逃避行①
カクヨム様で先行配信しています。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
「ウウッ…ヒクッ…母さん、父さん」
夕方の薄暗い森の中。涙で視界がぼやけているのを気にせず。何度も何度も転びそうになりながら、顔や腕、足に傷が付いていくのに気が付かないくらいに必死に逃げ続ける。
泣きすぎて涙が枯れてきたころ。
崖に大人が匍匐前進してようやく通れるような隙間を見つけた。
中の様子を確認しようと入ってみると、大人が横並びで二人は通れる大きさになっていた。
「はぁはぁ、…ここで……すこし休もう」
奥はずっと続いており、どうなっているのか確認できないが、この逃避行で子供のケリーの体力はすでに限界を迎えていた。
「か…あ…さ……と…う…さ……」
今までの張り詰めた緊張感を緩めた瞬間、突然睡魔が襲ってきてそのまま眠ってしまった。
***
ケリーが洞窟で眠っているころ
追手は暗い森の中を探していた。
「おい、いいか!くまなく探せよ!子供だからそう遠くまで行ってないはずだ!」
「だがよー、ダンケロさん、いくらこの森に詳しい俺達でもこんな暗闇の中でなんて見つからないと思いますぜ」
「カルロスか。では、捕らえたものは金貨5枚をやる!!ただし、絶対に殺すなよ!」
「「「「「き、金貨5枚!!??」」」」」
金貨一枚で平均的な平民の月収になる。
それが5枚ともなれば、たかがガキ一人に対しては破格の値段である。
カルロスは驚きながら聞き返す。
「ダンケロさん、いいんですかいそんなに貰っても?」
「ああ、なんせこれは正教会の司祭様からの直々の依頼でな報酬がいいんだよ」
「ほへぇー、あの司祭様が。しかしなんでなんですかい?」
呆れた顔をしながらダンケロはカルロスに言う。
「はぁー、お前、あの司祭様に理由聞けるか?」
「いや、無理っすね」
「そういうこった」
ダンケロは会話は終わりだと言わんばかりに森の中に入っていき捜索を再開した。
それから数時間後。
朝日ももう間もなく上がり人々の生活音が感じ始めそうなころ。
ダンケロ達はまだ見つけられていなかった。
松明で足元を照らし注意しながらのため、何度も蜘蛛の巣が顔にへばりつき、不快感を募らせながら捜索していた。
ダンケロが悪態をつきながらそろそろ本格的にマズイと思いはじめ、増員をしようかと考えていたころ。
カルロスが下卑た笑みを浮かべて走ってきた。
「ダンケロさーん!!崖に洞窟を見つけたんですがそこじゃないですかね」
「なに!?ほんとか、今すぐ行くぞ!」