水が流れる音が聞こえてきた。
その音は進むにつれて徐々に大きくなっていく。
嫌な予感を感じながら進むと、奥には巨大な地下渓谷が見えてきた。
落ちないように下を確認すると、6メートル下に龍がすべてを飲み込まんとするようにうねりを上げて川がながれている。
なんとかほかの手段がないか考えていると
「ダンケロさん見つけやしたぜ!!」
「なに!?よくやった!!!」
素早く後ろを振り向くと5人の男たちがこちらを向きながら薄暗い笑み浮かべていた。
「ッ!?」
「へっへっへ、坊主悪いようにしないからこっちへきな」
「い、いやだ!なんで追ってくるんだ!!僕が何をしたっていうんだ!」
「はッ、知るかよ。てめーはこっちに来ればいんだよ!!」
「おい、カルロス。ここからは俺がやる」
ダンケロはそう言って、これまで逃げ続けられて溜まった苛立ちをぶつけるかのようにケリーに向かって殺気を放った。
初めて面と向かって殺気を受けたケリーは、あまりの恐怖に一歩後ろに下がってしまう。—―—―その瞬間、足元の地面が崩れた。
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
そのまま真っ逆さまに川へと落ちていった。上下左右、方向感覚が全くつかめずただもがくだけ。薄れゆく意識の中浮かんできたの涙を流しながらも笑みを浮かべて微笑んでくれている別れ際のお母さんとお父さんの顔だった。