子供が産まれた件
つわりはまさかの臨月まで残り、初産だったためか、めちゃくちゃ時間かかって出産した。そんな、半日以上かかるとか想像つく……?精々数時間の我慢だと思ってたら、すごい長かった。
私よりもメーティスの方が子供を抱えて感動で泣いていた。
私と同じ黒髪と、メーティスと同じ緑の目を持つ男の子はランティスと名付けられた。
公爵令息かつ長男でありながら公爵家を継ぐことはないので、そのあたりしっかり聞いてくれる子供だと嬉しい。どうか性格はメーティスに似てくれ。お願い。
私の妊娠期間中に乳母も探したのだけれど、背後関係探ると大抵ダメなのなんでだったんだろうね。男の子を産んだと知るや、また多くの問い合わせが来たけれど、それは私の子が後継になると思っているからだ。洗脳されたりしてはかなわないのでナシ。
結果的にラティスフォード殿下が責任持って探してくれたエレナという女性がやってきてくれた。なんか、ラティスフォード殿下の乳母をやっていた方らしい。元伯爵夫人で今は息子さんが伯爵家を継いでいるんだって。やることもないしと快諾してくれたとラティスフォード殿下がドヤ顔をしていた。後ろで「お行儀が悪うございますよ」と言われていた。
そんな私はしばらく安静にしていろと基本的にはランティスと同じお部屋でベッド上生活である。たまにセラというリーリアの乳母がリーリアを連れてきてくれる。
弟ですよ、とランティスを見せれば瞳をキラキラと輝かせていた。恐る恐る触れて、ランティスが身じろぎすると驚く。
……体力がついていっていないけど、なんかこういうのっていいなぁ。
「奥様、確認したい事がございます」
「何かしら」
エレナはランティスをベビーベッドに戻して、「この方は公爵家を継ぐ事はない、そういう認識で構いませんか?」と尋ねてきた。
「ええ。継ぐことがあるとすれば、メーティス様が陛下より賜った伯爵位ですわ」
実は、なんかもらったらしい。彼曰く、「半分以上君の爵位だよ」との事だけど。
聖女をただの平民として置いておく事はできないと判断した皇帝陛下はメーティスを伯爵位につける事で国に取り込む事となっていたそうだ。この家を継ぐこととなったが、聖女の子供もまた、聖なる魔法を扱える可能性は高い。そのために伯爵位はそのまま戴けることになった。
ちなみに領地もいただいてしまったので、両方の領地を治めることになったメーティスだけれど、公爵家の領地は前公爵のクルーガー様がそのまま管理を手伝ってくれている。そのうち領地を見てみないといけないなって思ってる。
「では、勘違いはしないように接する必要がございますね」
「ええ。あくまでも家のために優先すべきはリーリアです」
あの天使のような義娘が相当の盆暗にならない限りは跡継ぎは彼女である。
「では、リーリア様に来ている的外れな婚約願いは捨てても構いませんね?」
「よくってよ」
私がまだ起き上がれないのを知ってか知らずかリーリアを嫁に寄越せとか、ランティスの嫁にうちの子を入れろとかマジでうるさくなってきてストレスが溜まる。メーティスもだいぶ怒っていてなるべく見せないようにしてくれてはいる。
こっちはまだ体調戻ってないんだからいい加減にしてほしい。とはいえ、これが貴族社会というものなのだろう。
「わたくしの体調が戻らない間に釣書を送ってくる方々の名前は控えておいてくださる?」
「かしこまりました」
でもそこにはうちの子絶対やらないからな。
娘には私と同じくらいとびっきり良いパートナーと結婚してもらいたい。あとうちの息子にも良いパートナーと結婚してもらいたい。
そういえば、メーティスってばランティスが黒髪ってだけで超喜んでるんだけど、私似の女の子とかできた際にはどうなるんだろう。いや、まぁよく考えなくても私よりもメーティスに似た方が美形だし頭も良くなるからその方がいいと思う。




