子供の服を買うのは楽しい件
収穫祭とかいうのが近づいてきたので、聖女の衣装を頼むことになった。
子供が産まれた後だからか、またいくつかの教会による「全部捨ててうちにおいでよ!」が始まったのだが女神様の教えでは愛する人と共に生きること自体は許されている件を笑顔でお話ししたら大分減った。
キレ散らかして帰るやつは軒並み途中で転んだんだけど何故かしら。
あんまり不思議だから転んだあたりに何かないかを調べてみたけどちゃんとフラットな床でした。
それと同時に我らの可愛い子供たちにも新しい服を、とお針子さんを呼んでわちゃわちゃしている。
ちなみにですが、リーリアと接する私たち夫婦があまりにも普通に親やってるので、妙なこと考える使用人が居なくなったのは僥倖です。
「こちらも可愛いわね。迷いますわぁ…!」
「旦那様におねだりして多めに買っていただいては?」
「まぁ、それも良いですわね!」
でも、小さい子はすぐにサイズ変わっちゃうんだよなぁ。
こちらには写真を撮る技術がないのが辛いところ。リーリアもランティスも毎日写真撮りたい。
「ノエル様の場合はご自分のドレスもたまには買われた方が旦那様も喜ぶのでは?」
マダムのその言葉に苦笑した。
そういえば、そろそろ新しいの仕立てないといけなかった。
公爵家の妻になってしまったので何度も同じドレスとか着ていくと笑われてしまうのである。勿体ない。
「着なくなったドレスなどは皆様どうしていらっしゃるの?」
「そうですね。下げ渡したり、寄付をされたり、という事が多いですわね」
さすが公爵家、という感じで良いドレスが多いので捨てるのは勿体ないなって思ってたのよね。
幾つかだけ置いておいて、そうする事も視野に入れようかな。
とは言っても、なんだかそこまでクローゼットが埋まっているわけではないので後回しでもいいだろう。衣装部屋なんてほぼ使っていない。まだリーリアのお母様のものも残っているくらいだ。いつか彼女に渡せるといいな、という気持ちもあるのだけれど、その頃には流行が変わっているのもわかる。
(まぁ、良い生地や宝石を使ったものばかりだから仕立て直しても良いしねぇ)
同様の理由でアクセサリー類もしっかりと保管している。こればかりはどうするかを未来のリーリアが考える、というのが筋というものだろう。私たちが享受しているのはリーリアに繋ぐための仮初の爵位なのだし。
「あうー!」
「坊っちゃま、なんでも口に入れないでくださいまし」
リナリアがランティスからアクセサリーを取り上げる。泣くランティスだけれど、こっちはホッとした。だって、口に入れて喉に詰まらせたら赤ちゃんは死ぬ。これだから赤ちゃん怖い。
「ありがとう、リナリア。ランティス、お母様はあなたが心配よ」
何にでも興味があるのは良いのだけれど、こんなのばっかで無事に成人できるのか不安になるわ。保育士さんとか幼稚園の先生、毎日大変なんだろうな。母親になることでようやく気付く身の周りのありがたさ。
抱き上げてあやしていると、服を掴まれて目線を落とす。羨ましそうなリーリアがいたので、頭を撫でた。
「ここで二人を抱っこするのは危ないから、リーリアをあちらのソファまで連れてきてくださる?」
ついでに、デザイン画も持ってきてもらってみんなで選ぶ。セラが張り切っていた。
そういえば、エレナはランティスの面倒を見てくれる安全な方、という条件で来てもらっていて母乳とかは全部自分であげてたんだけど、セラは乳母をやってくれていたってことは同い年のお子さんいそうだけどどうなのかしら。
「いえ……以前の公爵夫人は娘を連れてくるのを嫌がりましたので両親に預けております」
唖然とした。
いや、私ももう少し早く気がつくべきだった。
「セラ、あなたさえ嫌でなければ連れてきて頂いて構わないわ」
そう言うと、パッと表情が明るくなった。
この年齢の子供は成長が早いし、一緒に居たいならその方がいいという気もする。
となると、セラの子供の分もお守りアイテムいるかしら?
とりあえずサイズ聞いてみましょう。
次の日からセラの子供も一緒に来るようになったし、リーリアと一緒に遊ぶようになった。とても可愛い。
お金があるからとびっきり可愛いものを揃え、愛で、周囲を知らず知らずほっこりさせている。この世界の貴族基準的にはそこまで浪費しているわけでもなかったりする。




