例の彼女が詰んでる件
挨拶回りをした後に城の一室へと案内されて椅子を勧められる。対照的な表情の皇太子と王太子に、である。
メーティスに促されて座ると、クロード殿下は一つ息を吐いて、「まずはメーティス、聖女殿。我が国がすまなかった」と頭を下げた。その様子に誰より驚いているのが弟のメーティスってどういうことだろう。
「兄上とお前の言った通りだったよ。特に、ルイーゼの事に関してなどな」
自嘲するような笑みで拳を握るクロード殿下には何か思うところがあるらしい。
というかルイーゼさん関連とか、あれじゃん。高位貴族の脅威の逆ハーレムのことしか思い浮かばないんだけど。いやさすがに切ったでしょ。
「それで、何を見たのですか」
「私がいない間、日替わりで男を取っ替え引っ換え乳繰りあっていた。最後まではしていないということだが、それも時間の問題だろう」
切ってなかったー!?
しかもなんか、王太子妃のお部屋でやってるらしい。もうほんと一歩手前 (だいぶぼかしている)まで。
「あの女、相変わらずですね。それで次は僕、と」
「子ができぬのは私のせいだと思っているようだ。あれは腹立たしかった。妃としての仕事もあまりできぬゆえ、第二妃を入れる準備を進めれば泣き出すしな。正直、今ルイーゼに子ができたとして、本当に私の子だという信用が出来ん」
もうこれ……ルイーゼさん詰んでるじゃん。というか、自分を尊重しつつ溺愛してくれる男手放すような行為とか何なんだ…?分からない。最初からこの世界にいるのと生きるため必死だった私とでは価値観が違うのだろう。
「とはいえ、これに関しては盲目だった自分の自業自得なものだ。民には関係がない」
「話というのは国の事だったか。弱味を見せてもいいのか?」
「どうせすぐに分かる。あれだけ広まればな」
そう言ったクロード殿下の顔には疲労が滲んでいた。なんか、されたことは絶対許さないけど可哀想にはなってきた。
「ガラテアの多くの場所が瘴気に呑まれ始めている。死者が増えるまでに浄化ができるよう手配がしたい」
「……?わたくしたちのいた辺境地への街道以外はほとんど浄化が終わっているはずですよ」
旅の途中、良くしてくれた人が傷つかないようにと死ぬ思いで浄化していったはずだ。国が呑まれるほどの瘴気は残ってないと思うんだけど。
「なんだと…?」
「アルトさんやナージャさんが国に残っているのだから話を聞いているのではありませんか?」
一番見ててくれたのはアレンだけれど。
なんか、兄がいたらこんな感じかなぁ、みたいな感じだった。体調とかよく気にかけてくれたし、その割には下心みたいなものをあまり感じなかった。そういうのはむしろアルトさんから感じた。
「アレらか。そういえば、最近見ないな」
「アイザックも瘴気に侵されていた。フォリア公爵家も探った方がいいのでは?」
「そうするよ。……ついては、二人は我が国に戻る気は無いのか」
「無いよ。ノエルを危険に晒すつもりはない」
メーティスの返答にわかっていた、と言うように苦笑するクロード殿下。
それでも、彼も加害者というだけではないのだろうと思うと複雑である。多分、きっと、平和な国で生まれ育ってきたためなのかな。私って甘いんだろうなぁと溜息を吐いた。




