義兄がプロポーズした件
ラティスフォード殿下を通じて「うちの兄、独身ですがどう?」と送ってみると見合いが決まった。マジ?有りなのか。
ラティスフォード殿下はセドリックさんと悪い顔でお話し合いしていたところをみると、なんとなく本気でガラテア国王を引き摺り落としたいという意思を感じる。気のせい…?
「ラティス?わたくしを呼んでいると聞いたのです…が……?」
レイラ殿下は私とメーティス、そしてセドリックさんまでいることに驚いて一瞬固まったが、それでもお淑やかそうに微笑んだ。その姿にセドリックさんは魅入っていた。
「美しい姫君だとは聞いていたが想像以上だな」
「だろう?我が姉、レイラだ。姉上、こちらはガラテア王国第一王子、セドリック殿下だ。目下、ノーチェのヤバい方の姫に追われている」
「ああ……あちらの……」
少しだけ同情の色が見える。
ところでこの感じだとやばくない方の姫もいるのかな?
「諦めてくれないんだよな。なぜだろう」
「兄上は外見だけならワイルド系の美男子だからね。外見だけなら」
「姉上も外見だけなら毒のない優美な花だからお似合いだろう」
「ラティスフォード」
困ったように名前を呼んだけれど、なぜだろう。怒っている気がする。
貴族社会に突っ込まれてからの学びなのだけれど、一見怒っていないように見える高位の貴族ほど怖いものはない。だって、裏でどう動かれてもそれが見つからない場合が多いし、多くの場合は地位に見合った教育を受けているためか隙がない。気がつけば爵位や職を失っている人間もザラだ。
この国の皇帝やその妃が妙な人間に降嫁させたくないわけだ。多分だけれど、この方は人の上に立つ人だ。
「なるほど」
セドリックさんも何かを感じたのか、考えるように組んでいた腕を解いた。そっと跪いてレイラ殿下の手を取る。
「あなたに私の妻に…、我が国の王兄妃になっていただきたい」
あ。ガラテアの王様死んだな。
もうこれ動いてるのでは?少なくともセドリックさんがただですますわけないとは思ってた。
「私が父が本当に嫌いでね!弟はマシになったので裏から手を回して、ほどほどに良い立ち位置で生活基盤を取り返すことにしたんだ。頂点は息苦しいだろう?」
「まぁ……。それでは」
レイラ殿下はなぜかその言葉に頬を染めた。なぜ?
そして、花が咲くような笑顔で告げる。
「それでは、あなたがガラテア王国でその立ち位置についた時。わたくしを迎えに来てくださいませ」
いや、私は虫除けを頼みたかった。
「わかった。一年はかからないだろう」
セドリックさんはあの女どうにかできるんだろうか……最悪あれも死にそう。歴史を教えてもらって思ったのだけれど、王族って割と殺して解決しがちなんだよなぁ。しかもそのために前準備として徹底的に叩き潰す。後には何も残らない。
メーティスはめちゃくちゃ呆れた顔をしていた。
女除けも女神様にお願いしたらなんとかなるかなぁ。困った時の神頼み、とはこのことである。なんか妙なことばかりお祈りしてごめんね、女神様。お詫びにこっちで株上げ頑張るよ。




