姫君とお茶会をした件
「やはり、そこそこに気楽な立ち位置で、けれど影響力は大きいというのは魅力的ですわねぇ」
「え?一番が良いに決まっているのでは有りませんか?」
困惑するルーシー殿下に「頂点は息苦しいでは有りませんの」とけろりと言った。権力とそれを背負う義務と重みがどうも自身の利益と釣り合わないとのことだ。
「確かにラティスお兄様ってばいつも大変そうですものね!一番って大変なのね。聖女様もやはりその義務?みたいなのは苦痛なのかしら?」
尋ねられて「今はそれほどでもありませんわ」と苦笑した。
「働けば給金を頂けますし、心なしか女神様が喜んでいる気配がするので」
私が頑張って浄化用の宝石を作り、「女神様の御加護が皆様に降り注ぎますよう」と神官とその護衛の兵士を見送ると怪我一つせずに帰ってきて拝まれるのだ。結果加護パワーが増えた。
それに伴って、領地ではこの度、古びていた神殿を改装することになった。孤児院もついでにいくつか新しくしてもらうことにした。サフィールの実家に食事衣類諸々をまとめて頼む事で様子を見てもらいつつ人選はこっちでこっそりと行い、商会伝に教育を施していくようにした。これは試しにやっている事だけれど、職に溢れなければ犯罪を起こす人間って減るのでは?という安直な考えからやってみたいなーと言ったのだ。そうしたらメーティスが「全て君の望むように」と言ってくれたのでやってみた。今後どうなるかは数年後に期待である。まぁ、でも神殿改装して孤児院の設備を充実する指示を出しただけで加護増えたんだよなぁ。なんで?
「聖女様は欲がないのね?普通はもっと我が儘を言うものだと聞いておりますけれど」
「ふふ、わたくしの我儘は夫が全て叶えてくれますの。それが幸せなので、欲がないのとは違うと思いますわ」
惚気ちゃったー!
実際、メーティスとの生活が既に私の幸せだから他に何か欲しいとかはあんまりない。この指輪が有れば別に。ドレスって着るのめんどくさいし、アクセサリーは持っていてもあまりつけられない。だって、聖女っていうのは巷では「清貧を尊ぶもの」らしいので。うーん。特に清貧を尊んだ覚えない。
「羨ましいですわ!わたくしもあの人みたいにわたくしにだけ全てを捧げられる方と結ばれたいわ」
ルーシー殿下はきらきらとした瞳でそう言う。「お勉強も頑張ってますの!」と弾むように言う。レイラ殿下をみるとにっこり微笑まれた。あ。黙ってろって事で良さそう。
「聖女様とあの方の出会いはどうでしたの!?」
その言葉を受けて出会った頃のことを思い出すと、なんだかそう経っていないはずなのに懐かしくて笑ってしまった。
「そうですね。出会いは……」
ゆっくりと、思い出しながら話し始める。
皇女である以上、その結婚には政略が付き纏うと思うけれど、私の結婚だって初めはそういったものだった。
改めて話すのは少し気恥ずかしいけれど、流行りのロマンス小説のようなものと思って聞いてもらおう。




