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異世界召喚された聖女は穏便に幸せになりたい  作者: 雪菊
聖女、巻き込まれました

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過ちを正す覚悟を



「どうしてあんな真似をした」



責めるような言葉に、国の皆が困っていることや生活の水準が目に見えて下がっていることを挙げると、夫であるクロードは心底失望したというような顔をした。



「それらは皆、私たちの傲慢と罪のせいだ。彼女や、ノインシュタイン公爵のせいではない」



そう言って厳しい目でルイーゼを見るクロードは、かつて毛嫌いしていたアリシアやノエルが離れて行った時と同じ表情だ。

ルイーゼはなぜ、と心の中で自分に問う。

そんな彼女をロイとレイトは気遣わしげに見ていた。


妻と幼なじみの様子を見て、クロードは「これでは自分が悪役のようだ」と自嘲する。だが、これを放っておいては国のためにならない。すでに崩壊も間近だというのに父王は血税を贅沢に使い愛人を侍らせ、母は豪華なドレスやアクセサリーを新調していた。


正気に戻った時には何もかもが遅かった。


民からの嘆願をクロード自ら走り回り、いくつかを解決する。それでようやく暴動が起きていないだけだ。まともな貴族、そして神官と軍人に頭をさげどうかと頼み込みどうにか国として成り立っているが、土台は既に崩落の一途を辿っている。


幸いにも、民を案じる聖女が「質の高い宝石があれば浄化の力を込める事ができる」と言ってくれた。それは母やルイーゼに自分が贈ったものから取り上げればそれなりに調達ができるはずだ。自分の身につけていたカフスやピアスなど幾つかのものはすでに預けた。帰国時に皇太子を通じて返還されるとのことだ。

そして、あんなことをしたというのに公国で偶然見つけた兄は「手伝ってやる」と呆れたように言ってくれた。


どれだけ人が良いのだ、とクロードは泣きたくなった。


自分が選んだ友は、妻は何もせず民の犠牲で成り立つ生活を享受する。

自分が捨てた兄弟は、その仲間は呆れながらも手を貸してくれた。



(私が全て間違っていた)



自分に王たる資格がある、とはもう思わない。だが、自分しか国のために走る事ができる王族はいない。

全てが自業自得。


そして、それはルイーゼも同じだ。


クロードは何度もルイーゼや友人たちと話をした。説得をした。

けれど、今の会話で確信した。



「もう、何も伝わらないか」

「……ノインシュタイン公爵夫妻とのご会談はどうでしたか」

「なんとか協力は取り付けた。メーティスにあれだけ睨まれたのは初めてだな」



情け無い表情で、ハハと笑うクロードにロージア辺境伯令息シャノワールは少しだけホッとした表情を見せた。


シャノワールは魔力量が多く、細身に見えるが存外にがっしりとした体格をしている。ノエルはアニータに「お兄様をどう思う?」と聞かれた際に「強そうですね」と言った。

彼は次男だったのでそれなりの自由があった。クロードが助けてくれと父に頭を下げに来たときに「彼の方がどう変わっていくのか興味があります」とクロードについて来た変わり者だ。


身近で駆けずり回るクロードを見ていた彼は、「ようございましたね」と微笑んだ。



「そう言ってくれるのはお前くらいだよ」



柔らかな声はかつてと同じだ。

けれど、そこにはもう世間知らずの王子様はいない。



「私がまた道を誤らぬよう、支えてくれ」



厳しい声で放たれた言葉にシャノワールは礼を執る。






「人って少し見ない間に変わるものねぇ」



所変わって、ノエルは宝石に魔力を込めながらそう呟いていた。妊娠で魔力や魔法に変化がないというのは幸いだった。作業時間自体は気をつけないといけないけれど。


かつての我が儘坊っちゃんが良い顔つきになったものだ、と思っているとメーティスが「あの様子では、国は相当酷いのだろうね」と溜息を吐いた。



「ありがとう、ノエル」

「いいえ。あの国の民には良くしてもらいました。あの子供たちが健やかに生きられますように」



そっとお腹を撫でる妻の隣に座ると、メーティスはノエルの手に自分の手を重ねる。

そして、見つめあった瞬間その手のひらから金色の光が花のように舞った。

別にクロードも許されてはいない。

今は必死に頑張っているのと聖女が王国を心配しているための温情の執行猶予期間。

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